四天王の砦  第4話 VS炎の貴公子 「初めまして」 少し長めの廊下を抜け、最初の部屋に入った途端、その声が聞こえた。 その部屋の壁ぎわには等間隔でたいまつが置かれている。 だが、クリアには全く熱く感じない。おそらく、四天王の砦では、熱までは感じることは無いのだろう。 その部屋の奥に青年は立っていた。 見慣れぬ顔。そして、さっきの声は聞き慣れない声。 暗い緋色の髪。そして、着ている服も緋色。 あるいは、その緋色は炎が映し出されただけなのだろうか? 以前、クリアが戦ったことのある四天王の中に彼は居なかった。 彼は不思議そうな顔をしていたクリアを察し、言った。 「僕はエイジ。四天王には、なったばかり。四天王になる前は炎の貴公子って呼ばれていた。 うん、きっと炎使いさ。さあ、準備は良いかい?」 もちろん、準備は出来ている。むしろ、急いでくれた方がありがたかった。 「はい。」 クリアは頷く。 しかし、自分で貴公子と言うのはどうだろう?とクリアは思った。 いや、呼ばれているだけで自分ではそう思っていないのか? いや、呼ばれているけど、自分でそう思っているから口に出せるのか? ……などと考えていたが、どうでも良い上、急いでいるので考えるのをやめた。 エイジは最初のポケモンを繰り出した。 「じゃあ、まずはブーバー。」 「ジュゴン、『波乗り』だ。」 「それをくらったら、2発は持たないだろうな……うん、きっと、持たない。ブーバー、火炎放射」 いきなり、相性で優位に立つクリア。未知の敵だから全力でぶつかるしかない。 ブーバーは特別素早いポケモンでもないが、それでも、十分ジュゴンよりは速かった。 強烈な火炎放射がジュゴンにぶつかる。 水と氷で防御的な相性は普通。 クリアはジュゴンの様子を見る。 ジュゴンはまだ余裕の表情。体力は優に半分は残っていそうだ。 対して、波乗りを受けた敵のブーバーはほぼ体力が残っていない状態。 『2発は持たない』と言ったエイジの言葉は真実味があった。 そして、次の指示に移る。 「ブーバー、火炎……放射。」 「『波乗り』でとどめだ。」 さっきと同じ、先に火炎放射を放つブーバー。 ジュゴンは避けられない。 クリアは例え火炎放射が当たっても耐えてくれると確信していた。 だが、次の瞬間、倒れたジュゴンの姿が有った。 「!?急所攻撃か……いや、そんな様子は無かった。」 ――ポケモンパーク―― ちょうど、クリアが四天王・エイジ戦を始めた頃、ポケモンパークには一人の青年が現れた。 「ふう、ここは相変わらず狭いわあ。わいの性にあわん。」 アカネと同じジョウト訛り。そう、彼はコガネ出身のプログラマ、マサキだった。 「シルフの社員さんも来てるみたいやし、チェック始めるで?」 あれ?シルフの本社員はいつの間にか来てたみたいです。(爆) と言う訳で、マサキ他数名はコンピュータに向かって何か作業をし始めました。 ――四天王の砦・第一の部屋―― 「ウインディ、火炎……放射。」 また、さっきと同じだった。ブラッキーは火炎放射を3発は耐えそうだった。 しかし、3発目の威力は1発目・2発目よりも高く、ブラッキーはダウンしてしまった。 2番目に出したサンダースが先行してブーバーを倒したが、サンダースは続くウインディの『火炎放射』2発で倒れてしまった。 これも、2回目の威力の方が大きいように感じられた。 結果、こちらが倒したのはブーバーのみ、倒れたポケモンはブラッキー・サンダース・ジュゴン。 「僕の勝ちの様だね……クリア君」 エイジがささやいた。 「大丈夫、君はまだコンテニューが使えるからね……再戦するかい?」 その勝負の後、クリアには『コンテニュー』・『最初から』の2つの選択肢が残った。 本来そこにあるべき『砦から抜ける』はやはり無かった。