−光の溢れる向こう側へ−                                040324 by真琴  ズザザザザーーーーーッ! ひゅーーーーんっ、どてんっ!!  暗闇を勢い良く滑り落ちて、強烈にシリモチをつく。  「くぅぅぅぅぅぅぅっ。」  痛みに噛みしめた口から、うめき声がもれる。  ボクは痛みにオシリを押え、涙を滲ませた。  「いったぁーーーーーい!」  痛みが声になったのは、しばらく痛みを噛みしめた後だった。  辺りは、真っ暗。  空気は湿っぽく、機械油の匂いがする。  地面は雑多な“なにか”で、埋め尽くされていて、なんだか、ザワザワと、人々のざわめき のような物音も聞えるが、そんな事どうでもいい。  「出てきてっ、ハピナス!」  ボクは、腰のホルダーから、モンスターボールを出した。  目の前に現れたであろう―――真っ暗で見えない―――自分のポケモンに命令した。  「ハピナス!!」  「ボクを、慰めるんだ!!!」  ハピナスは優しくボクを抱きしめて頭を撫でた。  「ふえーんっ、痛かったよぉ、痛かったよぉ。」  ボクは、ハピナスの胸に顔を埋めて泣く。  すてててててーーーーーーんっ  周りの、ざわめきの主たちが、盛大に、こけていた。                     −第1話−  目が、ようやく慣れてきて、ゆっくりと辺りを見渡す。  天井は、どこまでも高かった。  そのはるか天井に小さく、土管が突き出しているのが見える。そこから落ちてきたのだろ うか。  だとしたら、よく無事だったものだ。  ボクは自分の体を確かめた。  柿色のズボンに裾の長い深緑の上着。と、頭を確かめて、途端にビックリして辺りを捜し始 める。  「あった!」  落ちていた麦藁帽子を、ボクは頭に被った。そして、ようやく―――。  気になることを確かめた。  ここはどこか? という事を。そして―――。  周りに居る“あれら”は、なんのかとゆう事を………。  地面は、雑多なゴミで、埋め尽くされていた。これがクッションになって、怪我がなかった のだろう。  しかし―――。  ボク…イエローは取り囲まれていた。  イエローを取り囲むそれは、半分壊れたロボットたちだった。  みんな、人の形をかろうじて残した程度の…腕がなかったり、足が無かったり、頭さえない 者も居る。機械部品も電線も剥き出しの、ロボットたち―――。それが、ジリジリとイエロー の包囲を縮めて来る。  そしてそれは、いきなりの出来事だった。  「頭は、俺のものだーーーっ!」  「顔は、私のものよーーーっ。」  「うおーっ、心臓よこせーーーっ!!!!」  えっ??????  壊れたロボットたちが、一斉にイエローに掴みかかったのだ。そして、乱暴に体を引きちぎ ろうとする。  「イタイッ! イタイッ!! やめてよーーーーっ!!!!!」  イエローが叫ぶが、ロボットたちは、略奪を止めようとしない。イエローの体がイヤな音を 立てようとしていた。そのとき―――。  ズゥン…。  地面が揺れた。  ロボットたちの手が止まった。  ズゥン ズゥン ズゥン………。  振動と音が段々近付いて来る。  ロボットたちが、恐れ、焦り始める。  ズゥゥゥゥンッ!!  そして、それは現れた。  途端に、ロボットたちは、イエローを放り出して、逃げていく。  「え。。。? ポケモンなの?? 人なの???」  現れたそれに、イエローが言った。  それはどこかポケモン“サイホーン”のフォルムをした、大きな人の姿だったのだ。  「間違いなく、人間よ。」  ヒョイっと、巨人の後ろから、黒いタイトなワンピースを着て、長い髪をした、美しい少女 が顔を出す。  「ねぇ、トライ。………?」  ふと、トライと呼ばれる巨人を見上げた少女“ブルー”が、トライの視線の先を追う。  イエローも、それを追って、先を見た。そこに―――。  『お前は逃げないのか?』  トンネルの中での声みたいに響く、巨人の変声期前の少年の声が、投げられる。  その先には、右手だけが生身の人間っぽい大きなロボットが、まだ残っていた。  「うぅぅぅぅぅー…、ユルセナイ………。」  ロボットは、電子音と、生身の声が混ざったような唸り声をあげた。そして震える右手で、 イエローの麦藁帽子を指差して、言った。  「自然の花が、ユルセナイ!!!!!!」  麦藁帽子に、イエローがここに落ちた理由…。道端に咲いていた“花”が、一輪、乗って いた。  ロボットの目は、激しい憎しみに歪んでいた。そして―――。  「えっ!? どうして………。」  イエローの口から疑問の声が漏れた。そのロボットの瞳に―――悲しみの涙が浮かんでいた からだ。  ロボットは、問答無用でイエローに飛び掛った。  地面のゴミを蹴って、跳躍してくるロボット。それにトライが、割り込んだ。  「オラぁ!!」  ガィン!!!  横から殴りつける。ロボットは火花を散らせて弾け飛んだ。  ゴミの山に転がるロボットが、膝立ちになって右手を突き出すように構える。  生身に見える右手…。その肌にスジが走り、蓋が開いて、3つの銃口が姿を現した。  「トライ!!」『応っ!!』  ブルーが叫んだ。トライが応じた。  『返してもらう! 俺の右腕を!!』  トライが、ロボットに突進した。  ロボットは3つの銃口から、それぞれ“かえんほうしゃ”“冷凍ビーム”“10まんボルト ”を発射した!!  「トライアタック!?」  イエローの驚きの声が、悲鳴のように上がる。  トライは―――。  勢いを緩めるどころか、スピードを上げて、ロボットに突進した。  「ぶつかるっ!!」  イエローが、目を両手で覆った。その時。トライは胸の前で両腕を組んで、ロボットが放っ た“トライアタック”を受け止めた!!  すさまじい電撃と炎と冷気…。  『うおーーーーっ!!』  トライは、吼えた。激しい攻撃を受けて、なお前進した。  ガァン!!!  トライとロボットが激しくぶつかり、ふたりの動きが止まった。  イエローは恐る恐る、ふさいでいた手を除けた。そして…。  グラ………。  ロボットの体が傾いだ。そして、ゴミの山に身を沈める。  トライが、身を屈め、ロボットの右手を奪い取った。………いや、奪い返した。  『再転送っ!!』  トライが左手を高くあげて叫ぶと、あげた左手にひとつのモンスターボールが。そして、ト ライの岩の巨人のような姿が、少年の姿になった。  ロケット団の衣装を着て、同じくロケット団の帽子を深く被った、しなやかな体の 少年………。  少年は、イエローを振り返って、帽子を取った。  「え………?」  イエローは思わず、声を出していた。  だって、まるで女の子みたいな綺麗な顔、してたから………。  「大丈夫か?」「えっ、あっ、うん。」  トライが手を貸して、イエローはゴミの山の上に、立ち上がった。  はるか高みにある天井から、かすかに光が差す、地下のゴミ廃棄場………。  イエローは、トライに倒されたロボットに振り返った。  へしゃげて、物言わぬ、機械(ロボット)――――。  イエローは、麦藁帽子を脱いで、花を手に取った。そして―――。  ス………。  そのロボットに、花を添える。  機械油の涙を流す、ロボットの遺体。その顔が―――。  すこし…微笑んだ気がした。  つづく  【あとがき】  初めまして&おひさしぶりです。m(__)m。真琴(まこと)です。  今回のお話しは私が以前書きました読みきり小説−15秒間の沈黙−の、続編に位置します 。−15秒間の沈黙−は読みきり“まこと”のカテゴリーにありますので、興味のある方はど うぞ、興味のない方もぜひっ、読んでみて下さい(^-^)/。