「でっ…出口は、ないのっ?」  イエローが聞いた。  ブルーは―――。  てへっ☆  引きつった笑いを浮かべた。  「イヤぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」  イエローが叫び声を上げ、泣きながら走り去った。                     −第4話−  イエローは、地下世界に落ちてきた場所に、来ていた。  初めは真っ暗だったそこが、目が慣れてくると、はるか高い天井から光のこぼれる大きなド ーム状の空間だという事が分かる。  その中央に、上から投棄されたゴミ屑が山を作っている。  山の裾には、体を失ったロボットたちが、代わりを探して、ゴミ漁りをしていた。  イエローは、山の頂に立った。  はるか高みを、見上げた。  あそこに、ボクの“いつも”が、ある―――。  かけがえのない友達が居る、家族が居る―――。  そして―――。  大好きな、心から想っている人が居る。なのに――――っ。  手を伸ばした、光に向って―――――。  両手を、伸ばした  両手を、せいいっぱいに―――――。  伸ばした………。  ト ド カ ナ イ ………………………。  「あ……………。」  「わぁーーーーーーーっ!!!」  イエローは泣き出した。  泣いた、泣いた。  大きく泣いた。  泣いているイエローに、ロボットたちが群れを成して寄って来た。  でも、それは―――。  奪う為!!  ロボットたちは、醜(みにく)く、互いの足を引っ張り合って、イエローに襲い掛かろうと した。その時―――。  失意のイエローを庇(かば)うように、一匹のポケモン“ユキワラシ”が現れた。  「ユキワラシ、ふぶき!!」  声が山の裾の方から聞え、その声で、ユキワラシが、ロボットたちに激しい“ふぶき”を吹 きかけた!  蹴散らされていく、ロボットたち…。  それを掻き分けて、山を昇って来るのは―――。  「あっ、あの時の…。」  イエローが顔を上げた。  「大丈夫だった?」  それは、イエローを助けてくれた、顔がトライに良く似た女性型ロボットだった。老婆のよ うに背を曲げている。顔と不釣合いな体を持っていた。  イエローの前で、女性型ロボットが振り返る。  そこには激しく蒸気を噴出す、巨躯の男型ロボットが居た。  ハンマーのような腕を振り回して襲い掛かってくる。  「ユキワラシ、冷凍ビーム!!」  女性型ロボットの声! 同時にユキワラシが、巨躯のロボットに、輝く冷気の光線を浴び せた。そして一瞬で氷付けにしてしまう。  「!!」  イエローが、驚きに声を上げた。  巨躯のロボットが、激しく蒸気を噴出すと、あっという間に氷が溶けてしまったのだ!!  ハンマーのような腕が、ユキワラシに振り下ろされる!  ガァーーン!!  効果バツグンの音を立てて、ユキワラシが戦闘不能になり、女性型ロボットの持つモンスタ ーボールに戻った。  邪魔者のなくなった巨躯のロボットが、イエローに迫る。  そこに、モンスターボールを持った女性型ロボットが、立ちはだかった。  「あぶないっ!!」  女性型ロボットの頭上に、振り下ろされるハンマーのような腕に、イエローが悲鳴を上げる。  ギィン!!  余韻を響かせ、女性型ロボットの頭上で、腕が止まる。  「えっ!?」  見ると、光の壁……? いや、バリアーが発生して、腕を受け止めていた。  女性型ロボットの瞳が輝いている。巨躯のロボットが、一歩、退いた。  女性型ロボットは、モンスターボールにキスをして、叫んだ!  「転送!!」  すると、女性型ロボットの姿が輝きに包まれた!  「えっ!?」  モンスターボールが、唇に吸込まれるように消え、代わりに、女性の体が変化した。  それはユキワラシの衣装を着た、美しい少女の姿…。  「うおぉぉぉぉぉ!!」  電子音と生の声を響かせて、巨躯のロボットが少女に突進した。  スッ………  軽く差し出した掌(てのひら)…。  それに触れた途端、巨躯のロボットが、音もなく止まった。  音が、凍りついた――――。  凍りついた音の中で、少女が、つぶやくように言った。冷たく  「怒りも  悲しみも  憎しみも―――、全て!!」  「……………、私に触れて、凍りなさい。」  ガシャーーーン!!  まるでガラスが割れるような響きを立てて、巨躯のロボットが、砕け散った。  細かな氷の結晶と化して、キラキラ輝く破片の中で―――、少女の瞳が冷たく光っていた。  「ぜ………、絶対零度。」  震える声が、イエローの口から漏れた。  「再転送っ!」  そう少女が叫ぶと、口元にモンスターボールが現れ、少女は以前のアンバランスな女性型 ロボットの姿に戻った。  「大丈夫だった?」  笑顔で聞いてくる女性型ロボットに―――。  イエローは驚愕の表情のまま、頷いた。  つづく