異常に優しい微笑みをしたブルーが、イエローを説き伏せるように語りかけた、真剣に。  「あのね、イエローちゃん………?」          「    どんな処でも、住めば都よっっっ。     」                     −第3話−  「えっ!? それはどういう………?」  どういう事なの? と、言いかけてイエローは、怖くて声が出なくなった。  聞きたくない真実を聞きかけて、イエローは口を噤(つぐ)んだ。けど、ブルーは、イエロ ーの質問に答えてしまったのだった。  「出られないのよ、ここから。わたしもトライも、出られなくなっちゃた。」  アハハ☆ と笑う。  いや、笑い事じゃないですよ、ブルーさん。  一ヶ月前。  ブルーの家―――。  ブルーは、自分の部屋でパソコンのキーボードを叩いていた。  それは―――。  友達との冒険の記録。  美しい思い出を、永遠に保存しておきたい。  そう思ってコンピューターに、様々な情報を打ち込んでいた。  「クスッ。」  自然にこぼれる笑み。そして苦笑。  思い出が、まるで科学実験報告書のように整然と整理されていっているからだ。  優秀な科学者夫婦の娘であるブルーは、いつものクセで、ついついこのような形式で情報を 整理してしまう。  「クスクスッ。」  モニターに映る、ブルーを挟んで笑みを浮かべるどこにでも居るような少年と、赤色の長髪 で目の鋭い少年。その写真に、笑みを浮かべる。  と―――。  ♪〜♪♪〜〜♪  ポケギアのメール着信音が鳴った。  タイピングを止めて、ポケギアのモニターを見ると……。  「うきゅっ?」  カワイイ系ポケモンのような声を上げて、ポケギアのモニターを覗き込む。  差出人不明………?  そこに、差出人不明のメールが届いていた。  メール開くくらい、いいよね…?  ブルーは、恐る恐るメールを開く。  すると、そこには、このようなメッセージが書かれてあった。  「トキワの森、地下にロケット団アジト跡があり、そこにミュウツープロジェクトNo,3計 画の失敗作たちが捨てられている。」  その内容に、ブルーの顔がガラリと変わった。  柔和な笑みが一瞬でなくなり、代わりに真剣な眼差しで宙を睨みつけた。  一度、情報をセーブして、パソコンを再起動させる。  そして、ポケギアのメール管理コンピューターに、ハッキングをかける。  メールの差出人は、厳重にロックされた情報の中にあった。  「ロケット団ボス“サカキ”の側近………?」  管理コンピューターの情報と、ブルーが持っていた情報を照らし合わせて、そのような結論 に至った。  「罠………?」  ブルーは、そう思ったが、科学的客観的事実は、これ以上得られないと判断し、自分が所属 するロケット団に敵対する組織に、連絡を入れようとした。  正義のジムリーダーたちへ。  と―――。  電話を手に持って、ボタンを―――。  押さずに、受話器を置いた。  ミュウツープロジェクトNo,3計画……!?  ブルーは知っていた。  タダでさえ強力なポケモン“ミュウツー”を、さらにロボット化するロケット団の極秘プ ロジェクトだ。  ロボット……!?  見てみたいっっ。  いけない事かもしれない。でも、ブルーの科学者の血が騒いで、しょうがなかった。  しかも―――。もし、ジムリーダーたちに相談して、充分な検証を出来ない内に警察にでも 取り上げられたら………。  「イヤっっっ。」  機械→イジくりまわしたいっ。  ブルーは、完全に科学者の顔になっていた。いや―――、ただの好奇心に輝く子供の目をし ていた。  ちょっとだけっ。  ちょっと現物を見るだけっっ。触るだけっっっ。ホッペタ、スリスリするだけーーーっ!  あと、イジくり倒して、完全に分解して、解析して、それから―――。  罠かもしれない。  でも、それでも、どうしようもないのが、わたし“ブルー”。  ブルーは、緊急脱出用の携帯式転送装置と、その予備。あと、要るものを適当にカバンに突 っ込んで、家を飛び出した。そしてトキワの森で―――。  落ちた。  「で、そこでトライたちと知り合ったわけ。」  スラム街の装甲車の前で、キャンプデッキに座って、ブルーが話を締めくくった。  シーーーーン  と、聞いていたイエローが黙ってしまう。  「てっ…転送装置は、使えないの?」  ブルーの話に出てきた携帯式転送装置について、イエローが聞く。  「ここの外には出られなかったの。」  ブルーが答える。  「でっ…出口はないのっ?」  ブルーは―――。  てへっ☆  引きつった笑いを、浮かべた。  「イヤぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」  イエローが叫び声を上げ、泣きながら走り去った。  残されたふたりが、こんな会話をしていた。  トライが、ブルーに聞いた。  「全部話さなかったのですね。」  ブルーが答えた。  「絶望を深めるだけよ…、言う必要はないわ。」  つづく