四天王の砦  第6話 再戦 炎の貴公子・後編 ――ポケモンパーク―― 「あの……」 パープルが作業をしているマサキやシルフの社員に聞いた。 というより、実際は作業をしていないパークの社員に聞いたのだが、答えたのはマサキだった。 「コンピュータが誤作動を起こしたって言いますが、原因はウイルスみたいなものですか?」 「それは、無いやろな。ええか?ウイルスに感染するってことは、どこかから送りこまれたってことや。 シルフの本社のセキュリティーは完璧や、外部からウイルスは送りこめんやろな。」 「完璧と言うと?」 「それはですね。」 今度はシルフの社員が答えた。 「シルフ本社のメインコンピューターは全て3つで連動するように動いています。 3つのうち、1つにウィルスが送りこまれたとしても、すぐにチェックして消してしまいます。 そのチェックは1秒に256回……その間に3つのコンピュータにウィルスを送りこむのは不可能です。」 話が難しいが、なんとか理解したパープルは次の質問に移る。 「じゃあ、内部から書き換えたってことですね?」 「それも、どうかと思うで?」 パープルの意見を疑問視するマサキだった。 ――四天王の砦・第一の部屋―― 戦況は残り2対2、倒れたのはブーバーとブラッキーである。 ブーバーはブラッキーを倒したが、直後に毒の為にダウンしたのだ。 二人はほぼ同時にポケモンを出した。 「行け、ジュゴン」 「行け、ウインディ」 「ジュゴン、『波乗り』だ。」 既に威力が上がる炎の仕掛けは見抜いた。 だが、それで問題が解決する訳ではない。問題は高威力の炎だった。 しかし、相手の指示はクリアの予想と違った。 「ウインディ、『吠える』んだ。」 ウインディは吠える為に息を吸い込んでいる。 その隙に波乗りで攻撃。倒れはしないもののかなりのダメージを負わせることが出来た。 直後、ウインディが吠えた。 大音量(?)の吠えるに驚いて、ジュゴンは自らモンスターボールへ戻る。 代わりに出てきたのは炎タイプに不利なワタッコ。 「これで君はワタッコを使わざるを得なくなった訳だ。君はワタッコを出すつもりは無かっただろう?うん、きっと無かった。」 「そうですね。」 クリアはワタッコを戻して、ジュゴンを出したかったが、そんな隙を見せればジュゴンに大文字を浴びせられて、致命的なダメージとなるだろう。 考えた末、次の行動に移った。 「ワタッコ、『眠り粉』だ。」 眠らせてしまえば、相性は関係無い。既に波乗りをくらって体力が少ないウインディ相手なら何とかなるだろう。 空中にまかれる眠り粉。ウインディを睡魔が襲う。 クリアの思惑通りウインディは眠った。 「よし、ワタッコ、ギガドレインだ。」 「……まずいな……起きてくれ。」 何回かギガドレインを撃つワタッコ。エイジはウインディが起きる様に祈る。 だが、その祈りは通じず、ウインディは倒れた。 そして、エイジが最後のポケモンを出す。 「行け、リザードン」 「ワタッコ、『宿り木の種』」 素早い動きで、ワタッコは無数の種を放った。 相手の体力を奪う小さな種が、リザードンの体内に埋め込まれた。 「眠らせなかったのは意外だよ。リザードン、『大文字』」 エイジはクリアに見破られてからは一度も火炎放射を使っていない。 前言通り無駄だと気付いたからだ。 そして、今、指示した大文字は凄まじい火力だった。 その炎はワタッコを一撃で倒した。 クリアはジュゴンを繰り出しながら言った。 「俺が、眠り粉を使わなかったのは眠らせてもすぐに起きる危険性がある上、ワタッコのギガドレインではダメージをほとんど与えられないからです。 眠っている間にジュゴンに変えることも考えましたが、リザードンが起きないと言う保証は無い。」 「そうか、では、ジュゴンにかけたって訳だね。リザードン『大文字』」 「ジュゴン、『波乗り』」 大の字型の炎がジュゴンに迫る。 ジュゴンは必死にかわそうとするが、動きが遅いのかうまくかわせない。 しかし、ダメージを受けても懸命に波乗りをした。 それはリザードンにかなりのダメージを与えた。 だが、それでもリザードンを倒すには至らなかった。 エイジが得意げに言う。 「決まったね。ジュゴンではスピードが有るリザードンの炎を避けるのが難しい。そして、そのジュゴンは大文字を2回は耐えられない。リザードン『大文字』」 再度の大文字……今までジュゴンはこれを2回は耐えられなかった。 そして、今回……炎が消えると……エイジの予想と違い、ジュゴンは立っていた。 「……な!?」クリアはニッと笑うと最後の指示を出した。 「ジュゴン……『波乗り』」 ジュゴンは最後の力を振り絞って波に乗った。 そして、リザードンは避けられずにダウンしてしまった。 クリアは言った。 「その火力から見て、ジュゴンは2発受けたらダウンしたでしょう。しかし、相手の体力を奪う宿り木の種の効果で何とかなるはずと考えたんです。 それが、俺が宿り木の種を使った理由です。」 そう、ジュゴンは宿り木の種の効果で体力が回復していたのだ。 「策士、策に溺れるですね。あのまま、炎攻撃をされてたほうが厄介でした。」 どこかで聞いたセリフを放つクリア。エイジは素直に負けを認めた。 「僕の負けの様だねクリア君……先に進むと良い。きっと、その扉だ。」 クリアは既に次の部屋にいる相手のことが気になっていた。 ポケモンを回復させるとすぐに次の部屋へと向かった。 そして、エイジも…… 「あの少年の洞察力。ツツジとどっちが上かな?見てみたい気もするけどここは離れられないしな。」