女の子はお菓子で出来ている  だから、甘いんだ。  「わぁっ、ねねねっ。早くいこーーっ。」  おんなじような外見の女の子たちが、ケーキバイキングに殺到する。  付き添いで来たゴールドとシルバー、そして、道連れにされたワタルがテーブルで手を振る。  流行のファッションで身を包み、流行り言葉で喋る女の子たちは、ゴールドにはみんな同じ に見える。っていうか三つ子みたいなものなのだ。女の子たち、実結(みゆう)美由生(み ゆう)美有羽(みゆう)の三人は。  喫茶店は照明が明るく、また内装がきらびやかで、かわいい印象の女の子趣味。付き添いの 3人はやや、いごこち悪そうに、コーヒーをすすった。  今日はホワイトデー。バレンタインデーのお返しで、・・・女性陣の希望で・・・3人はケ ーキバイキングをおごるはめになっているのだが・・・。  「うっぷ。」  実結の、大皿に山盛りケーキを盛って帰って来た姿に、ゴールドがうめく。  甘いものが苦手なゴールドは、見ただけでノックアウトだ。  元気な女の子、実結がはしゃぐ。  「わぁあああぁぁ・・・、幸せーーーー。」  隣に居る黒髪の女の子、美由生が、実結のケーキに手を伸ばす。  「結(ゆい)のぉ、レモンケーキいただきぃ。」  その二人に挟まれるようにして、おとなしそうにしていた美有羽が、呟くように言った。  「由生(ゆう)、それ、もうないわ・・・。私が食べたもの・・・・・・。」  「由生も美羽(みは)も、うちのケーキとったらあかんのやぁっ。」  だって、結のケーキが一番美味しそうに見えるんだもん。と二人。  はっとして、じゃあ、しかたないか〜って納得する実結。  さてさて、大変な騒ぎである。そのとき、ゴールドが独り言を言うように、呟くように、女 の子たちには聞こえないように、喋り始めた。もっとも、ケーキに夢中になった、三人組には 、聞こえるはずもないのだが・・・。  「なあ、ワタル・・・、これは誰だ?」  唐突にテーゼ(命題)を出すゴールド。ワタルは“これ”と言われたモノを見る。  「誰でもないよ。それはコーヒーの入ったカップだ。」  ワタルがそのままを答える。シルバーは「お前バカだな。」と言う。  そう、ゴールドが指したものは手に持ったコーヒーカップだったのだ。  入っているのはブラックコーヒー。砂糖もミルクも入っていないやつだ。  ゴールドはイタズラっぽく目を細める。  「じゃあ・・・。」  「これではどうだ?ワタル、シルバー。」  と言って、コーヒーをいっきに飲み干した。そして再びテーゼを唱える。  「今までカップに入っていたコーヒー・・・今は誰だ?」  ふたりとも「ゴールド」と答えた。3匹のミュウは、「きゃあきゃあ」はしゃいでいる。  3人は実結のケーキ争奪戦を展開し、完全敗北した実結は二人をともなって泣きながらバイ キングコーナーへ向かう。「みゅうううう(ToT)」  「人間を構成する物質の原子は・・・。」  ゴールドが長々と、科学講釈をはじめる。シルバーはあくびをした。  そこで、ゴールドが言った。  「まあ、科学記号なんかじゃ実感がないだろう。では、実際に触れて見ることの出来るモノ で人体の構成を見よう。」  そこでゴールドが、今飲み干したコーヒーのカップをさかさにする。  「俺はコーヒーで出来ている。」  ごく一部分だが真実だ。と付け足した。ふたりはうなずく。  ふたりの反応を確認してからゴールドが、戻ってきた・・・山盛りのケーキを持って・・・ 目線を流すような少しの動作で3人を指して言った。  「じゃあ、アレは?なにで出来てる?」  ふたりは・・・恋人とのデートだったら、もっと遠慮するものでは?という疑問が浮かんで きそうな、凄まじき彼女たちを見て、声を揃えて答えた。  「ケーキで出来ている。」  「ケーキだな・・・絶対っ。」  そう、ソレらは体の80%以上は確実に“ケーキ”で出来ていると信じさせるものだった。  「結・・・100万歩譲ってティラミスとイチゴショートの交換よ・・・。」  「あははぁ、美羽。おしかったぁ。それ、もうあたしのお腹の中だよぉ♪」  「ふたりとも自分のを食べるんやぁっ。」  とか言いながらイチゴショートを取ってきて、せっせと美羽の皿に運んでいる実結。美有羽 は思っていた。・・・無断で、獲(と)らなきゃ、つまんない・・・と。  ハッ!!  そこでゴールドは息を呑んだ。  じゃあ・・・・甘いのか?女の子は・・・?やわらかいのか?スポンジのように・・・?  そう思っちゃうと、もう止まらない。  ゴールドが実結に手を差し出した。実結は疑問符を頭に乗せながら右手を差し出した。その 右手、その人差し指を・・・  パクッ  ゴールドは口にくわえた。  痛くないように歯を立てないように、舐めてみる。  甘くない・・・  痛くないように、優しく噛んで見る。  やわらかくない・・・  パァンっ!!!  実結のコイキングがモンスターボールから現れて、ゴールドの頬をシッポでビンタした。実 結は、まるで陸にあがったコイキングのように口をパクパクさせて、顔を真っ赤にしていた。  コイキング、ナイスパンチ。とか見当外れなことを言っているゴールドの目はパッチールの ようにグルグルだ。  「パンチじゃねえ、キックだ。」  と、きびしく突っ込むシルバー。  「ビンタだよ。」  と、それにさらに、やんわり突っ込むワタル。  さて  デートが終わってゴールドが実結を送っていく帰り道。  森の小道に、夕日が朱色を流し込んでいた。  「そうだったんだ〜。」  ゴールドに説明を求めて、理由を知った実結がそうもらした。  夕日に照らされてもゴールドの頬には真っ赤なシッポの跡。  実結は少し頬を赤らめていたのだが、夕日がそれを隠していた・・・のに。  実結は後ろで組んでいた左手をゴールドに差し出した。  「・・・ひ・・・左手は甘いかもっ、ゴールドっ。」  言って左手を差し出す。  夕日なんかで隠せない。真っ赤な顔で、うつむいて。  おひまい☆  ゴールドさん?女の子は甘かったですか??お菓子で出来ていました???  ゴールドは答えた。  「ノーコメント」  本当におしまひ☆