番外編・ポケットモンスターRPG(リアルプレイングゲーム)     その4「レイク・・・ハナダシティで一騒動」 『やあ!僕の愛しの君むしろ僕にとっての女神様!レイクよー! 久し振りだなあ、はーはっはっは!!』 レイクのポケギアの向こうからやたらテンションの高い男の声が聞 こえる。レイクはかなり迷惑そうな顔をし、ポケギアのスイッチを きろうと手を伸ばす。 『おおっと!スイッチをきろうとしてはいけないよ!』 しかし、レイクのやりそうなことはこの男にはバレバレだったらし く、レイクはため息をついてスイッチから手を離す。どうせ電源を きってもまたかけ直してくるに違いないから。 しまいに「着信拒否にしたろか・・・」と彼女は思うのだが、こい つの電話番号を拒否しても意味はない。だってハナダシティのジム とか、ジムリーダーのカスミの電話番号でもこいつはかけることが できるのだから。 『まあまあ!レイクよ、落ち着きたまえ!人間落ち着きを忘れたら 終わりなのだよ!あーはっはっはっは!』 ・・・レイクはもともと落ち着いている。むしろ落ち着いていない のはお前のほうだとレイクは思うのだがこの男、何かを指摘された ところで直すわけでもない。ゴーイングマイウェイな俺様人間なのである。 「・・・・・・で、用は何です?ないんですか?ないんだったら電話なんて かけないでください。あたしだって忙しいんですけど」 レイクは冷たくあしらってさっさとポケギアをきろうとするのだがまだ 電話相手はレイクを開放してくれそうにもない。 『なにをいうんだね!用がなければ電話をかけてはいけないという法律は この世界に存在しないのだよ!ならば!このままこの僕が君に対して 愛の言葉をかけ続けても犯罪にはならない!さあ!この僕の話をたんと 聞いてくれたまえ!』 「あたしはあなたなんかに命令されるいわれはありません!大体今何時だと おもってんですか!?」 『ん?あー、今は夜の12時30分だね。・・でも君だってもう子供じゃないんだ、 このくらいの時間は平気だろう!』 「平気じゃないからいってるんです!・・・大体あたしは一人で旅をしている わけじゃないんですから!」 といってレイクは自分をねぼけ眼で見ている旅仲間の視線を痛く感じながら 電話の相手に怒鳴る。 『んー?ああ、そうだった君は確か3人の僕を従えているそうだね!なーに、 君のためなら寝不足だって気にしないだろう!愛する姫のためなら男は何 でも投げ出せるさ、あーはっはっは!!』 と高笑いする男。 「みんなは僕じゃない!仲間です!」 『うーん、君はとかくこの僕に逆らいたがるようだねっ。しかし、 その気持ちは分からなくもない。何故なら!好きな人が相手なほど人は 反発したがるからだ!分かっている、分かっているさ!君とてむさくるしい 男どもよりか、この容姿端麗頭脳明晰運動神経抜群!人々に『王子』と慕わ れているこの僕と一緒にいたい!その気持ちは痛いほどわかる!しかし、 人は何かを得るためには何かを犠牲にする必要がある!その犠牲こそがこの 僕だったということだ!ああ、なんて惨酷な運命!しかし、この僕はどんなに 離れていても君をいつだってそう!愛しているのだよ!』 男はレイクに有無も言わせぬ勢いでそりゃあもうハイテンションで一気に話す。 たいしてレイクは怒りと呆れと恥ずかしさがいっぺんにこみ上げてきて自分でも どうしようもなくなっていた。全く!なんてこっぱずかしいことを平気 でいうんだろう!しかも一方的に! 「もう!いい加減にしてください、このロリコン!」 『恋に年は関係ないのだよ、レイクよ!だってそうじゃないか!人は10歳 離れたものとだろうが結婚するときはする!20歳と30歳が結婚すること もありえる!しかし人はそれをあまり気にしない!けれど!18歳の青年が 14歳の少女と恋に落ちたらとたんに人はロリコン扱いする!年の差など4つ! たったの4つではないか!つまりはオリンピック1個分しか差がない! 25歳の人が29歳の人と結婚しても人は文句を言わない!なのに! なぜ、なぜなのだ!おう神よ、これはこの僕とレイクに課せられた試練・・・』 『いい加減にしてよ、このバカ兄!』 あいかわらず一方的に話している男を誰か・・・少女がぶん殴ったらしい。 いや、正確にはキック・パンチ・ラリアット・回し蹴り ・アッパー・右ストレートなどもあるのだが、まあ細かいことはきにするな。 「あー・・・カスミさん・・・・・」 レイクはようやく暴走男を止めてくれた人物があらわれてほっとする。 カスミはレイクの出身地・・カントー地方のハナダシティのジムリーダーであり、 またレイクの友達である。2つ年上の16歳。 『全く!今何時だと思ってんのよ!?レイクが迷惑でしょ。 全く18にもなってそれくらいもわかんないなんて!』 カスミはえらく憤慨した様子で男に怒鳴るが、男は全くひるむ様子を見せない。 『なんだい?カスミ?18にもなって?何をいうのだね!バカと利口に 年齢など関係ないのだよ!5歳がしっかりしなくてよくて18歳がしっかり しなくてはいけないという法律はどこにもない!しかし! 人の恋路を邪魔するのは犯罪に近しい行為!君だって愛しい愛しい王子様 ・・・サトウ君との恋路を邪魔されたくはないだろう!』 『人間として間違ってる!間違っているわ!ついでにいうけどサトウ君じゃ なくてサトシだからね!一文字しか違ってないけどサトウじゃあ苗字じゃない!! ったくもう!・・・ごめんね〜〜、レイク邪魔して。じゃあ、 ポケモンゲッターの大会がんばってね〜〜』 といってカスミが電話をきった。 プープープーという音がやたら小さく感じてしまった。 さて・・・これでは一体何の話か理解できないだろう・・。 なにせ電話の相手は本編にもでていないつまり「新キャラ」というものである。 このままでは話が全く分からないだろうというわけで、今から2年前・・・ レイクが12歳のとき。まだハナダシティにいたころの話をするとしよう・・・・。 〜2年前〜 まだ、レイクがポケモンゲッターを志してはいなかったころのことだ レイクはそれでもポケモンをもっていて当時は一応「ポケモントレーナー」と してポケモン協会に登録されていた。彼女は昔からよく遊んでもらっていた カスミのいるジムの門下生として毎日をすごしていた。 よく晴れた日のこと。レイクはジム内にあるプールでポケモンと一緒に泳いでいた。 泳ぐのが好きなレイクと彼女のポケモンたちはゆっくりのんびり 楽しくそのひと時を過ごしていた。 そんなプールのある部屋に意気消沈している様子のカスミがふらふらとやってきた。 そしてレイクがいるあたりのプールサイドに深くため息をつきながら座る。 レイクは「またサトシさんに鈍感なことでもいわれたのかな」と思ったのだが、 どうもそうではないらしい。ちなみにサトシというのはカスミの恋の相手でカス ミと同じ当時14歳の少年。幼いながらポケモン四天王をも上回る実力を持 っている少年。しかし恋愛関係にはひどいがつくほどの鈍感さんで カスミがそれらしいことをほのめかしているのに全く気がつかない。 ・・・なんかもう「好き」といってキスされても気づかないんじゃないか というくらいの鈍感さんなのだ、いや、まじで。 しかし、今回はまた違う用件で落ち込んでいるようだ。 「・・・どうしたんですか?」 そこぬけに明るくて前向きなカスミがここまで沈んでいるということはま あとんでもないことなんだろう。 「・・・・・・・・・帰ってくるのよ」 「え?」 「・・・・・お兄ちゃんが帰ってくるの」 ああ、そういえばカスミさんにはお兄ちゃんがいたっけ。 たしかあたしが4歳くらいのときから旅に出ていたらしい。よく分からないけど。 町の人の話だと『あれは天性の俺様人間だよな』とか 『ついでに歩く一方通行スピーカー』とか『顔と能力はあるんだけどなあ・・・ いかんせん阿呆というかバカというか・・・・』と かあんまりいい噂を聞いたことがない。 時々カスミさんが自分の口から兄の名前やエピソードをこぼすのだが、 どうも彼女は自分の兄が苦手らしい。 そんな彼女のお兄さんが帰ってくる。 「ああ・・・・今日サトシも遊びに来るのに〜〜。 もう、あの人が見たら何いいだすかわかんないんだって・・・」 「・・・そんなにすごい人なんですか?」 「・・・ある意味では最強の男よ。私よりは2つ年上だから今は16歳かな。 ・・・全く今まで電話の一本もよこさなかったからてっきり ドジ踏んでがけから落ちたのかとばかり思ってたけど。」 「・・でも家族と再会できるんだからいいじゃないですか。 カスミさんのご両親ももういないから、家族と呼べるのはそのお兄さん だけなんでしょ?」 「・・・家族と呼ぶのもおぞましい男よ、あれは・・・・」 ・・・・なんか本当に評判悪いなあ・・カスミのお兄さん。 「ああ、やっぱりここにいたか。よっ、カスミ。あとレイク」 一瞬カスミは兄がきたのではないかと思ってびくっと肩を震わせたが来た のはどうやらサトシだったらしい。赤い帽子に黒い髪、黒い瞳、 赤いジャケットに黒いTシャツの結構かっこいいその少年。 もちろん中身はウルトラオオボケボーイ。 「ああ・・・サトシか・・・びっくりしたあ」 カスミは本当に驚いたらしく顔が引きつっている。 サトシは「何でそんなに驚いてんだ?」と頭をひねる。 「俺は幽霊じゃないんだけど・・・まあ、いいや。お前にお客さんがいるぞ?」 「えっ!?」 いやな予感。 「なんか・・・派手な人だね。いや、別に着飾っているわけじゃないんだけ どなーんかきらびやかなオーラがあってさ。『我が愛しのマイスイート! この僕、レイ様が君に会いたくて会いたくてしょうがなくて満を持して帰って きた!君に会えるのが楽しみで楽しみで仕方なくて3日前からデザートの プリンがのどにはいっていかないのだよ!さあ、恥ずかしがらずにこの僕 に会いにきてくれたまえ!』とかなんとか叫んでたぞロビーで。 ・・・みんながあっけにとられてた」 そうサトシがいうとカスミが顔面蒼白したかと思えば顔を真っ赤にさせ、 すぐに立ち上がってロビーへと一目散にかけていった。 「じゃあ、あたしも着替えよっと」 レイクはプールからでてポケモンたちをシャワーに連れて行った。 塩素くさいままボールにいれるなんて可哀想だし。 ・・・なんかとんでもないお兄さんみたいだけどまあ、会って挨拶ぐらい はしないとね。 レイクは「一体なんなんだよ・・・?」と全く状況がのみこめていない サトシをおいて、シャワー室へと行った。 「全く、せっかく兄妹の素敵な再会だというのにいきなり殴るなんて。 まあ、それも愛情の裏返し、分かっているとも。ああ、分かっているさ。 君は父君の血のほうが濃いから意地っ張りだということも! そして本当は『お兄ちゃん〜』といってこの僕と熱き抱擁をかわしたいと いうことも!分かっている!分かっているとも! 僕は非常に思慮深い人間なのだから君のその裏返しの愛情、 素直に受け取ろう!さて、改めて久し振りだね。」 再会した早々、ダッシュしてきたカスミに強烈なパンチを食らわされた カスミの兄・・レイは赤くなった自分の右ほほをさすりながら それでいて笑顔でカスミを見ながら一方的に話し続ける。 「・・・・ああ・・・もうどっからつっこめばいいの・・・どこから・・・・」 そしてせっかくの再会も全く嬉しいと感じないカスミはこの破天荒人間にど う接すればいいのか分からず頭を抱える。 「さて、せっかく再会したんだ。ゆっくりと語ろうじゃないか。 じゃ、お茶入れて。もちろん紅茶。あと、お菓子もさっさとだしたまえっ」 「自分でやれ!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 とりあえずロビーでずっとこんなバカバカしい論争をし続けていてもしょう がないのでカスミとレイはジムの二階にある『家』にいき、そこで落ち着くこ とにした。 レイは「うーん、この古ぼったいこの僕に全くあわない家も久し振りに見ると まあ少しはきれいに見えるね」とかなんとか移動中ずっと大きな声でつぶやいている。・・・もちろん彼はカスミに話しかけているつもりなのだろう がカスミがとことんシカトしているのでただの独り言と化していた。 いつもレイクやサトシと一緒にお茶を飲んでいる部屋にレイをいれ、カ スミは(仕方なく)お茶とお菓子をもってきた。しばらくお互い何を話 せばいいのか迷っていたようだが、やがてレイが口を開いた。 「さて・・・・。何から話せばよいのやら。うーん、あそうだ! まずはこの話からして差し上げよう!昔々あるところにおじいさんと おばあさんがすんでいた!まあおじいさんおばあさんといっても 昔からすればのことであって今からすればただの中年のおばんとおじんなのだが。 あるひおばあさんは川に洗濯にいっていた! すると上流のほうから桃らしきものがどんぶらこっこ、どんぶらこっこと 流れてきたのだ!」 「桃らしきものってなに・・・?」 「おばあさんは3日間特上の寿司しか食べておらず、 おやつもプリンアラモードだけという非常につつましい生活をしていたのだ!」 「いや、ぜんぜんつつましくないでしょ。ていうかなんで昔々なのに プリンアラモードがあるわけ・・・?」 「おばあさんは桃らしき物体に思いっきりしがみついた!! しかし、しがみついたはいいが川の流れは速すぎておばあさんは そのままどこかへと流されてしまったのだ!!」 「・・・・・・・・・・・・・」 「一方、おじいさんは山へ芝刈りに行っていた!まあとった竹を運ぶ力は なかったから意味はなかったのだがね!そんなおじいさんはある日光る 筒を見つけた!おじいさんは興味をもってその竹をどーん!と切ったのだよ! すると!!なんと中から!」 「あふれんばかりの黄金虫がでてきたのだーーーーーーーーー!!!!!」 レイは急にたちあがって大きな声で叫ぶ。 (ああ・・・今斧があったならこいつを一刀両断したい・・) ・・・・・・・・。 「で、兄さん結局何しに来たの?」 「・・・うむ。いやあもう少しで父君と母君の命日だったかなと思って。 近くを通りかかったので久しぶりに墓参りでもしようかと思い参上したしだいだよ。・ ・・・ところで、さっきジムに入るときにあったあの少年は何者だね?」 さっきまでもバカ口調から急にまじめな兄貴口調へと変わった兄に カスミは一瞬驚き、反応が遅れた。 ・・・・いや、つうかこの番外編ってたしかレイクが主役のはずでは・・?・ ・・・まあ、成せばなる!成さねばならぬ何事も!(意味不明) 「え・・・?あ、あいつはサトシっていうの・・・・」 カスミは赤くなってうつむきながらつぶやく。 「ほう。サトウ君というのか。」 「サトシだってば!」 「で、そのサトウ君は君の恋人なのかい?」 ・・・人の話は全く聞かない。だって、俺様・・王様人間だもん。 カスミはそれをあわてて否定する。 「ち・・・違う!あいつは・・たたたただの・・・ととと・・友達!」 「・・・・少なくとも君は彼を好いているようだね。」 さすがのレイもカスミの尋常ではない態度によって彼女の気持ちが分かったようだ。 カスミはかすかにうなずいた。 「あ、カスミさん、ここにいたんですねー。一階にはいなかったもので」 ガラッと部屋のドアを開けたのは、さっきまでプールにいたレイクだった。 普段は縛っている髪の毛も今はしばっていない。 そしてその背後にはサトシもいる。 「あ、レイク。」 「ごめんなさい、兄妹みずいらずのところを・・・。迷惑でした?」 「ううん。むしろ助かった」 とカスミは本気で「助かった〜〜」という表情だ。レイクは「 そんなにすごいお兄さんなのかな・・・」と思いながら、カスミの正 面にいるレイをちらと見た。 長い黒髪を後ろで束ねていて、白いシャツの上に白いズボンという いたって地味な服装ではあったのだがどこかきらびやかで派手な感じ。 カスミとは似ても似つかないその青年はカスミよりも 2つしか違わないのにもう成人男性に見える。はっきりいってかっこいい。 そんなレイはレイクをじーっと見つめ、急にはっとするといきなり 立ち上がり自分のことを見ていた彼女の手をつかんだ。 「!?」 ななな・・・なになに!?いきなり何!?レイクはあまりに 突然の事態をのみこむことができずに固まる。 「おお!なんてかわいらしい少女なんだ!」 「え」 カスミとレイクは目を丸くする。サトシはただぼっとつったっているだけ。 「僕は黄色い髪の毛で少し年下の元気そうで可憐な少女が好みで! まさに君はこの僕にぴったりの人間!そうかそうか・・・ ついにこの僕の元にも皇女様がやってきたのだね!皇女様が!皇 女万歳皇女ワンダホー!ウェルカムマーイプリンセスようこ そいらっしゃいましたー!!!」 「はあ?」 な、なんなのこの人は!?つうか何者!?・・いや、カスミさん のお兄さんだけど・・・いや何、いきなり・・え?あたしはどう対 応すればいいの・・・・?・・・というかこの人本当に・・・何!? 「ちょっと、兄さん!レイクにちょっかいださないで!」 「ちょっかいなどだしていない!僕はこの皇女様にささやかな愛の 告白をしているだけさ!」 「それがちょっかいというのよ!」 とカスミは自分よりも30センチは高いんじゃないかというレイの頭を ジャンプしてこづく。 「痛い!ああ、そうこれは愛!愛の痛みなのだ!分かる、分かるとも妹よ! 君が兄の愛情をこの少女に奪われたことに嫉妬していることに!そして この痛みは君の痛みなのだということも!だが、君にはもう愛すべきものがいる! そう、サトウ君が!」 「だからサトウ君じゃない!!ていうかあんたのことなんてちっとも 兄としてなんか見てない!」 「サトウ君って誰?お前の友だち?」 と兄妹のバカ論争に横槍を入れるサトシ。・・・あんたのことだとは カスミはいえない。・・・まあいってもどうなるわけじゃないけど。 だからこれはレイクの話じゃなかったのか!?いや、レイクよりもこの 兄妹が濃いせいか!?がんばれレイクー!(もう意味不明 「とにかく!!・・・えっと皇女様の名前はレイクだったかな!? よろしく頼むよ皇女様!」 「な・・・ななな・・・・・」 まずい・・・この人は・・・・この人は・・・・。 世がいう変態OR変人もしくはその両方の人間だーー!!!! 「それでは皇女様に貢物を差し上げなくてはね。・・本当はカスミへのお土産だったんだけど」 「どーいうことーーーーーーーーーー!?」 「これはね、とある名前も忘れたそもそも名前なんてあったかも微妙な 骨董屋さんで買ったいわくつきのオルゴールらしいのだ! なんでも昔このオルゴールを抱きながら亡くなった少女が怨霊となって このオルゴールに宿り、以降このオルゴールを手にしたものは続々と 呪い殺されていったらしい!ま、そのおかげでとっても安く購入できたのだがねっ」 「そんな危ないものを買うなーーーーーー!!!ていうかそんな危ないものを 私にあげようとしていたのこのバカ兄!!!いや、というか怨霊がとりつい ているんだと分かっているんだったら買うな!いや、というか レイクにそんな危ない代物を渡さないでよ!」 カスミはニコニコ笑いながらその呪われたオルゴールをレイクに手渡そうと するのをあわててとめる。 ・・・そんなものを「安いから」という理由で買い、挙句の果てに約6年ぶ りに再会する妹のお土産にし、今は一目で気に入ったレイクに渡そうとするその神経はいかなるものか。 もちろん、レイクは思いっきり否定する。 ちょっと、待ってよ!幽霊つきのオルゴール?冗談じゃないよ!見た目は 確かにきれいだけど、でも呪い殺されるなんてまっぴらごめん!冗談じゃないよ! 「いやです!あたしはそんなの受け取れません!」 「遠慮しないでくれたまえ!」 「普通の人間は拒否します!」 「いや、君は何せ皇女様!普通の、一般人とは違う!よって 拒否権は君にはないのさ☆」 「そう意味じゃなくって〜〜〜(ああ・・・誰か助けて・・)」 レイクはレイを殴りたい衝動に駆られたがどうにかおさえつける。 ・・外見も似てないけど中身も似てない・・この兄妹。 レイは不満そうな表情だ。 「まあ、これも恋の試練のうち・・・仕方ないなあ。・・・じゃあ、 ポケモンバトルで決着をつけようではないか。君が勝ったらこれはカスミに渡そう」 「私を殺す気!?」 「で、もし君がまけたらこれは君のものさ」 「ポケモンバトルに命かけたくありません!」 「いや、別にオルゴールを開けさえしなければ大丈夫らしい。 あまりに些細なことだったので忘れていたよ」 ・・・そこはかなり重要なところである。 「・・・・・」 どうせここで拒否してもこの人はあきらめないだろうなあ・・ ・それにあたしはカスミさんの元で修行をしてるんですもの! こんなおちゃらけた人には負けないわ! 「分かりました。やります!」 「おう!それでこそ僕の皇女様!僕のいうことを聞いてくれる素敵な皇女様!」 ・・・・・・俺様だ・・・・こいつ、俺様だ。 「・・・ああ・・・もう・・・私どうすればいいのお〜〜」 ことの成り行きにただ脱力し涙を流すしかないカスミの肩を、サ トシがやさしくたたいてあげた。 そして4人は今、ハナダジムのジム戦を行っているプールへと移動した。 どんなフィールドか想像がつかない方はアニメのジムフィールドを 思い浮かべてくださればよろしいです。 「さあ!時間はかけたくないから1対1で勝負するよ!」 「はあ〜〜い」 「おいおい、元気がないぞ、皇女様☆」 ウインクをするレイはレイクの元気のない理由が自分にあるとはもちろん、 思ってはいない。 「はあ〜〜。まあ!バトルなら自信があるからいいや。よし、 あたしはこの子でいくよ!いっけー、コイッチ!」 とレイクが飛び跳ねながら元気よく繰り出したのはギャラドスのコイッチ。 「へっへー、水といえばこの子!」 「ああ・・・元気な皇女様も魅力的だねっ。だが、バトルは手を抜か ない!それこそが皇女を護る王子の義務だから!さあ 、行きたまえ、我がポケモン、スターミー!」 とレイが繰り出してきたのはスターミー。 「さあ、レイク!君からどうぞ!」 「・・・よし、コイッチ、まずは竜の舞!そこから破壊光線!」 「え!?レイク、いきなり大技!?」 もうわけも分からないまま自分の愚兄と門下生(友達)とのバトルを見ていた カスミが驚きの声を上げる。 「・・・レイク、あせってるな。まだバトルは始まったばかりなのに・ ・・破壊光線ははやまりすぎだ・・・!」 なんかもう影が薄くて「お前おったん・・?」 みたいなサトシがレイクのいきなりな攻撃に驚く。 といっている間にコイッチは攻撃力とすばやさを高め 、その強力なエネルギー弾を発射する。コイッチはその反動に固まる。 「・・そうか、その大きな破壊光線は君の僕に対する愛の大きさか!分かっている、分かっているとも!しかし残念ながら僕は痛い愛はごめんだねっ。 スターミー、高速スピンでちゃっちゃとよけたまえ!」 レイはとんでもない早口でそう一気に言った。はっきりって早口す ぎて何をいっているか聞き取りにくかったが少なくともスターミーはそ れを理解しているらしく(きっと慣れっこなのだろう)自らの体を素早 く回転させ間一髪で攻撃をよける。 そしてその体は動けないコイッチに向かってくる。 「どうやら僕に出会えた喜びのあまり、戦法を間違えたようだねっ。 ああ、なんてけなげな少女!ますます気に入った!さあ、いっそ一 発で決めてしまおう!スターミー、瞑想から10万ボルト!」 「ええ!?」 しまった!あのスターミーは十万ボルトが使える! 特殊攻撃力をあげたスターミーの強烈な10万ボルトが動けないコイッチに 容赦なく炸裂する 「コイッチーーーーーーーーーー!!!!」 バタ コイッチはあっけなくその場に倒れた。 「・・・ギャラドスは戦闘不能のようだね。つまり、この僕の勝利というわけだ」 レイが微笑みながらスターミーをモンスターボールに戻す。レイクもその場 に座り込みながらコイッチをボールに戻す。 レイがつかつかとオルゴールを持ってレイクの元へと向かう。 「・・・・最初に破壊光線を使ったのはまずかったね。・・相手に簡単に 反撃をさせてしまうから。まあ、君のコイッチとやらはなかなかよく育てら れていたね。皇女様にしては上出きさ。さあ、このあければもれなく美し い音楽(仮)と怨霊がでてくるこのいわくつきのオルゴールを受け取って くれたまえ!!!」 「って、あんたは人の気持ちを考えて物をいえーーーー!!!!」 落ち込んでいるレイクに容赦なく呪われたオルゴールを渡そうとする レイにぶちぎれたカスミのキックがヒットする」 「うわああ!」 レイは蹴られたために床に勢いよくこける。・・・ついでに手にしていた オルゴールがこぼれる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「あ」 「あ」 オルゴールのふたが開く。 オルゴールから神秘的で美しくかわいらしい音楽が流れる。 ついあせって自分なりのバトルができなかったレイクもその美しい音色に顔をあげる。 きれい・・・・・・。すごくきれい・・・・・・・・。 でも。 ふたを開けたってことはもれなく・・・・・も・・・・もれなく・・・・・。 『だああーーーーーーーー!!むかつく!』 怨霊もでてきちゃうってことだーーーーーーーーーーー!! 呆然としている4人の前に現れた「幽霊」否「悪霊」。 青白い、足のない少女。ウェーブさせた長い長い髪の毛。 カスミと同い年くらいの少女。ワンピースを着た少女。 恨みがましい瞳でレイクを睨んでいる少女。 「ほら・・・ね。僕の言ったことは真実!紛れもない真実なのだよ!・・ いやあ・・本当だったんだね・・・ははは・・・」 レイは「まさか本当に幽霊が出てくるとは思わなかった」といわんばかりの表情だ。 『許せない!せっかく私を胸に抱いてくれた王子様があらわれたのに! それなのに!あんたみたいなちんけな娘にとられてしまうなんて!』 少女はレイクを指差しながらそのかわいらしい言葉で恨みの言葉を吐く。 「え」 レイクはなにがなんだか分からない。何よ、それ・・・ どういうこと?あたし、いつどこで幽霊に恨みをかわれることをしたの? 幽霊の少女はそのあと、レイのほうを向いてほほを染める。 『ああ・・・・!200年もの間いくつもの男に貰われ、抱かれ。 なぜかそのあと死んでしまうのだけれど・・・。とにかく、今までで一番素敵な殿方v私の理想の王子様v・・なのに!なのに!このような娘にとられてしまうとは! 恨めしい!恨めしすぎてもう何もいえません!』 ・・・・・この少女はどうやらレイに恋したらしい。 しかし、ぶっちゃけレイクには関係ない。 「だったら勝手にすれば・・・?」 思わずそういうレイク。 「って、君は僕を殺す気かい?全く、冗談のうまい皇女様だね! でもそんな君が大好きさ!」 といってがばっといきなりレイクを抱きしめようとする。レイクは 必死にそれをとめる。 「ぎゃあ!!」 ・・・そしてもちろん幽霊少女の火に油をそそぐ事態となる。 『くやしい!!なぜ!?こんな女などよりも私のほうが遥かに美しいのに!』 「だって僕色白いひとは好みじゃないもん(きっぱり)」 『そんなこと!がんばれば改善できますわ!』 (いや、無理だろ 幽霊だし) と心の中でつっこみを入れる4人。 「それに僕は君みたいに不健康っぽい人間は嫌いなのだよ」 (そりゃあ幽霊は健康ではないわな) 『そんな!ああ・・なぜそのような冷たいことを申すのですか!?ああ・・・・なぜ!?・・・そうですわ・・・・このこが・・・この子が悪いのですわ! 私の王子様を横から急に奪いやがったこの娘が!』 「え!?あたしは無実よ!」 ・・・・全くの無実といえるかどうかは微妙だけど(待 なんであたしに話題を振るの!? 『あんたが悪い!』 少女は目を思いっきり開くとレイクの首を自分の髪の毛で縛り、 レイクを上へとあげていく! く・・・・・・・苦しい! レイクは必死に抵抗するが、もちろん縛り付けているものは実体ではなく怨念。 ほどけるはずはない。よほど霊力のある人間かこの少女が自分か らやめてくれない限りはとくことはできない。 『死ね!死ね!死んでしまえ!』 「ちょっと待ちたまえ!レイクには罪はない!悪いのはこの僕を足蹴にし 、オルゴールのふたをあけてしまったカスミだ!」 こんな状況にもかかわらずとんでもないことをいっているレイ。 いや、あんたがそもそもこのオルゴールを買ったのがいけないんです。 ・・・つうかなんつうチグハグした質問。 「というか!やるんだったらレイクではなく、こっちにしたまえ!」 といって実の妹であるカスミをさしだすレイ。 「このひとでなし!」 「なんだ、カスミでは不満だというのかね?うーんカスミもそれなりにか わいいとは思うのだが。まあ、カスミがだめならサトウさんがいるから 、安心したまえっ」 安心できるか つうかサトウさんじゃなくってサトシだから い い加減にしろよ 『いやだ!貴方の気持ちが私のものにならないなら!この女を殺す!』 「や・・・・・やめ・・・・・・や・・・・・て・・・・」 苦しい 苦しい やめて やめて やめて やめて 苦しみ、もがくレイク 彼女の中の視界は完全に闇にとらわれる そして 少女の思いが流れ込む 大きな館 楽しそうに笑っている少女 傍には一人の男 男が少女にオルゴールを渡す オルゴールの音と近くで笑っている男 のおかげで幸せいっぱいの少女 暗転 男の死を告げる手紙 泣き叫ぶ少女 己の体を蝕む病魔 死 終幕 男を待ち続け 待ち続け そしてその思いは彼女をゆがませる せっかく 会えた会えた会えた 今度こそは 邪魔するな 邪魔するな 邪魔するな 邪魔するな!! 『死ねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』 「いやああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」 叫 〜〜〜〜〜 「レイク・・・・・レイク?」 自分を揺さぶって起こす少年の声。レイクは目をゆっくりと開けた。 目の前には自分を心配そうに見ているたびの仲間たち。ユウキ、ミツル 、レイジの3人。 そうか。私は夢を見たのか。あの日のことを夢で見たのか。 「大丈夫?ずいぶんうなされていた・・・みたいだけど・・・・」 「あ・・・うん、大丈夫。元気いっぱい♪ちょっと悪い夢を見ていただけ」 レイクは自分を心配しているレイジににっこりと笑いながら 自分が大丈夫だということを証明してみせる。すると三人はほっとしたようだ。 「そうか。にしてもびっくりしたよ、お前がいきなり『いやああああああ!!!』なーんて叫ぶもんだからさ。お前の大嫌いなオバケさんの夢でも見たのかと思ったぜ」 「あ・・うん。そんなところ」 そんなところどころではない。そのまんまである。 「ま、どうでもいいけどな。飯食ったらさっさと行こうぜ。 もうポケモンゲッターの大会まで時間がないからさ。」 「・・・そうだね・・・・ていうか僕たち・・・間に合うのかな・・・? ・・・そもそもここどこだろうね・・・アハハ」 飯ごうで米を炊いているレイジが笑いながら言った。 ・・無論笑い事ではない。レイジたちが勝って気ままに行動したがために ここがどこかなのか見当もつかないのだ。 「まあ、いいじゃない♪適当に歩いていればどうにかなるって。」 「それもそうだね」 「んなわけあるか!バカ!」 ・・・でも結局いつもなんだかんだいって出口につくんだよなあ・・・これが。 「さあ!がんばろっと!・・なんかみんなの声を聞いたら 悪夢なんて忘れちゃった!!さあ!朝食をたべよう!そして今日も元気に迷おう!」 「おーー!」 「いや、おーじゃねえ!これ以上迷ってたまるかアホ!」 忘れません あの日のことは 目を覚ましたあたしにカスミさんが教えてくれた。 レイさんが「そんなに言うならいいだろう!この僕の姫になりなさい!」 っていってあの少女の霊を鎮めてくれたんだって。そしてレイさんに 抱きついた少女は涙を流し、消えたのだという。 どうしてそんなにあっさり消えてしまったのかはよく分からない。 でも、そのおかげあたしは今こうやって生きてて。こうやってみんなと 笑いあえていることは確か。 ただ、レイさんにお礼を言うのはひいたけど。だって、 ことの元凶はあの人なわけだし。 そんなレイさんはあたしのことを心配してくれていたって。あ たしが気絶している間ずっと「ごめんね」っていっていたって。 涙を流していたって。 カスミさんいってた。「あの人はね、いつもはあんなんだけど 本当はとってもやさしいひとなんだよ」って。 それは・・・分かる気がするな。だってたとえ変な代物でも妹 にお土産を買ってくれた人だし(まあ結果的にあたしが貰う 羽目になったのだけど)、両親の命日に帰ってくるんだもの。 あたしは、まだ人を好きになったことはない。 だからあの少女の気持ちも分からない。 結局このお話、何がいいたかったのかといえば、あたしがこの事件のせいで 幽霊嫌いになっちゃったっていうことと。 あと。 あたしのふるさとはとてもにぎやかな場所だよってことかな。 とりあえず今日のところはこれでおしまい・・・だね。                        終わり