「イエロー。私達は“ゴミ捨て場”という場所……空間に捨てられた。  それだけじゃなく―――――。  はるか未来、寿命末期の膨張した太陽に、地球が飲み込まれる寸前の――――………                時間に捨てられた。           」                     −第6話−  「なぁ〜んだ、そんな事かぁ。ドキドキして損しちゃった☆」  深刻なブルーの告白に、イエローは笑って胸を撫で下ろした。  目を皿にしてビックリするブルーに、イエローは言った。  「そんなのきっと、セレビィが飛んできて、何とかしてくれるに決まってるじゃない♪」  驚きで声もないブルーと、笑いが止まらないトライであった。  「なななななっ、なにを根拠に、そんな事が言えるのよっっっ。」  どもりまくったブルーの質問に、イエローは胸を張って答えました。  「だって、ボク、カワイイもん☆ きっと、どこかのセレビィが助けてくれるよぉ♪」  エッヘン、と鼻息も荒い。  「あーーーーーっ。」頭を抱えて、うずくまるブルー。「どうしたの? おなか、痛いの? 」と、優しいイエロー。「痛いのは、頭よっ!」と、切り返すブルー。笑いすぎて、おなかが ひきつっていると思われるトライ。  そんなトライを見て、ブルーが八つ当たりをした。  「ちょっと、トライ! なに笑ってるのよっ!」  「はっ、発言を…ぷふーーーっ、許されるのなら…アハハ。」  何も泣くまで笑う事ないじゃない? トライ。  「真実は知るべき事だと思うけど、それを信じるべき事に、しなくてもいいと思うよ。」  フフフと、笑い収めてから、トライが続けた。            「   夢は、信じるべきだ   」  ブルーは、驚いて。  あきれて―――。  笑った。  「ロマンチストなロボットって、どうかと思うな。」  「えぇ、理解不能です。」  ふたりは顔を、突き合せて笑った。  そんなふたりに、トンネルの中からイエローの声が、掛かった。  「おーい、早く戻ろうよぉ。早く戻って、別の元の時間に返る方法見つけなきゃ、セレビ ィ待ってたら、クッキー冷めちゃうよぉ。」  ズルッ  ふたりは、滑った。  あの子は、現実主義者なのか浪漫主義者なのか。  苦笑して、イエローを追いかけた。  でも、知ってる?  誰にも見えないイエローの顔が俯き、その小さな唇が恐れに震えるように、わなないていた 事を―――。  トンネルを見上げ、歩きながら、イエローが聞いた。  「これって、未来の人が造ったのかなぁ?」  「ええ、おそらくね。」  風化して、ボロボロになった壁。しかし、ブルーいわく超伝導コイルを内蔵したレールがま だ生きていると言う。  床のレールがほのかに光り、道を照らしていた。そこでイエローが気付いた。  「あっ、ねぇねぇ。未来の人に連絡取って助けてもらおうよ。」  振り返って、そう明るく言う。  「もう地球を脱出した後みたいよ〜、全然、返事がないもの〜。」  すでに、やってましたか。  「元の時間のみんな、どうしてるかなぁ…。」  ブルーは、答えなかった。  「マサキさんが造ったのよね? このゴミ捨て転送装置。」  「おそらくね。」  そう、あいまいにブルーは答えたが、100%そうだと言い切れた。あれは、あの天才にし か造れない。  「マサキさんって、ロケット団の手先だったんだぁ。許せないなぁ。」  そこで、ハッと気付いて、イエローがトライに言った。  「あっ、トライは別だよっ。もう、ロケット団じゃないもんね。」  トライは無表情、無反応だった。  それに焦ったイエローが大袈裟なそぶりで、付け足した。イエローは焦ったが、きっとトラ イは、自動歩行のバッチファイルが、働いていただけに違いない。  「でもでも、トライってすごいじゃん☆ ここまで厳重に捨てられるなんて、国家機密なみ だよっ。」  国家機密………!?  その言葉に、ブルーが顔色を変えた。  「ちがう、私には機密などない。ロケット団にとって、人体実験をしていた事がバレても、 問題にはならないだろう。そもそも私の性能…転送合体は、マサキの技術をロケット団が悪用 しているだけだ。」  まさか…………。  ブルーは、考え込んだ。自動歩行プログラムを持たないブルーは、立ち止まってしまう。  そんなブルーに振り返ったふたり。考えながら、ポツリポツリと呟くブルー。  「バレて困る人が居たのよ…。」  「えっ…?」  ブルーは、続けた。  「実はね…、うわさだけど、ひょっとしたら本当だったのかも………。」  ブルーの声が迷っていた。じれたイエローが、続きを「早く早く。」と、せかす。  「政府がね、人間を機械化して、新人類を創っているって、ウワサ………。」  ……………。  「3年前…かしら。それに本当なら、証拠が残っているはず……………、そう、証拠がない のよっ! ウワサでは数千人の人間をロボットにしてるハズだもの! 証拠が残らないハズが 、ないじゃない!!」  トライが言葉を繋いだ。  「マサキが時間を超える転送装置の…時間を超える技術を考案したのは3年前…、その時は 、まだ未来にしか送れなかった………。」  イエローは、言った。  「証拠は………ここ、ダストパラディーゾにあるじゃない………。」  「ここのロケット団アジトが移転になったのが、たしか3年前だったかな……。」  「ひょっとしてさぁ………、政府高官さん…。」  「「「 ロケット団に罪を、なすりつけた??? 」」」  万が一、ここの存在がバレても、人体改造をしていた事実を、ロケット団のせいに出来る。  利用されているとは知らずにロケット団は、なにかの理由で、トライたちをこのゴミ捨て場 に捨てた……………。  「おかしいと思ったんだ〜、ミュウツーロボット作るのに、あんなに大量のロボット、試作 する必要なんかないじゃない。」  そう、ロケット団が創り上げた試作品は“トリスタン”“トリス” “トライ”の、三体だ けだった。  「これを知ったら、サカキとクレオ、ムチャクチャ怒るだろうなぁ………。」  ブルーが、敵のボスの名前と、その側近の名前を、口にする。  敵を知るブルーは、その怒りを想像して、ゾッとした。  「“悪”を“悪用”するのは、“人”だねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」  ブルーは、しみじみと言った。  「まいったね〜、バレちゃいましたか〜。」  そこに、人間の声が投げられた。  つづく