−第24話−  「フッ、私もその“明日の無い少年”と同じだネっ☆」  前髪をかきあげて、ユキオがキザに言った。その内容にカンタが泣き出した。  「おなぢなわけないじゃないですかっっ。ミノルを…、俺の友達を侮辱し過ぎ るなーーーっ!!」  両腕をグルグル回して、ユキオに殴りかかる。  カンタの必殺技、“グルグルぱんち”(両目を瞑っているのがポイント)をくらいながら、 ユキオは言った。ちなみにもうひとつの必殺技が“じだんだキック”。宴会芸が“ホタル”。  「さあっ、ここは私に任せて、キミたちは逃げろっ! 人類の希望を、潰す気かっっ!!」  厳しい声であった。  しかし、フリ○ンである。  「イヤだっ! あなたに助けられるくらいなら、ここで戦って死ぬぅ!!」  ウンウンと、うなずいて同意する、ミオとアヤ。  「バカな事を、言うなァーーーっ!!」  パァーーーンっ  ユキオの平手が、カンタの頬を打った。  「兄の死をムダにする気か! なにがあっても生き延びろ!!」  平手とともに、激しい叱責が飛んだ。  しかし、フ○チンである。  そしてカンタにメモを手渡し、優しく言った。  「ここを訊ねなさい。きっと、私の“師”が、力になってくれるはずだ。」  カンタはまるで、汚物をつまみあげるかのように、そのメモを受け取った。  「自分を信じるんだっ、キミは真の選ばれし者の力を受け継ぐ最強の人間だという事を。そ して、これを知っておくといい。今のライチューの姿である“ポン太”こそが最強の姿である という事を。」  自分を信じると言うか、もはや自分しか信じられないと言うか、少なくともあなた…ユキオ さんは信じられない。  カンタが心中で、コメントを挟んだ。  ポンッ☆  そしてユキオは自分のポケモン、“カイリューのマージョリカ”を出して、指示を出した。  ユキオの指示を受けて、マージョリカが、カンタたちを抱きかかえる。  「ゆけっ! マージョリカ、我が師の元へ。カンタくんたちを、命をかけて守るのだっ!!」  長いマツゲの麗しいメスのカイリューは涙して“スッポンポン”な主人を振り返った。いや 、マントと蝶ネクタイはしているが、だからなんやねん。  「フッ…、心配するな、マージョリカ。私は“不思議”だ。」  不思議?? 不死身の間違いでは? いや、不気味の間違いでしょう。  マージョリカは振り返らずに、蒼天の空に羽ばたいた。  それを、はるか上空に浮かんでいた“影”が、追いかけた。  「頼んだぞ…、私のマージョリカ。そして…未来を頼んだぞ、まいふれんど・カンタ☆」  いーーーーやーーーーーーだぁーーーーーーーーっ  尾を引いて、友(?)ユキオの無事じゃない事を、切に祈るカンタの声が、聞えた。  「もういいか?」  ピッピのダミ声が投げられた。  ユキオが振り返ると、そこにピッピを抱いたリードの姿があった。  もうすでに、“銀の瞳のカビゴン”を出している。  「ネバー マーシー(絶対に許さない)」  前置きもなしにリードが呪文を唱え始める。  「ポケモンは出さないのか?」  ダミ声で、ピッピが聞いた。  「フフン♪」  ユキオは鼻で笑った。  そして前置きもなしに、カビゴンに襲い掛かる! イカンッ! 逃げるんだっ!! カ ビゴーーンっ!  「アルゼンチンバックブリーカー!!!」  ドッゴォーーーン!  ユキオの繰り出したプロレス技が、カビゴンの巨体を地面に埋めた!!  「なんだとぉおおおおおっ!!」  あまりの事に、ピッピが叫ぶ。  凄まじい威力の技に、リードの呪文も中断してしまった。  「私は“ドラゴン使い”!! 素手でドラゴンと渡り合う漢(おとこ)だぁ!!」  フラフラと立ち上がるカビゴン。そこにユキオが飛び掛る!  「くらえ!! モンゴリアンチョップ!!!」  ズバシューーーーッ!!!  効果バツグンの技に、カビゴンが再び倒れる。  「くっ!!」  気押されて、ピッピが唸る。  「そして、とどめだあああああっ!! ロシアンルーレットぉおおおおお!!!」  「ハぁっ!??????」  ろしあんるーれっと????  そのセルフに、ピッピが目を飛ぶ出して驚く。  ロシアンルーレットって、あんた…、それって……………?  ピッピの声なき突っ込みをよそに、ユキオは、リボルバータイプの銃を抜いた。ホルダーに ひとつだけ弾を残して回し、自分の頭に銃口を当てて引き金を引く。  パァンッ☆  「なかなかやるじゃない? さすが“滅びの神に選ばれし者”」  頭から血を流して、ユキオが言う。  コルトパイソンの直撃で、なんで死なへんのん?  ピッピが額に、でっかい冷や汗を浮かべる。  「だが、私は“不気味”だあ!! もう一度行くぞおおおっ!!!」  うんうん、そうだねェ。不気味だねェ。  フラフラのカビゴンに、もう一度ユキオが襲い掛かる。それは猛獣の動きであった。  「くらえっ! ウエスタンラリアットぉ!!」  グゴンッ!!  鈍い音が、カビゴンの首から聞えた。  「そしてっ、モンゴリアンチョップぁああああ!!」  高いジャンプをして、上空からの攻撃!!  ズバシューーーッ!!  効果はバツグンだっ!!  カビゴンは、瀕死寸前っ!!  「そして、とどめだあああ!! 今度こそ、くらえーーーっ! 最も危険な、プロレスの必 殺奥義、ロシアンルーレットぉおおおおおおっ!!」  ユキオは、また、銃を抜いて、ホルダーにひとつだけ弾を残して回し、自分の頭に銃口を押 し当てて引き金を引いた。  パァンッ☆  「はぶぅっ!!」  「ふ…、負けたよ、リードくん。やはり普通の人間は“選ばれし者”には、勝てないん だね…。」  丘に、変態…もとい、いや、もとわない。ユキオは倒れた。  「しかし、私が出来なくてもカンタくんならやってくれる…。あの子は人が出来ない事をや ってのける漢(おとこ)だ。私は信じている…。ガクッ…。」  そう言うと、ユキオは、動かなくなった。  「あのな…。」  ピッピが、哀れみを込めて、語りかけた。  「ロシアンルーレットって、プロレスの技じゃないんだぜ?」  「バカなァーーーーーーーーっ!!!!!」  突然、ムクリと起き上がって、ユキオが絶叫を上げる。  叫びが、空に消えると、またしても「ガクッ。」と、口で言って、再び倒れ、動かなくな った。  カーッ カーッ  ヤミカラスが鳴いていた。  「帰ろっか…?」  ピッピは言った。リードはうなずいた。  つづく