四天王の砦  第8話 VS虫達の司者・後編 ――四天王の砦・第二の部屋―― 炎を受けたカイロスを見てツツジは言った。 「火力としてはエイジ君の方が上みたいね。まあ、そう思ったから剣の舞を使ったんだけどね。」 確かに、単純な火力ではエイジの方が上だろう。 それはクリアの目から見ても明らかである。 だが、それでもあのカイロスは体力が半分くらい減っている様に見える。 「でも、見たところ体力は半分残って無い様ですけど……」 「そうね。でも、カイロスにも、一応、持ち物を持たせているの。それは……」 ツツジは指を指す。その先ではカイロスの体力がどんどん回復していた。 「黄金の実。結構、体力が回復して次の火炎放射も耐えそうじゃない?」 ツツジは不敵に笑った。 クリアが見たところ、確かに次の攻撃を耐えそうなくらいに回復している。 「それでも、2回攻撃をした方が効果的だと思いますが?キュウコン『火炎放射』」 キュウコンの火炎放射。 その高威力の炎は、カイロスの全身に渡った。 カイロスは黄金の実の効果か何とか耐えている様子。 しかし、ツツジはクリアの意見を否定した。 「残念ね。この技は……そう何度も撃てる技じゃないの……カイロス、『破壊光線』」 強烈な威力の光線。 剣の舞で自らの士気を高めた直後の攻撃だけあり、なんと、キュウコンは一撃で倒れてしまった。 だが、カイロスには直後に強い反動が来る。 そのため、確かに何発も撃てる訳ではない。 キュウコン相手なら1回しか撃てないだろう。 そして、さっきの『剣の舞』はその『1回』を有効にする為のものだったのだ。 クリアは反動の隙を見逃さず、ハガネールを繰り出す。 そして、ハガネールが『地震』でカイロスを仕留めた。 カイロスを倒した後、クリアが言った。 「分析家の割には力押しなんですね。」 それは、彼女が『切り裂く』や『破壊光線』を使っている所からも分かった。 「ええ、それにも一応理由があるの。分析力はキョウさんみたいに相手を惑わすトレーナーに有効。相手の惑わしを見抜く事ができるからね。 まあ、キョウさんクラスになるとそう簡単には行かないんだけど……そして、パワーはシバさんのようにパワーで攻めてくる相手への対抗手段なの。 さて、残りはヘラクロス。頑張って」 ツツジは最後のポケモンを繰り出した。 「ハガネール『地震』」 「ヘラクロス『地震』」 互いの地震が交錯する。どの震動がどっちの攻撃か分からないくらいだった。 攻撃が止んだ後、お互いのポケモンを見てツツジが言った。 「ハガネールの方が体力を削られたみたいね。 まあ、防御が強く、自分のタイプと技のタイプが同じだけど、地震に2倍のダメージをくらうハガネールよりも、 攻撃力があって、素早さが速くて地震に抵抗力を持つヘラクロスの方が有利。……このままやれば押し勝てるわね。」 ツツジの言っている事は正論。クリアは別の指示に出る。 「ハガネール『大爆発』」 しかし、ツツジはそれさえも読んでいた様で…… 「それで正解……この機会を逃したら、『大爆発』を放てる隙さえないはず……でもね、ヘラクロス『堪える』。」 大きな衝撃音。 立っているのは体力が残りわずかのヘラクロスだった。 クリアはハガネールをモンスターボールに戻し、ワタッコを繰り出しながら言った。 「確かに、ハガネールの大爆発は防げましたが、俺にはまだワタッコが残っています。」 「そうね、ワタッコより遅くて、体力の残っていないヘラクロスが不利。それは認めるわ。でも、運次第で勝つことも出来る。ヘラクロス『起死回生』」 「ワタッコ『アンコール』」 クリアのその指示を聞き、ツツジの顔色が青ざめた。 ワタッコは相手が起死回生を放つ前にアンコールを使った。 ヘラクロスはアンコールを受け、体が勝手に堪える状態になる。 「あの時点で貴方が勝てるのは先制の爪か気合いのハチマキか光の粉の効果が現れた時です。 堪えると起死回生の連続攻撃と相性の悪そうな光の粉は選択肢から外しました。 先制の爪の効果が現れたら、俺が何を指示しようが負けていました。 俺が『ギガドレイン』を指示して気合いのハチマキの効果が出たら俺の負け。 しかし、先制の爪が発動する以外の時は、アンコールで強制的に『堪える』状態にさせればヘラクロスは攻撃できない。 そして、次の俺の指示は『堪える』事が出来ない技……ワタッコ『宿り木の種』。」 ワタッコは小さな種をヘラクロスに放った。 次の瞬間、ヘラクロスは体力を奪われダウンした。 「分析力では貴方の方が上回っていたみたいね。次の部屋へ進むと良いわ。」 クリアはワタッコをボールに戻し、ポケモンを回復させると次の部屋へと向かった。 「次からの相手は、貴方も戦ったことのある四天王……頑張りなさい。」 そして、ツツジはいつも通り次の挑戦者を待った。