「さみしいよ・・・ひとりは、さみしいよォ・・・。」  寒い・・・寒い・・・  「誰か、傍に居て・・・誰でも・・・。誰でもいいからっ!」  少女“ブルー”は、泣いた。  生きるモノなにひとつない電気と機械の城で・・・。  ゴールドとシルバーの鼓動。その音がブルーの胸に響き、ブルーの鼓動を助けてくれる。  ゴールドとシルバーの呼吸。そのリズムが、ブルーの呼吸を楽にしてくれる。  ゴールドとシルバーの体温。その波動が、ブルーの冷え切った体を温めてくれる。その温かさ は、いつまでもブルーの中に残った。  あ・・・そっか、これが“いっしょ”なんだ・・・。                  −ロンサン・ブルー−  長い黒髪が、白いシーツに流れていた。  黒いワンピースを着た少女は、寒さに耐えるかのように、腕(かいな)を寄せ、油の匂いがす る部屋のベッドに横たわっていた。  ゴゥン ゴゥン ゴゥン  遠く、機械の音がする。  薄暗い部屋。その壁にあるモニターが光り、横たわる少女に良く似た、大人の女性を写し出し た。  大人の女性が、少女に優しく語りかける。  「おはよう、私のかわいい娘“ブルー”。もう朝よ。」  明り取りの窓などひとつも無い。朝日など映像以外で見たことなどあっただろうか?ブルーと 呼ばれた少女は、時計の文字盤上での朝に目を覚ます。  両手を天井に伸ばして、伸び上がり、モニター上の母に挨拶をした。  「おはよう、ママ。今日も寒いわね。」  言って、汗のにじんだ額を、腕で拭う。  「そう?室温は24.43℃。適温よ。」  母は笑顔で答える。  「あら、そうなの?」  娘は返事を返す。ムラサキに染まった唇で  ブルーは、黒いワンピの上に白衣を羽織り。寝室を出て、金属の廊下を歩く。パイプやダクト が走る、乱雑な廊下。その壁にある大きな窓ガラスから、機械で自動化された工場の光景が見え る。  物言わぬ機械たちが、機械を作り出す光景。  見向きもしないブルーが、その窓ガラスを横切る。窓に写るブルーの薄い影だけが寄り添って いた。  振り返って笑ったりしない  ふと、ある扉の前で数秒、歩みを止めた。  両親の寝室・・・開かずの間  ブルーは無感動で歩みを再開した。  ブルーは比較的キレイなドアの前に立った。  ドアは自動で開いた。そこは入り口からの光で、ノート型パソコンのスタンドだけが浮かび上 がるような、真っ暗な部屋だった。  ノートパソコンの前に立ち、起動スイッチを入れようとして、ふと思い出したように、白衣の ポケットから、栄養剤が入ったケースを出して中身をひとつぶ取り出し、口に投げ込んだ。  朝食終わり  ケースを戻して、起動スイッチを入れると、部屋の暗闇に多数の映像が投げかけられた。それ は、研究員と見られる人々の姿、その顔だった。それぞれが高名な学者たちで、それなりの威厳 を持っていた。しかし、ブルーは臆することなく、堂々と語り始める。  「では、先日に引き続き、毒素と栄養素。その共存による活力の研究結果を発表します。」  ブルーの話す内容と、ブルーが持つ煌きのような才覚に、研究員たちは圧倒され、唸った。  寒い・・・  ブルーの、心の中の誰かが呟いた。  その声を、ブルーは頭の片隅で聞いていた。記憶の縁で爪先立ちした“それ”は研究理論に押 され、忘却へと落下していった。  議論はいつも、だいたい2時間ほどで終わる。  残った時間は、ブルーの自由時間だ。6歳の頃すでに博士号を取得していたブルーに、学校に 行く必要もなく。・・・宿題もないし・・・ブルーはこの時間をひとりで  機械を作ったり  機械を作ったり  機械を作ったり  色々して、過ごしたのだった。  寒い・・・  ブルーの心の中の誰かがつぶやいた言葉に、ブルーは振り返った。  ・・・しばし空虚を見つめ、現実・・・手元の機械に目は戻った。                    −午後4時50分−  ブルーはソワソワと、落ち着き無くヒザを揺すった。  時計を見る  午後4時51分  機械に目が戻る  作業をする  時計を見る  午後4時53分  機械に目を戻す  カチ コチ カチ コチ  時計の音に耳が引き寄せられる  怒りいらだつような、涙ぐむくらい悲しむような。ブルーは部屋いっぱいに時計の音を感じて いた。  背後の扉を見る。その部屋には、セキュリティーシステムを統括するコンピューターがある。  ふと見ると  組み立てていた機械のメリープは、なぜかペリッパーになったいた。  カチ コチ カチ コチ  時計の音に背中を押され、ヒザ立ちになって、扉の前で身構えた。  午後4時59分っ!!  「ああっ!もうっ、早く来なさいよ!!」  苛立ちにヒステリーを起こし、出来たてのメカペリッパーを蹴飛ばす。  ベンッ!  壁にペリッパーが激突した時  ビー! ビー! ビー! ビー!  鳴り響く警報音っ!  「緊急連絡 緊急連絡。コンピューターが何者かのハッキングを受けています。緊急連絡 緊 急連絡・・・」  インホメーションが告げる  「来たァーーーーッvv」  喜びの悲鳴・・・にしか聞こえない声をあげて目を輝かせ、ブルーはセキュリティールームに 飛び込んだ。  モニターが壁いっぱいにある部屋のコンピューター。その前の椅子に飛び乗るように座り、腕 まくりをする。  カタ♪ カタ♪ カタッ♪  リズム良くキーボードを叩く。  ハッキングから僅か5.65秒。なのに、すでに5つのファイヤーウォール(防護壁)が破ら れていた。  ブルーの背筋を快感が、恐れを絡めて昇ってきた。  「やるゥ♪今日はスピードで来たのねッv」  ウキウキとした声は、まるで恋する乙女のようだ。  「じゃあ、こっちも行くわよォvv」  ブルーが、ハッカー迎撃システムを起動させる。コンピュータープログラム内に、1体のポリ ゴン2が現れた。  「ポリゴン2ッ!トライアタック!!」  ブルーの指示が飛ぶ!ポリゴン2が技で答える!!  コンピューターシステムエンジニア VS ハッカー・・・これはバトルだ!                    −午後5時50分−  ブルーは不機嫌に苛立っていた。  負けそう?・・・とんでもないっ!いつものように圧勝だ。コンピューターのスペックが違 う。家庭用ノートパソコンで、軍隊の迎撃システムをハッキングしようとするようなものだ。そ れを果敢に挑み、対等に勝負するハッカーに、ブルーは尊敬の念すら抱いていた。初めてハッキ ングをしてから今まで、一ヶ月間、彼は二度も同じ手を使っていない。なんて広いバリエーショ ン!なんて多彩なテクニック!立ち去った後には痕跡すら残さない見事な引き際!  ではなぜブルーは不機嫌なのか。  そう・・・彼の名前は“午後5時の君”  6時になると、跡形も無く消えてしまうのだから・・・。  寒い・・・  ブルーは幾分色の良くなった、ムラサキ色の唇を噛んだ。  苛立ちに任せて、執拗に攻撃した。なのにっ  彼は、こちらのシステムに致命的な傷を与える事など、絶対にしなかった。  私を傷つけてっ!  私を攻撃してっ!  私を殺しても・・・壊してもいいのにっ!  理屈も理性もあったもんじゃない。心の叫び  そして、午後6時・・・  彼は去った  ブルーはシートに深くもたれかかった。  手がブラリと、シートから垂れる  息をするのが、つまらなかった  心臓の鼓動を打つのが、しんどかった  生きている事すら煩わしい。楽しかった時間の後に訪れた、空しい気持ちが  ブルーとシートに、重く圧し掛かっていた。  天井は照明で白く、高かった  「寒いっ」  とうとうココロを口にして、腕(かいな)を寄せて、自分を抱いた。カタカタと震えた。  唇は深いムラサキ色をしていた。  「寂しいよ・・・ひとりは、寂しいよォ・・・。」  寒い・・・寒い・・・  「誰か、傍に居て・・・誰でも・・・。誰でもいいからっ!」  モニターに血相を変えた両親が現れ、ブルーを慰めた。  だからっ!!!  空虚感が深まった。寂しさが際立った。  孤独が・・・ブルーを・・・  犯した  ブルーは電脳城の姫として、生まれた。  有能な科学者の両親は、コンピューターにココロを移して、永遠の命を得、研究成果で手に入 れた有り余るお金で城を作り、その中で愛情いっぱいにブルーを育てた。  ブルーは・・・  生の人間に触れるどころか、傍に近付く事すらなく、育ったのだった。  不幸・・・?  ブルーの事だろ?ブルーが決めればいいさ。他人の評価や気持ちが欲しいのかい?それにいっ たいどれほどの価値がある?  人生に意味なんかあってたまるかっ!  意味がないからこそ、自分で自分の人生に意味を与えることが出来るんだ!  人生に意味があっちゃあ、不自由だ  不自由だ・・・  だから、私は“幸せ”…。  だって、私が生きる意味なんてないもの。  本当に不幸なのは“意味を持って生まれた者”  私は幸せだ…  まったく  ガキなんだから・・・  束縛・・・でも、いいよ。解放は自由じゃないから・・・。  ふふっ、色々なモノに束縛されてるのが・・・“自分らしい”。  笑っちゃうv  だから…  私を縛って…  夢が覚めた  今日もやっぱり、寒い朝だった。  薄暗い部屋。その壁にあるモニターが光り、横たわる少女に良く似た、大人の女性を写し出し た。  大人の女性が、少女に優しく語りかける。  「おはよう、私のかわいい娘“ブルー”。もう朝よ。」  明り取りの窓などひとつも無い。朝日など映像以外で見たことなどあっただろうか?ブルーと 呼ばれた少女は、時計の文字盤上での朝に目を覚ます。  両手を天井に伸ばして、伸び上がり、モニター上の母に挨拶をした。  「おはよう、ママ。今日も寒いわね。」  言って、汗のにじんだ額を、腕で拭う。  「そう?室温は24.56℃。適温よ。」  母は笑顔で答える。  「あら、そうなの?」  娘は返事を返す。寒さでムラサキ色に染まった唇で  白衣に着替えたブルーは、今日だけは論文発表する気になれなくって  セキュリティーシステム室に訪れた。  なにげなく、コンピューターを弄(いじ)っていると  「うきゅっ?」  ブルーは頓狂な声をあげた。かわいい系ポケモンの鳴き声に似ている。  ポケモン預かり所にポリゴン2…。ブルーのポケモン以外のポケモンが預けられている。  2体  ・・・・・・・・・  ブルーはコンピューターを操り、“引き取る”を選択する。  なにげなく・・・なにも、考えずにした行動だった。そして、その結果・・・  ポンッ  「!!!!!!!」  ブルーの声にならない声。  飛び出して来たのは、ブラッキーを連れた、どこにでも居るような少年だった。  「え……っ!?」  ふと、ブルーは見つけた。ブラッキーは頭だけが赤い。そしてー…少年のオシリには、先でふ たつに分かれたシッポが生え、頭にネコ耳のような・・・ふさふさの毛が生えたポケモンの耳が あった。  更に。ポケモンの手をして、肉球があるっ!  「きゃああああぁぁぁああああっvv」  ブルーは喜びで狂った。捕まえようと、神速でモンスターボールを投げつける。“ガンッ”と か音がして頭に命中し、少年は気絶した。  ・・・・・・・・・  のびてしまったポケモン少年を見下ろし、ブルーは考えた。  「結果オーライ」  自分のセリフに納得し、満足して。少年の両足を脇に抱えて、引きずって行った。  目つきの鋭い赤髪のブラッキーが、鎮痛な面持ちで頭を抱え、ついて行った。  ネコ人間…いや、この耳はエーフィーだ。  そのエーフィー人間を自分のベッドに寝かせ、まじまじと顔を拝見した。  わァ…  生の人間…(?)に、生まれて初めて出会ったブルーは、興味津々だった。  全て、見たい。  そう求めていながら  まぶしい…  なぜか、目を細めた  頬が紅潮し、胸が高鳴った。  ブルーより年下で、少年というよりは男の子という言い表しが似合う少年は…  痛そォ…  コブが出来ていた。  「ゴメッ」  右手を立てて、小さく謝った。  赤髪のブラッキーが少年の枕元に座り、ペチペチと頬にビンタをする。  「うーん」  少年は起きない  ん…?  と、ブルーは少年の、うなされて僅かに動いた唇に目を奪われた。  時間が止まった  それしか見えなくなった  顔を寄せれば届く距離。  そこに吸込まれるように、近付いた  ブルーの唇。その左下のほんの少しが、少年のそれに触れた時。  バチッ ボーンッ!  頭の中に電気が走った。目の奥がフラッシュした。  ブルーは、その現象と、自分の行動に混乱を起こし、弾かれるように身を引いた。  心臓はバクバクしている  全身の血液が全部、頭に昇って膨らむ。まるで沸騰したヤカンだ。  ああ、私。今、絶対変な顔してる。  慌てて顔を両手で覆った。すごく熱かった。  分かった。この人が“午後5時の君”だ。  顔を背けた。赤い顔をして、覆った両手の指の間から、流し目で少年を見た。  「うーん…」  と、“午後5時の君”が、目を覚ます  少年はブルーを見て訊ねた。  「ここは…?」  「だめっ!」  上体を起こそうとした少年の体を、強引にベッドに戻す。少年の首筋。襟をぐいぐいと押し た。  「あなたはビョーキなんだから、寝てなきゃダメッ!」  寝かしつけて、ふとんを被せて、濡れタオルと洗面器を抱え、足をもつらせながら、扉に向 かった。  「いい?私は水を換えて来るから、大人しく寝ててねっ!」  部屋を出て扉を閉める。  扉に背を預けて、ずり落ちるように、床に座った。  暴れる心臓。荒い呼吸。真っ赤な顔…  「ビョーキなのは私の方だよォ」  情けない顔でうつむいた。洗面器に顔が突っ込んだ。ムセた。  “おい、どうするよ?ゴールド”  ポケモンの言葉で、赤髪のブラッキーがエーフィーの少年に聞いた。  少年のポケモンの耳が、ピクッと動く。  「侵入成功だ。ブルーが居なくなったら、ポケモンと人間を分離する装置を探すぞ。シル バー」  ゴールドと呼ばれたエーフィーの少年は、視線でムセる声がする扉を指した。シルバーと呼ば れた赤髪のブラッキーがうなずいた。  ゴールドとシルバーは元々、人間の男の子だった。  「ポケモンが預けられているパソコンの中に入りたい。」と、駄々をこねたゴールドが、シル バーを無理やり引っ張って、マサキの小屋で転送装置に入り、ポケモンと合体したのだった。そ して、パソコンの中。電脳世界に入ったのだったが・・・。出てきた時、重大な事が分かった。  なんと、分離出来なかったのだ。  マサキ、曰く  「シンクロ率が高すぎるんや。特にシルバー。完全にポケモンと融合してしもてるわ。」  あえて言おう  やっちゃったねvゴールド。  災難だったねvシルバー。友達は選ぼうねv  シルバーブラッキーの“かみつく”攻撃!エーフィーゴールドに効果抜群だっ♪  てな訳で、エーフィーゴールドはシルバーブラッキーに、分離を約束したのだった。  ふむふむ  扉の向こうでイヤホンをつけたブルーが頷く。さっきゴールドの襟に、盗聴器を仕掛けたの だ。あっ、あと発信機も。  ブルーは考えた。ブルーには、ふたりから頂きたいモノがあった。  ………  「結果オーライ」  ブルーは扉を開けた。  「話は聞いたわっ。」  突然の事に、ゴールドとシルバーは、びっくりする。  「残念だけど、ここにもないわよ。分離装置、今は。」  「今は…?」  ブルーの思わせぶりな言い方を、ゴールドが拾い上げた。  ブルーの目が輝いた。  「そう、だからこれから作らなきゃいけないわ。どう?ふたりが協力してくれるなら、作れる と思うけど?」  「なにをすればいい?」  ゴールドが聞いた。ブルーは答えた。  「仕事のアシスタントと実験のサンプルになる事っ。」  ………  ゴールドとシルバーは、なんとも言えない顔で見詰め合った。  「嬉しそうだな、ブルー。」  振り向いてゴールド。うなずいて同意するシルバー。  「エヘヘッv」小悪魔のように、笑うブルー。  「あんたは実結か!?」吼えるゴールド  知らなーいvっと、かわすブルーの振り回す洗面器。そこに入った水が音を立て弾んだ。  チャプン♪  そして三人はー・・・  ふたりといっぴきは、ポケモン人間分離装置の製作にかかった。  人間のつもりで機械を運ぶ、シルバーブラッキー  こけて、つぶれる。  ゴールドが笑う。ブルーも笑う。  “いっしょ”  コンピュータールームで、背中合わせでプログラムをつくる。背中にゴールドを、膝にシル バーを感じる。  “いっしょ”  たまには息抜きで、洋画のビデオを見たりする。  悲しい場面で、泣く  ゴールドも泣いていた。シルバーも…向こうを向いて、背中で泣いていた。  “いっしょ”  やがて…ふたりは人間に戻り、電脳城を去っていった。  ひとりに戻ったブルーは、壊れた機械のペリッパーを抱いた。  ペリッパーに話し掛ける。ピンクの唇で。  「ねえ、ゴールドの呼吸がね。リズムになって、私の呼吸を助けてくれたよ。」  だきしめた  「ねえ、シルバーの鼓動がね。太鼓みたいに響いて、私の心臓をいっしょに動かしてくれてた よ。」  ギュッと、だきしめた  「ねぇ、ふたりの体温がね…。」  ブルーのかたく閉じた瞳から、滴がこぼれて、頬を濡らした。  「体温が私の体に深く…深くね、染み込んで…。今も、“あたたかい”よ…。  いつまでも、あたたかいんだよォ…」  声に成らない嗚咽が、唇から漏れた。  抱きしめた物言わぬペリッパーの目に滴が落ちて、いつまでも泣いていた。  ブルーは泣き止んで、顔を上げた。  壊れた機械のペリッパーを抱いて、開かずの扉…両親の寝室を目指した。  壊れた扉を軋ませながら開けて、中に踏み込んだ。  中は朽ち果てたベッド。横たわる白骨化した両親。  かたわらに立ち、真っ直ぐ見つめて…  抱きしめた  頬を寄せた  「パパ…ママ…」  いってきます  つぶやいて、ゆっくりふたりを降ろす  おじぎをして、部屋を出た。  ブルーは電脳城を出て、なにもない荒野に立った。  壊れた機械のペリッパーと、ポリゴン2のモンスターボールを抱いて、空を見上げる。  私は井の中のかわず。…大海を知らず  でも  天の高さを知る  見上げた空は、どこまでも高く。青く  見渡した荒野は、どこまでも広い  「えっ…!?」  そこにゴールドとシルバー。…ふたりが待っていた。  ブルーは少し顔を赤らめて、一度、うつむいた。  そして、再び顔を上げた時。瞳に輝きを宿して  一歩  踏み出した  さみしくない、大きな青い空を、胸に抱いて…。  おしまい