砂漠の真ん中で乗り物はとまった。  「?」  首を傾げて、イエローが、スタンを見上げる。スタンは、つぶやくように言った。  「さーっ、これからどうするかなあ?」  ステーンっっ  一緒についてきたコラッタが、こけた。そして驚くべき事に、人間の言葉でスタンに言った。  「かんがえてなかったんかい!」  その言葉に、スタンとイエローが不思議そうな顔をして、お互いを見る。  「普通、考えないよなぁ?」「そうだよねぇ?」  うんうんと、うなずくふたり。あきれるコラッタ。と―――そこで遅まきながら、イエロー とスタンが、喋るコラッタに、ビックリこん♪  「「コラッタが、しゃべったーーーーーっ!!」」  「いや、遅いで、あんたら。」  関西弁で喋るコラッタが、ハモるふたりに、突っ込みを入れた。                     −第11話−  「わいの名前は“マサキ”や、よろしくな☆ こんなカッコしてるけど、ホンマは人間なん やで。そこんとこ、よろしく。」  「おうっ、こっちこそ、よろしく! まるでコラッタみたいな人間だ。個性が強いな、マ サキ!」  自称、人間“マサキ”の言葉に、コラッタの姿を“個性”で片付けたスタンが、器用にコラ ッタなマサキと握手を交わす。  細かい事(?)に、こだわらない、おおらかな(?×2)長兄“トリスタン”こと“スタン ”であった。  「ん? マサキ………?」  イエローは、首をひねって考えた。どこかで聞いた事があるような………?  「う〜ん、う〜んっ。」  考え込むイエロー、そして―――。  ………………思い出せなかった。(爆  「まあ、いいか☆ 思い出せないんだから、大切な事じゃないんだよ、きっと♪」  イエローは、過去の事に、こだわらなさ過ぎた。チャンチャン♪  「でも、ホンマ頼むで、スタンはん、しっかりしてやー。」  マサキが腰に両手を当てて、胸を張って、鼻息を噴出す。なに威張ってるんでしょう?  「わりい、わりい☆ でも、見てくれよ。」  と、言ってスタンがモニターを指差し、それをマサキが覗き込む。  そこには地上の拡大マップが表示され、ソナーのような波紋が広がっていく。イエローも覗 き込んだ。そして聞いた。  「これ、な〜に?」  その質問に、マサキが答えた。すこし興奮した風で。  「これは人体電磁波感知センサーやなっ!? すごいやんか、半径2万km有効やなんて!」  人体も微量ながら電磁波を出している。それを感知する計器なのだ。さっきスタンが作った 。ロケット団ニャースなみの技術力である。いや、それだったら、たいした事ないか。きっと 、どこか抜けているはずだ。  そのソナーの波が、まったく乱れる事なく、表示されている。それは半径2万kmに人は居 ない事を示していた。ダストパラディーゾ以外には………。  マサキがスタンを見る。スタンがチェシャ猫のような口をして、お手上げした。  「ほなほな、こうしたらどうや!?」  言ってマサキが機械の中に潜り込んで、あっという間に改造してしまう。  「出来たぁーーっ!」  マサキが腰に両手を当てて、胸を張り、鼻息を噴出す。自慢げである。  「これで人間、ポケモン、あるいはそれに似た生命体の電磁波を感知できるはずや!」  「WOW!」「ワオっ☆ すごいや、マサキさん!」  驚いたスタンとイエローが、さっそくモニターを覗き込む。すると、はるか南に光点が表示 された!  「ここに、人間とポケモンが自然融合したような生物がおるな。いってみるか?」  マサキが聞く。「「もちろん。」」とふたりが答える。  「7回太陽が昇って、7回夜が来たらたどり着くな………。」  スタンが、つぶやいた。  重くのしかかる太陽の下を、三人は進んだ。  世界は、どこまでも砂漠で、すぐにイエローは飽きてしまった。  すると、スタンが乗り物をアクロバット飛行させて、イエローを楽しませた。  夜は、空に一面の星空だった。  月はどこにも見当たらなかった――――。  自動運転の乗り物は、夜通し、砂漠を進みつづけた。  グッスリ眠る三人は―――。  折り重なるようにして眠った―――。  そして、7回目の夜――――――。  三人はそこに、たどり着いた。  岩で出来た渓谷――――。  そこに一本の若木が、生えていた。葉を一枚も付けていない。  若木の周りには、いっぱいのミイラ化したポケモン“セレビィ”が、風化し、朽ち果てるよ うに横たわっている。  若木の下に、ひとりの人間が居た。その姿は―――。  イエローが驚きに表情を固めたまま、恐る恐る、その人間の名を呼んだ。  「ワタル…さん………?」  ポケモンリーグチャンピオンである“ワタル”が、その声に答えた。  『ビィ?』  それはまるっきり、ポケモン“セレビィ”の鳴き声だった。  つづく