〜〜私の王子様〜〜 ―――うずまき列島―・・の、とある島―港口――― 海。 水。 ポケモン。 釣り。 「う゛〜〜〜〜・・・」 ・・・・でも・・・・ ツバキ「釣れなぁ〜〜〜い・・・」 釣り糸を海に垂らしたまま、少女ツバキは呟いた。 なぜ彼女がここにいるのかというと・・・・ ツバキ「・・この海になら水ポケたくさんいるからって来たのに・・・・     ぜ〜んぜんダメじゃない。」 そう、偶然見かけた情報雑誌に、このオウガン島沖にはかなりの水ポケモン達が生息していると載っていた為、 水ポケモンに目がないツバキはさっそくハリキってやって来たのだ。 ・・・なのに、結果がコレ。 ツバキ「・・・はぁ〜あ。これじゃ来た意味ないし。帰ろうかな。」 がっかりしても、釣り糸はアタリすら来ない。 やっぱり帰ろうと心に決めると、ツバキは釣り道具を片付け始めた。 ・・・そんな時だった。 バシャバシャバシャ!! ツバキ「・・ん?」 突然、すぐ目の前で海がそんな音を鳴らしながら泡立ち始めたので、ツバキは思わず目を向けた。 しかも、それは段々近づいて来る。 ツバキ「な・・何?」 よぉーく目を凝らしてそれが何かを確かめてみる・・・ ・・と、なぜだか黄色い皮膚のようなモノがチラリと見えた。 ツバキ「狽ネっ!?何あの黄色いの!!     ネッシー!?UFO!?宇宙人!?人類未解決未確認中超貴重天然記念物生物!?」 考えられるだけ候補を挙げてみたが、それは全てハズレだった。 なぜなら、その黄色い物体にチラリと可愛い尻尾のようなモノが見えたのだ。 それは、茶色のかかったギザギザの尻尾。 ・・・と、くれば。 ツバキ「・・・って!あれ、ポケモン!?ピカチュウじゃない!!     大変、溺れてるんだわ!助けなきゃ!」 咄嗟にそう考えたツバキは、慌てて自分のポケモンを取り出そうと、腰についたモンスターボールに手をやった。 ツバキ「・・・は。待てよ?」 突然、思考モードに入るツバキ。 ピカチュウは電気ポケモン。 電気ポケモンは自分の身に危険が起こると電気を放電する。 水は電気を良く通す。 つまり、今、自分のポケモンを出せば・・・ コゲコゲv ツバキ「・・・・・・そうよ!釣り竿!!これでなんとかなるハズ!!」 さっきの考えはなかった事にして、ツバキは急いで今片付けた釣り竿をもう一度取り出した。 ツバキ「待っててね!今、助けるからね!」 セッティングはもう済んでいるので、ツバキは急いで釣り竿をピカチュウに向かって振り下ろした。 さすが釣り名人だけあってか、釣り糸は上手くピカチュウの体に巻きついた。 ツバキ「よし!そのまま、ジッとしてて!」 もう一度体勢を立て直すと、ツバキは急いで糸を巻いていった。 段々とピカチュウは岸へと挙げられて行く。 すっかり怯えきった様子のピカチュウを、ツバキは急いで抱き止めた。 ツバキ「もう大丈夫よ!良かったわ無事で!」 ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。 「ぴ・・・・・ぴかちゅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜!!!」 バリバリバリ!! ツバキ「狽フわぁぁ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」 混乱していたらしいピカチュウはついに耐え切れず、ツバキに向かって大放電をかました! ・・と、ちょうどその時、一人の少年がそのピカチュウを探して今ここにやって来ようとしていた。 そう・・その少年の名は、ヒロシ。 ヒロシ「レオン――――!     ちょっと目を離したスキにどこ行っちゃったんだろう・・・・     レオ―――――ン!」 ・・とその時。 ヒロシは、突然ハッとする。 なぜならば耳に入ってくる、バリバリバリという聞き慣れた音と、女のコの悲鳴。 そして、目に入る黄色い光。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・まさか・・・・・・・・!? ヒロシ「コラッ!!レオン!!!」 慌ててヒロシはその現場に駆け付けた。 その主人の声に、ようやくレオンはハッと我に返り、思わず放電をストップする。 ヒロシ「人に向かって放電しちゃダメだっていつも言ってるだろ!ロケット団相手ならいいけど!!」 ええんかい。 レオン「ぴ、ぴかちゅ〜!」 『はぅっ!ついやってしもーたです!』という顔をして、レオンは慌てふためいた。 ヒロシ「ごめんね!君、大丈夫!?」 まだ目をグルグル回しているツバキに、ヒロシは急いで駆け寄る。 その声に、ようやくツバキはハッと目を覚ました。 ヒロシ「大丈夫?ごめんね、レオン、ビックリしてついやっちゃったみたいで・・・ケガとかない?」 そう言って、ヒロシは申し訳なさそうに微笑んだ。 ・・・・と、その時。 ――――――――――――――――――――ズキュンv ツバキの心にハートの矢が突き刺さった。 ツバキ「・・・・・・・・」 沈黙。 ツバキ「・・・・・・・・(バタッ。)」 倒。 ヒロシ「煤I?」 突然、目の前で人が倒れりゃそりゃヒロシだって驚く。 ヒロシ「どっ、どーしたの!!?やっぱどっか怪我したの!!?大丈夫!!?」 レオン「ぴ〜かちゅぅぅ!!?(そ、そんな強く放電したつもりは・・っ!!)」 慌ててツバキを抱き起こすヒロシにレオン。 ――――――――違う・・・・・・・・・・ ――――――――――――――目で殺されました。(その爽やかスマイルに) ツバキ「・・・買nッ!!」 ヒロシ「あ、よかった、気が付いた!」 ようやく目を覚ましたツバキに、ホッと安堵の溜息をつくヒロシとレオン。 ・・が、それもやっぱり束の間だった。 ヒロシ「大丈夫?やっぱりどっか怪我したの?どこも痛くない?」 ツバキ「・・・・・」 自分の手は、今、この男のコに握られている。 ・・・・ので。 ツバキ「(ふらぁ〜〜〜っ・・・(倒))」 ヒロシ「狽――っ!?やっぱどっか怪我したんだね!?(汗)」 また倒れそうになるツバキに慌てるヒロシとレオン。 ツバキはなんとか意識を保持し、倒れちゃわないようにヒロシから目を背けながら訴えた。 ツバキ「あ・・あのっ!手っ!」 ヒロシ「手?」 ツバキ「はっ・・離していっ・・いただけますか!?」 ヒロシ「え?ああ、うん・・」 『?』となりながらも、ツバキから手を離すヒロシ。 それでもツバキの心はまだあっちの世界に行っていた。 ――――――――ああ・・・・なんて事なの・・・・・・・・・・・ ――――――――茶髪に青い目、一言にまとめたら・・・・美少年! ――――――――そう、それはまるで・・・・・・・・・・・ ――――――――・・・・王子様!!・・・・―――――――――― どうやらツバキは昨日、りぼ○を読んだらしい。 なんとか気絶は免れたものの、何を話し掛けても全く反応を示さないツバキに、ヒロシとレオンは心配した。 ヒロシ「・・あの・・・本当に大丈夫?病院行って、診てもらった方が・・・」 ツバキ「狽ヲっ!あっ!だっ!だだだっ、大丈夫ですっ!!」 思わずシャキッ☆と立ち上がって宣言するツバキに、ヒロシは少し間を置いて、クスッと微笑んだ。 その微笑みに、また倒れそうになるのを必死に堪え、ツバキは顔を赤らめた。 ヒロシ「・・あ、そーだ。遅れちゃったけど、ありがとう。     レオンが溺れてるとこ、助けてくれたみたいで。」 レオンの体が濡れているのと、ツバキの釣り竿が出しっぱなしになっているのとで、ヒロシはその事を察したらしい。 ツバキ「え・・あ、そ、そんなとんでもない・・・」 ―――――――――おぅわぁあ〜〜〜〜〜!会話してるぅぅ〜〜〜〜〜!!         (↑ツバキの心理状態。) ヒロシ「僕、ヒロシっていうんだけど・・君は?」 ツバキ「えっ!?わ、私!?あ、ツっ、ツツバキと申しますっ!」 ヒロシ「?ツツバキ?」 ツバキ「あ、ツバキですっ!」 ヒロシ「ああ、ツバキね。」 ――――――――名乗りましたよちょっとぉぉ〜〜〜〜!! ――――――――名前交換しちゃいましたよぉ〜〜〜〜ちょいと奥さんっ!! ――――――――い、いいいいいんですかねっ!ジャパンはっ!王子と名前通わすだなんてっ!! ――――――――なんて気さくな島国ジャパンっ!そんなジャパンに乾杯っ!        (↑ツバキの心理状態) ヒロシ「・・ね、ねぇ、本当に大丈夫?やっぱどっか傷めたんじゃ・・・」 相変わらず反応の鈍いツバキを心配しているらしく、ヒロシはそう問いかけた。 ツバキ「あっ!だ、だだ大丈夫ですからっ!心配しなくても平気ですっ!」 ヒロシ「・・そう?それならいいんだけど。」 そう言ってもう一度ニコッと微笑むヒロシ。 ・・・に、ツバキは思わずガクッと膝立ちに倒れ込んだ。 ―――――――――あぁあ〜〜〜〜〜〜〜!!眩しぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!         (↑ツバキの心理状態) そんなツバキに、ヒロシはもう一度「だ、大丈夫?」と声を掛けそうになる。 それを察して、ツバキは慌てて立ち上がり平静を装った。 ツバキ「あ、あは!あはは、大丈夫ですからっ!ねっ!気にしないでくださいっ!」 ヒロシ「う、うん・・・」 やっぱりなんか心配なヒロシ。 でもツバキが大丈夫ーと言うので、それを一応信じておく事にした。 ヒロシ「・・じゃあ、僕達はもう行くけど・・・君は?」 ツバキ「あっ!わ、私は、ポケモンセンターの方に・・っ!」 ヒロシ「そっか、じゃ、ここでお別れだね。」 その言葉に、ツバキは「狽ヘっ!!!」・・っとした。 ――――――――あたしのぶわかぁぁ――――――――――――ッ!! ――――――――どぉして『私もこれから出発するところなのぉ〜♪』って言わなかったのぉぉ―――――――っ!!        (↑ツバキの心理状態) ヒロシ「・・じゃ、行こっか、レオン♪」 レオン「ぴっか♪」 ――――――――え!? ――――――――あ、何!? ――――――――もう行っちゃうの!? ――――――――そっ、そんな急ぐ必要ないと私は思うんですがねぇっ!?        (↑ツバキの心理状態) ヒロシ「じゃ〜ね〜♪」 レオン「ぴ〜か〜♪」 そうこうしているうちに、自分に手を振って去って行くヒロシとレオン・・・・ ツバキ「・・って・・ああ〜・・・・・・・行っちゃったよ、結構アッサリしてんのね・・・」 ガクッとうな垂れるツバキ。 だが、すぐに顔を挙げて余韻に浸った。 ――――――――はぁ・・・・にしても、カッコ良かったなぁ・・・・v ――――――――ああいうのを華の貴公子っていうのよねv 一体何の事だろう。 ――――――――・・・・はぁぁ・・v・・・また、会えるかなぁ・・・・v ―――――――その島のポケモンセンター――――――― ツバキ「はぁ〜〜〜・・・vvv」 完ッ全に恋する乙女の瞳になったツバキは、カウンター席で深い溜息をついた。 ジョーイ「ツバキちゃん。・・・ツバキちゃん?・・・ツバキちゃん!」 ツバキ「・・・えっ!あっ!はいっ?!」 やっとジョーイの声に気付き、思わず大声で返事をするツバキ。 ジョーイ「どうかしたの?溜息ついてボーッとしちゃって・・・」 ツバキ「・・あ、いえ・・!」 ジョーイ「はい、あなたのポケモン、みんな元気になったわよ。」 そう言いながら、ジョーイはツバキにモンスターボールを差し出した。 ツバキ「あ、ありがとうございます・・」 それを受け取り、腰に付け戻しながらもツバキはさっきの男のコの事で頭がいっぱいだった。 そして、さっきの男のコの笑顔を思い出した途端、 ツバキ「はぅっ!!!」 がばちょっ ジョーイ「煤I?」 また失神しかけたので急いで机に顔を埋めた。 ジョーイ「・・ど、どーしたのツバキちゃん!?具合でも悪いの?」 そんなツバキの様子に戸惑うジョーイ。 ツバキは少し顔を上げると、再び深い溜息をついた。 ツバキ「・・・ジョーイさん。」 ジョーイ「は、はい?」 ツバキ「・・・顔が熱くなって、胸がドキドキするという症状は、     一体なんという名前が付けられているのでしょうか・・?」 ジョーイ「え?えーと・・そうね、それはー・・・・あら?」 ようやく勘付いたジョーイは、思わず身を乗り出してツバキを見た。 ジョーイ「・・・あなたひょっとして・・・・・・・『恋』してるの?」 好奇の目を向けられ、ツバキは少し間を空けると、再び深い溜息をついた。 ツバキ「・・・やっぱそうなんですかね〜・・・」 ジョーイ「あらまぁv」 自分の経験と重ね合わせたのか、ようやくさっきのツバキの不可解な行動に納得したように、ジョーイは微笑んだ。 ジョーイ「そーなのvそうだったのv      判る。判るわよ、ツバキちゃんその気持ち。      好きな人の事を考えると夜も眠れない・・って症状でしょ?」 ツバキ「・・まだついさっき好きになっちゃったばっかだからよくわかんないけど・・・     なんてゆーか・・・こう、胸がズッキューンvて打ちのめされましてねっ!     それからねっ!意識が遠のいてねっ!気付いたら彼の腕の中にいてねっ!     そしたらま〜た意識遠のいちゃってねっ!ホントになんだかこう胸がドキドキして苦しいのっ!」 そこだけ聞いてたら、かんなりひ弱な女の子として見なされるぞツバキ。 ジョーイ「・・・わかるわ・・・      実際、ツバキちゃんみたいに本当に気絶しちゃう子なんてそうそういないけど・・・」 あんた何気にキツイな。 ジョーイ「人を好きになる事って、とっても素敵な事だもの。      ツバキちゃん、頑張ってね!」 ジョーイに念を押され、ツバキはニッコリ微笑んだ。 ・・・と、その時だ。 「あれ?ツバキ?」 ツバキ「・・!」 ――――――――は!! ――――――――こ・・この、鈴の音のようにかろやかで澄んでいてそれでいて優しくふんわりとした美しいお声の持ち主は・・っ! (※本人、恋愛中の為、多少大げさに表現しております。) ヒロシ「・・あ、やっぱり!ポケモンセンターってここだったんだ。」 レオン「ぴっか♪(よっ♪)」 ツバキ「――――――――」 ツバキ、思考回路途切れる。 振り返った瞬間、王子様(ツバキ談)がいたのだ。 硬直しても無理はない。 ――――――――こっ!!こここ、これは夢!!?王子が今し方ここにぃっ!! ――――――――なんたる偶然!!いえ、運命!! ――――――――神様どうもありがとう!!!        (↑ツバキの心理状態) ヒロシ「・・?どうかした?」 なぜかピクリとも動かず、自分を見つめてるだけのツバキにヒロシも首を傾げる。 ツバキ「狽ヲっ!あっ!なっ!ななんでもないですっ!     そっ!そそっそそれより!ヒロシ君こそどどうしてここに・・っ!!」 慌てふためきながら一生懸命必死に会話を繋げようとするツバキ。 ヒロシはクスと微笑んでこう言った。 ヒロシ「ヒロシでいいよ。2日くらい前からこのうずまき列島で調べ物してるから、     今夜はこのポケモンセンターに泊まろうと思って。」 ・・が、ツバキの耳には届いてない。 届いているのは最初の7文字。 『ヒロシでいいよ』 ・・・それはつまり・・・ 『呼び捨てでいいよ』(←解釈) ――――――――狽ネぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!? ――――――――よっ呼び捨て!? ――――――――いっいいの!? ――――――――王子、ねぇいいの!? ――――――――そんな気さくにしてもよろしいのね!? ――――――――ああ、なんてジェントルマンなお方なのぉ〜〜〜〜〜〜〜!!        (↑ツバキの心理状態) ヒロシ「あ・・あの、大丈夫?やっぱまだどっか傷めてるんじゃ・・・」 やっぱり硬直したまま何も喋らないツバキに、ヒロシがそう問いかける。 ツバキ「狽ヲっ!あっ!いっ!いやっ!大丈夫ですっ!どこも傷めてないからっ!心配なさらないで下さいっ!」 いちいち大声で反応してしまうツバキ。 そんなツバキに、ヒロシは思わずクスッと微笑んだ。 ・・・為。 ――――――――くぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!! ――――――――L・O・V・E〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!        (↑ツバキの心理状態) 思わず膝立ちになって倒れ込んじゃうツバキ。 ヒロシ「・・・あ、あの、ホ、ホントに大丈夫なの?無理してない?」 そんな状態を見れば、誰だってそう思ってしまう。 ツバキ「狽ヲっ!そ、そんな事なないですよっ!あははっ!」 なんとか平静を装うと、不自然な笑いをもらすツバキ。 そんなツバキの背後から、ジョーイが耳打ちする。 ジョーイ「・・・彼?その好きな人って。」 ツバキ「煤I!!」 明らかにからかい口調で尋ねてくるジョーイの言葉を聞いた途端、ツバキはふいを突かれたように椅子に崩れ落ちた。 ジョーイ(・・あ、やっぱそうなのね。) その反応を見ればジョーイだって、聞かなくとも判る。 そんな恋する少女を見てジョーイは微笑ましく思うと、「あっ」と思い出したようにヒロシに目を向けた。 ジョーイ「・・あ、そうそう、ヒロシ君。どう?例の調査。ルギアの居所わかった?」 ヒロシ「・・全然・・この渦巻き列島のどこかにいるって事まではわかってるんですけど・・・どの島にいるかまではまだ・・・」 苦笑しながらそう答えるヒロシの言葉に、ツバキは、はたと思い出したように、ヒロシとジョーイに目をやった。 ツバキ「・・・・・・・・ルギア?」 ゆっくりと椅子から立ち上がりながらそう呟くと、少し考えてからまた口を開いた。 ツバキ「・・・ルギアってあの・・・伝説のポケモンの?」 何かを知っているように尋ねてくるツバキに「?」となりながらもヒロシは頷いた。 ヒロシ「うん、この列島のどこかにいるって聞いたから、調べとこうと思って・・・」 ツバキ「・・・・・・・」 ツバキはしばし沈黙すると、火を付けられた花火のように語り出した。 ツバキ「・・それならカスミに聞いた事ある!     オレンジ諸島の海の果て、アーシア島っていうところでルギアを見たって!」 そのツバキの言葉に、ヒロシはハッ・・とした。 ツバキ「ルギアだけでなく、フリーザーやサンダー。それに、ファイヤーも一緒に・・・」 そう、あれはアーシア島の古い仕来りで無理やり『すぐれたる操り人』とならされたサトシと、その仲間達の物語。 三つの宝が揃わん時、海より幻のポケモン、ルギアが現れる・・と。 現にツバキは、フルーラの事でカスミから電話でグチを聞いた経験を持つ。(サトシのほっぺにチューした、とか。) その話を聞いたヒロシは、ルギアの事より、別の事の方が気に掛かってるようだった。 ヒロシ「・・・・カスミって・・・・サトシと一緒にいるあの女の子?」 ツバキ「・・・え?」 はた、とした。 ツバキ「・・・な、なんでサトシ君の名前知ってるの?」 ヒロシ「あ、だって僕、サトシの親友だし、それにライバルでもあるから・・・君の方こそ、なんで?」 初めはキョトンとしていたツバキも、なんだか急に嬉しくなって、笑顔で急いで答えた。 ツバキ「あ、あたしはカスミの親友権ライバル!サトシ君とヒロシの関係と一緒!」 ヒロシ「え、そうなの!?偶然だねー!」 驚き合う2人だが、お互い嬉しそうな笑顔を零していた。 ツバキからすると、やっとヒロシとの共通点を見つけられた、という事で、胸が晴れ踊っていた。 今まで近寄りがたかった人が急に近くに思えたのだ。 嬉しくて嬉しくてしょーがない。 ツバキ「わ〜っ!なんかこういうのって初めて!友達関連で知り合えるのって!     でもサトシ君ってライバルいっぱいいるんだね〜♪     カスミから聞いた話だと、シゲルって子も、サトシ君のライバル権、幼なじみだって・・♪」 ヒロシ「・・・シゲル?」 ・・・突然、空気が変わった。 急にヒロシから笑顔が消え、帽子の鍔で目が隠れ、何だかとても戦闘的なオーラを放っている。 ツバキ「・・え、あ、あの、あたし何か気に触ること・・・?」 突然の異変に戸惑うツバキ。 ・・・・・しばらく間が空く・・・・・ ・・が、すぐにヒロシはいつもの笑顔で顔を上げた。 ヒロシ「カスミの親友って事は、ツバキも水ポケモン使いなの?♪」 戸惑っていたツバキも、『水ポケモン』という言葉を聞いて目を輝かせた。 ツバキ「そーなの!!凄いのよぉ水ポケモンって!     可愛いのからカッコイイのまでたくさん、たくさん、数え切れない程いいポケモン達がたくさんいるのっvvv     特にメノクラゲは頭の赤いところが宝石のルビーのようにキラキラと輝いていて、     トサキントの角のところなんてもう、ダイヤモンドの様っ!     コダックのあのオトボケた顔もチョーカワイイしっvマリルのあのつぶらな瞳ときたらもうっvv     ラプラスの素敵な美声な歌声も癒されるし、シャワーズのあの尾びれもまるで童話に出てくるお姫様みたいっvvv     そしてそして、あたしが一番一押しなのはやっぱりドククラゲちゃんよぉっ!     あの挑発的な瞳、柔らかな触手、メノクラゲより一回り大きなルビー、そしてそして、何よりもあの鳴き声っvvv     ああ、もうっ!なんで水ポケモンちゃんてばそんなに可愛いのぉっvv可愛くて格好良くて凄くて素敵だわぁっvvv」 そこまで語って、ハッとした。 そう、ここまで長い事語ってしまうと、大抵の人は引くのだ。 やっぱりヒロシも・・・・ ・・と、思って恐る恐るヒロシの顔を覗きこんだが、ヒロシは変わらない笑顔でその話を静かに聞いてくれていた。 ヒロシ「・・そっか♪僕もわかるよ、ポケモンって、奥が深いもんね。」 ツバキ「・・・―――――」 そう言って微笑んでくれるヒロシに、ツバキの顔が自然と赤らいだ。 ――――――――・・・やっぱり・・・・好きだ・・・・ ――――――――・・・違うの・・なんか・・・・・ ――――――――・・・・・普通の男の子となんか違うの・・・・・・ ――――――――すっごく魅かれる・・・・・・・・・・ そんな自分達を、背後から微笑ましく見つめているジョーイの目がある事に、ツバキは気付いていない。 ・・・・そんな時だった。 「・・おい。今のルギアの話は本当か。」 ハッと振り返る。 そこにはいつの間にいたのか、自分達のすぐ隣に一人の黒ずくめの男が立って、こちらを見ていた。 サングラスをしている為、目は見えないが。 ツバキ「? 何?あなた誰?」 そう答えるツバキの横で、ヒロシはその男の異変にハッと気付き、バッとツバキを後ろへ押しやった。 ヒロシ「危ない!」 ダンッ!!! ツバキが後ろへ押しやられたのと、そのポケモンの鋭いパンチが地面に直撃するのは、ほぼ同時だった。 ツバキを狙ってそのポケモンが動いたのは言うまでもない。 レオンがバッとヒロシとツバキの前に出、毛を逆立ててそのポケモンを警戒した。 そのポケモンはサンドパン。 なぜだか腹にベルトの装置のようなものを付けている。 その男のポケモンである事は間違い無い。 ヒロシ「・・・・”R団”・・・・?」 男のジャンパーの下から覗く、服のマークに気付いたヒロシは、その男をキッと睨み上げた。 「・・・・フフフ、ご名答!」 そう名乗るのと同時に、男はバッとサングラスとジャンパーを体から解放した。 その隣から、もう1人の男が現れ、その男もロケット団の制服を着ていた。 女性客の中から悲鳴が上がった。 ロケット団がこののどかなポケモンセンターに現れ、混乱が招じたのだ。 それを見かねたジョーイがロケット団にこう言い放った。 ジョーイ「うちはロケット団はお断りです!お客様の迷惑になりますのでお引き取り下さい!」 ロケット団A「・・・ハンっ。ジョーイさんは黙ってな。俺たちゃ、このガキ共に用があんだ。」 ロケット団B「おい、小僧。今のルギアの話は本当かって聞いてんだ。詳しく教えろ。」 そう言って、ロケット団は鋭くヒロシを睨み下ろした。 ヒロシ「・・・・・・。」 ツバキ「・・誰が!ロケット団なんかに教えるもんですか!」 我慢出来ず、ツバキは思わずそう怒鳴った。 ・・為、ロケット団の視線はツバキへと移される。 ロケット団A「お嬢〜ちゃんは黙っててもらおうか〜?それとも何か?        お前が話してくれんのか?ん?ルギアの情報をよ。」 挑発するようにロケット団は屈んで、ツバキに顔を近づけてそう言った。 それにも怯まず、ツバキは持ち前のお転婆ぶりを発揮した。 ツバキ「ロケット団の事だから、どうせ悪い事に使おーってんでしょ?     そんな人達に誰が教えるもんですか!」 ロケット団A「・・随分、威勢のいい嬢ちゃんだな。        そのうるせー口、二度ときけねーようにしてやろーか!」 そう怒鳴るロケット団の合図と共に、サンドパンがツバキを狙って身構えてきた。 思わず少し怯むツバキ。 それを見かねたヒロシが、何かを決心すると、ダッと出口に向かって走り出した。 そんなヒロシに気付いていたのか、レオンも同時に走り出す。 ロケット団A「あ、おいこら待て小僧!」 慌てて怒鳴るロケット団に、ヒロシはクルッと振り返った。 ヒロシ「ルギアの情報が欲しかったら、外に出な!」 クイッと手で外を指してから、再び出口へと向かって行くヒロシに、ロケット団もチッと舌打ちした。 ロケット団A「・・ふざけた小僧だぜ!」 ロケット団B「仕方ねぇ、行くぞ!」 ダッとその後を追い駆けるロケット団達に、ツバキは不安そうにヒロシを見つめていた。 ―――海岸――― ポケモンセンターからかなり離れた、堤防のたくさん入った海岸近くでようやく立ち止まったヒロシに、ロケット団達は息を切らしながら怒鳴った。 ロケット団A「おい小僧!ナメてんのか!こんな所まで連れて来やがって!」 そんなロケット団にも、ヒロシは冷静さを失わない。 ヒロシ「・・あのままポケモンセンターで情報教えてても、どうせはセンターを荒らすつもりだったんでしょ?     荒されるのは僕1人で充分。・・・1人でも荒せるだけでも満足してよ。」 そう言い放つヒロシに、ロケット団はまた舌打した。 ロケット団A「・・チッ・・キザなお子ちゃまだな・・」 ロケット団B「オイ。こんな所まで連れて来たんだから充分教える気はあるんだろーな?ルギアの情報。」 ヒロシ「・・・の前に。君達の目的教えてよ。」 ロケット団A「ぁあ?」 ヒロシ「君達がルギアを捜しているらしい事は判った。     でも、どんな目的があるのか、ちゃんと話して。     ・・・でなきゃ、こっちも教えがいってモンが無いよ。」 そんな駆引きを申し出たヒロシに、ロケット団は食ってかかった。 ロケット団A「テメーふざけんじゃね・・」 ロケット団B「待て。」 ・・が、もう1人に止められた。 ロケット団A「オイ!相手はどうせガキだぞ!力ずくでやりゃーすぐ喋んだろ!」 ロケット団B「馬鹿野郎。ガキ1人に話したところで何の支障もねーよ。        それに、ロケット団の力見せ付けてやんのも面白そうじゃねぇか?」 そんな相方にまだ納得いかない様子だったが、渋々ロケット団はそれを承知した。 それを見届けると、男はフゥ・・と一息つき、静かに語り始めた。 ロケット団B「・・・俺達は、伝説のポケモンを捜し求めてる。        それが、ルギアってワケだ。        そいつを見つけ、捕獲し、最強のポケモンへと築き上げる。        伝説ポケモンは強いと聞いたが、我々はそれより遥かに強く、強暴なポケモンを求めている。        ・・今、実行している任務は、ある兵器を使い、ポケモンを操る事・・・        そして、その作戦が成功すれば、そのポケモンはナンバ博士の手に渡り・・・」 ヒロシ「・・・サンバ博士?」 ロケット団A「違う!ルンバ博士だ!」 ロケット団B「ナンバ博士だ!!(怒)」 正解者、B。 「キンバだかギンバだか知らないけど、そんな悪い事に使おうってんなら尚更教えてやるもんですか!!」 その突然の大声に、ヒロシもレオンも、ロケット団2人もハッと振り返った。 ヒロシ「・・ツバキ!」 必死で追い駆けてきたらしいツバキが、息を切らしてそこに立っていた。 ロケット団A「ぁあー?ま〜たあの嬢ちゃんかー?        どこまで俺達の邪魔したら気ィすむんだぁ?」 ツバキ「ヒロシ!こんなヤツらに情報教えちゃダメよ!ルギアを捕まえて凶悪にしようなんて企む奴らなんだから!」 ロケット団Aの言葉を無視して、ツバキはそう叫んだ。 ロケット団B「・・・相変わらず威勢のいい嬢ちゃんだな。        よっぽどそのよく回る口を噤んで欲しいらしい。        ・・・・・サンドパン、望み通りにしてやれ!」 そうロケット団が叫ぶのと共に、サンドパンに付けられたベルトが赤く光るのをヒロシは確認した。 それと同時にサンドパンがツバキに突進していく。 ヒロシ「・・レオン!!」 レオン「ぴっか!!」 ヒロシの掛け声と共に、レオンの『すなかけ』がサンドパンの目に直撃し、サンドパンは思わず目を瞑った。 そのままサンドパンは勢い余って木に直撃し、しばらくその痛みに耐えていた。 ヒロシ「・・ツバキ!危ないからセンターに戻って!」 そう怒鳴られて、サンドパンに怯んでいたツバキもハッと振り返る。 ツバキ「・・・・で、でも・・・!」 ロケット団A「おい、ガキ共!!俺たちゃ気が短けェんだ!!        さっき言った通り、ルギアの情報をさっさと教えろ!!」 そう怒鳴るロケット団の元に、頭を擦りながらサンドパンが戻って来る。 ヒロシはそんなロケット団達を警戒しながら、その状況に応じた。 ヒロシ「・・ルギアならアーシア島にいるよ!でも今はもう海の奥深く底に幻として生息を絶った!     このうずまき列島の何処かにいるルギアは別のルギアで、4つの島の何処かの海に確かに存在している!」 ツバキ「・・ヒロシ・・!」 ロケット団A「・・・なるほど・・な。それだけ判れば充分だ。」 ロケット団2人だけでなく、サンドパンの口元までもニヤリと笑った。 ロケット団B「・・・・・ありがとうよボウヤ。・・だが、もうお前達にゃ用は無い。        ポケモンセンターを荒せなかったストレスが貯まりに貯まりまくちまってるんだ。        その発散といっちゃあなんだが・・・・・・        ・・・今、ここで、お前達には消えてもらう!」 お決まりの決まり文句を言うロケット団に、ヒロシとツバキはクッと身構えた。 ヒロシ「・・・そー来ると思ったよ。」 ロケット団A「それなら話は早い。ガキ2匹・・いや、そこの可愛いピカチュウも一緒に墓場に埋めてやる。        ・・・・・・感謝しろよ、ボウヤ達!!」 そう叫ぶと共に、ロケット団Aはもう一匹、装置を付けられたポケモンを取り出した。 そのポケモンは、ウツボット。 サンドパンと共にグッと踏み込むと、バッと飛び上がってヒロシ達に襲いかかった! ツバキは慌ててモンスターボールを取り出し、いざ投げようとしたその瞬間! ・・・思わず、買nッ!?・・と、動作をストップした。 だって気付いたら、ウツボットはなぜだか黒焦げになって倒れているし、サンドパンはまた頭を打ったのか、近くの木の傍で頭を擦っていた。 そして、次にハッと気付いたのは、いつの間にか自分の目の前にいるリザードの姿。 そういえば、さっき、『ドカッ』『ゴォッ』『バサッ』『バタッ』という鈍い効果音を聞いた様な気がする。 そう、ウツボットはリザードの『ひのこ』を食らい、サンドパンはレオンの『すなかけ』を食らったのだ。 どちらもヒロシのポケモンである事はもうお判りであろう。 ・・・しばらく間が空く・・・ この間、一同は同時にこう思っていた。 (・・・つ、強い・・・) 長の本人は、フゥッと服のシワを整えると、ロケット団達に微笑んだ。 ヒロシ「もうちょっと相手選んだ方がいいみたいだよ、ロケット団さん♪」 ・・・・・・・・・悪魔の笑顔に見えた。 ロケット団A「・・・お、おい、どうすんだ?このガキ、タダモンじゃねぇぞ・・・」 青ざめながらロケット団は耳打ちする。 ロケット団B「馬鹿野郎。何の為の装置だよ。怒りを増やせば、コイツらは更に強くなれんだ。」 そう言いながらロケット団Bは何やらリモコンの様な物を取り出し、ボタンを押した。 その途端、ノックアウトしなかったサンドパンのベルトの装置が赤く光り出す。 それと同時に、サンドパンの目が段々と強暴的な視線を放って行った。 その異変に気付いたヒロシ達は、ハッと身構え直す。 ロケット団B「残念だったなボウヤ達。この装置がある限り、コイツに不可能という文字はない。        コイツはこの装置によって、更に更に強くなっていく・・・それは無限だ!        いけ、サンドパン!アイツらをメッタメタに叩きのめせ!!」 そう叫ぶと共に、サンドパンはバッと飛び上がってヒロシ達に襲いかかった。 ヒロシ「くっ・・レオン、でんこうせっか!」 レオン「ぴか!」 思いっ切り地面を踏み込んでサンドパンに飛び掛って行くレオンだが、サンドパンは一振りでレオンを地面に叩き落とした。 ダァンッ!! レオン「ちゃぁっ!!」 ヒロシ「レオン!!」 急いでレオンに駆け寄るが、ツバキの「危ない!」と言う声に、ヒロシはハッとする。 ザァッ!! サンドパンがすぐ目の前で鋭いその爪を振り下ろし、間一髪でヒロシはレオンを抱き抱えてそれを横に転がって素早く避けた。 そして素早く体勢を立て直し、ビッとサンドパンを指差す。 ヒロシ「スピードスター!」 レオン「ぴっか!」 レオンのスピードスターが襲い、サンドパンが一瞬怯む。 その隙にトドメを入れ様と体勢をとったその瞬間、 ロケット団B「無駄だ!」 ロケット団が再び装置のボタンを連打した。 それと同時にサンドパンからは更に強暴的な視線が溢れ、再びレオンに襲いかかる。 レオンは急いでそれを交わし、何度もでんこうせっかを入れて行くが、何度も振り落とされた。 ロケット団A「諦めな!お前らに勝ち目は無い!コイツは無限に強くなっていく!        攻撃はその過程を助ける肥やしになっちまうんだぜ!!」 確かにロケット団の言う通り、サンドパンは更に強さを増し、赤いオーラを放ちながら強暴的な目を向けていた。 何度も攻撃を入れて行くが、何度も振り落とされるレオン。 一方、サンドパンは「1」たりともダメージを受けていない。 くっ・・と歯を食い縛った次の瞬間! バシュッ!! 突然サンドパンの体に、激しい水鉄砲が直撃する。 ヒロシ「・・!」 ハッとその水鉄砲の現地に目を向けると、そこにはドククラゲと共に身構えたツバキの姿があった。 ツバキ「今だよ!」 ハッとしながらもヒロシはすぐに頷き、サンドパンに身構えた。 ヒロシ「レオン!!」 レオン「ちゅう!!」 その掛け声と共にレオンは再びサンドパンに突進する。 ドカァッ!! 苦手な水で怯んでいたせいもあってか、サンドパンは思わず倒れ込んだ。 ロケット団A「無駄だ!!」 だが、それも束の間、ロケット団が再び装置を押した為、サンドパンは再び立ち上がり、さっきよりも更に威力を増した勢いでレオンを振り下ろした。 レオンはよろめきながらも、再びヒロシ達の前で身構える体勢をとった。 ヒロシ「くそっ・・!」 ツバキ「これじゃキリがないわ!」 ロケット団A「・・コイツは更に更に強くなっていく!いい加減無駄だと諦めろ!        そうすりゃなるべく痛くないように墓場に入れてやるからよ!」 そう言い捨てるロケット団に、ツバキは思わずムカッと来る。 ツバキ「だーれが墓場になんて入るもんですか!いちいちうっさいのよ、この・・、アルファベット親父!!」 やっぱりカスミと似てお転婆気味なツバキは、『我慢』という言葉を知らないらしい。 そして、そのツバキの言葉に少々お怒りを覚えたらしいロケット団2人は、ピキ・・と青筋を同時にたてた。 ロケット団B「・・・どうやらそこの嬢ちゃんは、もう本当に本気でマジで墓場に入りたいらしいな・・・        行けこんにゃろサンドパン!!!あの生意気な小娘共々一気にカタを付けてやれ!!!」 もうホントにキレちゃったロケット団がそう叫ぶと共に、サンドパンはホントに一気にカタを付けようと、さっきよりも凄いスピードで、ヒロシ達に襲いかかった! さっきよりも凄い威力の為、レオンでも太刀打ち出来そうにない。 それを踏まえたドククラゲが思わずハイドロポンプをぶちかまそうとした・・その瞬間! スゥ―――――・・・ 突然、風の斬る音が耳に入る。 一同「・・!」 一同がハッと目を上げると、そこには一枚の羽の姿が。 それは、キラキラと輝いており、何処か見覚えのある色をしている。 一同は、戦いも忘れて、しばらくその羽に吸い寄せられた。 ・・その時。 ヒロシの脳裏にある”名前”が浮かんだ。 ヒロシ「・・・”銀色の羽”・・・?」 その羽は、まるでこの争いを止めるかの様に、ヒロシ達の真上で宙にクルクルと舞い、それからグルグルと一同の周りをゆっくり回り始めた。 ロケット団A「・・・羽だ・・・・・・・・・・・・・銀色の羽・・・・・・ルギアだ・・・!」 その羽に目を奪われながらも、ロケット団は呪文の様に呟いた。 ロケット団B「・・おい、あれを捕ればルギアをGETするのに役立つんじゃないか・・!?」 ロケット団A「・・そうだ、それだ!あの羽を捕るんだ!」 飛び付いて来たロケット団を避けるように、銀色の羽はヒラヒラと宙高く舞い上がると、キラキラと光を放ちながら、移動し始めた。 ロケット団A「あ、待て!」 銀色の羽は風に乗せられる事無く、まるで何かに導かれる様に海を渡り、渦巻き列島4島の中のうちの1つの島へと行ってしまった・・・ ロケット団B「あっちか!あの島にルギアがいるのか!」 興奮したようにそう決め付けると、ロケット団はバッと相方に振り返った。 ロケット団B「おい、今すぐ博士に連絡だ!俺達も行くぞ!」 ロケット団A「おう!」 当然だ!とでも言うようにそう返すと、ロケット団2人はヒロシ達には目も暮れず、一目散に走って行った。 ・・為、ツバキが慌てて「狽ヘっ!?」とする。 ツバキ「あ!ちょ、ちょっと待ちなさいよ逃げる気――――」 後を追い駆け様とするツバキを、ヒロシが黙って腕を広げて止める。 ツバキ「・・ヒロシ、なんで・・!」 ヒロシ「・・あの2人の様子を見ると、奴らの仲間は多数・・かなりの人数だと思うよ。     あの2人を倒したところで、何の足しにもならない。」 ツバキ「・・で、でもルギアが・・!」 ルギアがあんな悪い奴らに捕まってしまう・・・そんな不安そうな瞳を向けるツバキを安心させる様に、ヒロシは微笑んだ。 ヒロシ「大丈夫。僕も行くから。あの島に。」 そう言って、ヒロシはもう一度あの島に目を向けた。 ヒロシ「・・・・・ルギアは絶対・・・・・―――――――――守る。」 その瞳は真剣だった。 これからあの島で、サトシ達と再開し、ルギアを巡ってナンバ博士と死闘を繰り広げる事になろうとは、 この時、ヒロシも、もちろんツバキも、誰も気付くはずもなかったのだった。 そして、ツバキはそんなヒロシを静かに見つめた。 ツバキ「・・・・・・・」 ・・・・・・・・・ ツバキ「・・・・・・・(バタッ。)」 倒。 ヒロシ「煤I?」 またイキナリ倒れるツバキに、ヒロシは慌てて駆け寄る。 ヒロシ「どっ!どーしたのツバキ!?しっかり!!」 だが、ツバキはまたまたあっちの世界に行っていた。 ――――――――ああ・・ダメ・・・・ ――――――――私、その瞳には勝てません・・・・・        (↑ツバキの心理状態) ツバキ「・・・買nッ!!」 ようやく目を覚ますツバキ。 ヒロシ「あ、良かった気が付いた!大丈夫?」 一番始めに気絶した時と、全く同じスタイルだ。 だけど、ツバキも学習したらしく、慌ててヒロシから離れてその場をとりつくろった。 ツバキ「あ・・あはは!大丈夫、大丈夫!ちょっと意識遠くなっただけだから・・!」 ヒロシ「え?」 ツバキ「狽っ!へ、平気平気!全然!うん!心配しないで!」 誤解を招くような表現をしてしまった為、ツバキは慌ててフォローを返すが、返って逆効果だ。 だがヒロシは、クスッと微笑んだ。 ヒロシ「・・・ツバキって面白いね。すっごく変わってて。」 ニッコリ笑ってそう言うヒロシに、ツバキは再び意識が遠のいていくのを感じた。 ・・けど、なんとか意識を保持し、顔が熱くなっていくのを深くかみ締めた。 ヒロシ「それと・・ごめんね。こんな事に巻き込んじゃって・・・」 申し訳なさそうにそう言うヒロシに、ツバキは慌てて否定した。 ツバキ「う、ううんっ!全然っ。     それに、あたしの方こそごめんなさい・・・足手まといな事して・・・」 そう、自分は2度もヒロシに助けられた身。 なんとなく肩身が狭かった。 ヒロシ「・・そんな事無い、一生懸命やってくれて。     ・・・正直、助かったよ。」 そう言って苦笑するヒロシに、ツバキもなんとなく笑顔が生まれた。 ・・・が、それもやはり束の間だった。 ヒロシ「・・って、いけない、急がなきゃ!ごめんね、僕、もう行くよ!」 ハッとルギアの事を思い出し、リュックを背負い直すヒロシに、ツバキから笑顔が消えた。 「えっ!!いっ、行っちゃうの!?」・・っと、思わず思ったのだ。 そして同時に「自分も行きたい!」・・とも思った。 でも、今のロケット団との戦いを見るところ、それは難しそうだ。 自分だと、かーなーり、足手まといになる事は目に見えている。 好きな人に迷惑かけたくない。 誰だってそう思うハズ。 でも、それだとヒロシは行ってしまう・・・それもイヤだ! 短時間の間で、ツバキはそれだけ一気にザァーッと考えを上げた。 ・・・だが、しかし。 ツバキ「そ・・っそだよね!ルギアの事あるもんね!うん!じゃ、いってらっしゃい!」 思ってる事と逆の事を言わなきゃいけないこの身・・・ なんか悲し過ぎて涙が出る・・・・ので、思わずクルリと背を向けて俯いた。 そんなツバキの様子に気付くはずもなく、ヒロシはレオンを肩に乗せると、ツバキにもう一度振り返った。 ヒロシ「じゃあね、ツバキ。色々楽しかったよ。」 レオン「ぴっかちゅ!(俺も色々楽しませてもらったぜぃ☆)」 (※レオン、本当はこんなキャラじゃありません。多分。) そう言われ、ハッと俯いていた顔をツバキが上げた時には、もうヒロシは後姿になっていた。 ツバキ「・・・・あ・・・・・・・」 行っちゃう・・・ ・・・・イヤだ!! ツバキ「あのっ・・!・・・・・ヒロシ!!」 思わずそう呼び止める。 その声に、ヒロシは立ち止まって振り返った。 いつもの優しい表情。 ツバキはバクバクなる心臓を押さえながら、しどろもどろに言った。 ツバキ「あ・・・あの・・・っ・・・・」 自分でも何を言っていいか判らない。 ・・・・・でも。 自然と口からこの言葉が出た。 ツバキ「・・・・ま・・またね!」 ―――――またね―――――― ヒロシはそんなツバキにキョトンとし、それから微笑み、ニッコリ笑った。 ヒロシ「・・・うん、またね。」 ――――――・・・ 顔が更に熱くなるのを感じた。 ヒロシはレオンに「行こうか」と声を掛けてから、再び前へと向き直り、歩みを運んだ。 ツバキ「・・・・・・・」 ―――――”またね”――――― ・・・うん。 迷ってた割には、なかなか思ってる事言えたかも。 なんか嬉しい。 それに・・・・・ ・・・”またね”・・・ ヒロシもそう言ってくれた。 ・・・また、会いたいっていう意味のこもったその言葉を・・・・ ・・またね・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ バタッ(倒。) ドククラゲ「煤I?」 突然、倒れる主人に驚くクラゲ。 だが、もう大分先を歩いているヒロシやレオンはその異変に気付くはずもない。 そして、ツバキは再びあっちの世界へと歩みを運んでいた。 ――――――――・・・・・・ああ・・・・・神様ありがとう・・・ ――――――――素敵な出会いをありがとう・・・! ――――――――王子に出会えて、私ツバキはとってもとっても幸せでございます・・・っ! いつからヒロシは王子になったのだろう。 ――――――――・・・・・・きっと、きっと・・・また会えるよね・・・・・・・ ―――――――――「またね」って――――――約束したもん・・v―――――――――――――――――― ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・そう。 「またね」 この言葉は約束。 また会って、一緒に遊ぼうねって意味。 その一言 まだ気付いてない まだ言えてない その気持ちを・・・――――― 今度会った時。 今度会えた時。 きっと・・・・・・・・ ☆おしまい☆ 〜あとがき〜 ・・・・・・・・なぜ、ヒロシ×ツバキ(ツバキ×ヒロシ?)なのか!!!? ・・って、思われた方、この小説を読んでくださった方ほぼ全員だと思います。 このカップリング思いついたキッカケは、友達と遊びで書いたパロディ漫画の影響です。 ・・そう。それは、某マンガ(4コマ)のキャラ達をポケモンキャラに置き換えて書いてみるという無謀な遊び・・(汗) 性格に合わせてキャラ当てはめてって、そんで設定もそのマンガそのまま使って、4コマにして書いて遊んだんです。 ・・で、その時決まった配役が、ツバキはヒロシに片思いする〜っていう設定になっていたので、 最初は普通に『あ〜、おもろいな〜』とか思いながら書いていたのですが・・ 段々、『なんかこの2人、実はお似合いなんじゃないか!?』・・って思い始めてしまって・・・・(笑) ●4コマ漫画での2人 このカップリング、ほとんどツバキの片思いで成立されてます。(私見) 忍ぶ恋的な想いなんだけど、影から一途に想っている姿はなんかすっごい微笑ましくて♪ でもやっぱギャグだから、いき過ぎたところ(生魚飾ったおまじないをするとか、バレンタインに生きたチョコ作っちゃったりとか) もあるんだけど、そこもとっても可愛いくてv 一方ヒロシは、全然ツバキのそんな想いに気付いてなくて、普通に女友達〜としか見てなかったりするのですが・・・ 甘いもの苦手なのに(そういう設定だった)ツバキのバレンタインのチョコだけはしっかり食べるっていう美味しい事してたり(笑) (ここまで話したら、たぶん、この漫画の題名わかる人にはわかると思う。そう、コミックスの表紙がかなり異色なヤツ。) ●私的な2人 ・・で、よ〜く考えたらこの2人って、ある共通点がありますよね。 それは、どっちもサトシ達のライバル権、親友だって事。 ヒロシはサトシのライバル権親友だし、ツバキはカスミのライバル権親友だし。 こんな共通点があったら、2人も何気に気合うんじゃないかって。 ・・で、そんな風に考えていってたら、こんな小説が思い浮かんじゃったんです。 ・・そんなワケで、今回思い切って書いてみたのですが・・・・いかがだったでしょうか? めちゃめちゃ、り○んの影響受けとる事は、作者本人もしっかり判っている事なので、この際ツッこまないでやって下さい・・(イヤ、ホントお願い・・) ・・にしても長い・・・ 私もう長いのしか書けないのかもしれない・・・(汗)