四天王の砦  第1話 事件発生 ――ヤマブキシティ郊外―― グレネード団の事件が解決して2ヶ月ほど経った日のことだった。 ここに、今日もポケモンの特訓をしている少年が居た。 「ジュゴン、『輝く風』」 少年の名はクリア。 クリアの後ろから今日も一人の少女が声をかける。 「また、スケルさんのジュゴンと特訓してるんだ。」 「パープルか……ああ、そうさ、やっと、『輝く風』がコントロールできる様になってきたんだ。」 「何か、スケルさんとは永遠にライバルになりそう……」 クリアに向かって言うパープル。 「スケルさんは本当に強かったからな……」 「そうじゃなくて、私とスケルさんが……」 ボソッと呟くパープル。 「え?」 パープルの呟きがあまりにも小さかったので聞き返すクリア。 「何でも無い。……そんなことより、クリア。今日ちょっと暇?」 クリアの記憶の中には今と全く同じ光景が残されていた。 「え?暇だけど……」 「じゃあ、ヤマブキポケモンパークに行かない?」 やっぱり、とクリアは思う。 『ヤマブキポケモンパーク』とはヤマブキシティ郊外にあるテーマパークである。 実はクリアとパープルは、1ヶ月ほど前にポケモンパークで開かれた『ポケモンパーク・クエスト』というイベントに参加していたのだ。 推理小説家のアガサ・テイトの出すクイズに答え、アトラクションをクリアしていくというこのイベント。それなりに楽しめた。 「また『ポケモンパーク・クエスト』が開催されるのか?」 「だったら良いんだけどね……今日は仕事なの。」 急に真面目な顔つきになるパープル。 仕事なら暇かどうか関係ない気もするけど…… 「仕事?」 聞き返すクリア。 「まあ、詳しくはポケモンパークに行ってから話すから……」 そして、二人はポケモンパークに向かうのだった。 ――ポケモンパーク―― 「四天王の砦の誤作動?」 クリアは聞き返す。 「はい。先日、改装を終えて今日オープンしたばかりの『四天王の砦』でコンピューターが誤作動を起こしたのです。」 ポケモンパークの社員は困った顔つきで言った。 「新しい四天王の砦とは、コンピュータ内で門番一人と四天王、チャンピオンの合計6人と戦い、勝ちぬくと言うアトラクションです。 負けたら、『コンテニュー』か『砦から抜ける』か、『最初から』の選択が出るはずです。 しかし、何故か負けた人の選択肢の中に『砦から抜ける』が入っていないのです。 あ、ちなみに『コンテニュー』は1回までで、2度負けると選択肢が2つになるんですけどね。」 「つまり、6人目のチャンピオンに勝つまで抜けられないという事?」 パープルが声をあげる。抜け出せない子供達を心配している。 しかし、事態はもっと深刻だった。 「……私達もそう思っていました。 しかし、チャンピオンを倒したトレーナーが2人居るのですが、 その方達も『7人目のトレーナー』との戦闘が始まり、そして、負けて抜け出せなくなったのです。 その『7人目のトレーナー』を倒したところで抜け出せるかも不明です。」 「でも、それって、俺達の仕事なんですか?プログラムの誤作動なんて俺達には手が出ません。」 それは正論だった。クリア達はトレーナーであってプログラマではない。 ポケモンパーク社員もそれは分かっている。 「当方としては、シルフ本社員と預かりシステムや転送システムで有名なマサキさんの力でプログラムの異常を修正したいと思っています。」 「じゃあ、俺達のやる事は……」 「もしかしたら、最後のトレーナーを倒せば何か手がかりがつかめるかもしれません。 貴方方には……と言っても空席が1つしか有りませんが……7人目のトレーナーを倒していただきたいのです。」 「ちょっと待って、もしかしたら、私達も抜け出せなくなる危険性があるんですか?」 パープルは社員に問う。 社員は即答で「はい」と言った。 「もし、手がかりが掴めず、プログラム修正も出来ない時、このプログラムを強制中断させる事は出来ます。 しかし、強制中断したら、そのプログラムはもう使えません。 今まで、このアトラクションに掛かった費用は全て無駄になってしまいます。」 クリアはしばらく悩む、そして、 「分かりました、俺がやりましょう。」 快く、引き受けたのだった。 「では最後に説明いたします。四天王の砦は『仮想現実空間技術』と『人工頭脳技術』を使ったシステムです。」 「話が難しいんですけど(汗)」 汗をかくクリア。 「簡単に説明しますと『仮想現実空間技術』はコンピュータ内に空間のような物を生み出す技術。 『人工頭脳技術』はコンピュータが人間のような考えをするようにした技術です。 まあ、百聞は一見にしかず。理論はかなり難しそうですが、使うのは簡単です。実際、使ってみるのが良いでしょう。」 そう言って、社員はヘルメットや手足につけるプロテクタのようなものを渡す。 「それを着けながら聞いて下さい。」 クリアは言われた通り、装着する。 「アトラクションが始まるとまず、ポケモンの選択画面になります。 1匹ずつ選ぶのも良いですし、6匹のパーティ単位で選ぶ事も出来ます。 クリアさんくらいの実力者なら技までチェックするのが良いでしょう。」 つまり、ポケスタで言うなら技までチェックするのが自分のパーティで、1匹ずつ選ぶのがレンタル。 そして、パーティ単位で選ぶのはレンタルを登録しておいてそれを選ぶみたいな感じで(謎) 「まずは門番と戦う事になります。 門番は16人のジムリーダーのうち、1人がランダムで選ばれます。 門番に勝ちぬくと四天王戦です。では、どうぞ、お楽しみ下さい。」 クリアは『四天王の砦』の電源を入れた。 始めに、ポケモンの選択画面。特徴の無い部屋だ。 クリアは自分の相棒とスケルの相棒の合同パーティを登録する。 登録し終えると眩しい光が彼を包んだ。 彼はまだ知らなかった。この先、何が彼を待っているのかを……