四天王の砦  第11話 VS惑わしの忍・前編 ――ポケモンパーク―― 「なあ、気になったんやけど、この四天王やジムリーダーのデータはどこで作っとるん?シルフ本社やないみたいやけど……」 「セキエイのコンピュータです。」 マサキの問いにシルフの社員が答える。 「新たなジムリーダーが誕生したり、セキエイで四天王が入れ替わったりしたら、すぐにセキエイで更新されます。 ジムリーダーや四天王の情報は、全てセキエイに有りますからね。」 その回答を聞き、マサキは「うーん」と唸った後、言った。 「つまり、このプログラムはシルフ本社だけでなく、セキエイでも更新できるんやな?」 「ええ」 「せやったら、セキエイのコンピュータに進入したらええんや無いか?あそこはシルフの本社よりセキュリティーあまいやろ?」 「無理ですよ。どっちにしても、ウイルスは遮断されますし、書きかえるのも相当時間が掛かります。 それに、書き換えた日時はシルフのコンピュータとつながっていて記録されます。」 相変わらず、進展といった進展はほとんど無い外部だった。 ――四天王の砦・第四の部屋―― 数十秒前、クリアはこの部屋に辿り着いていた。 その部屋は少し、第二の部屋に似ていた。 ただ、第二の部屋は草しか生えていなかったが、第四の部屋は両側に木々が広がっていた。 そして、その部屋を少し見渡しても誰も居ない。 クリアはこの部屋に見覚えがあった。 「貴方ですね。キョウさん。」 クリアは姿を出さない相手に口を開く。 すると、今クリアが入ってきた方から声が聞こえた。 「ご名答。」 薄黒い煙と共に彼が背後から現れた。 「ファ、ファ、ファ。久々だな、クリア。あれから随分と強くなった様だな。」 「まあ……そうでしょうかね。」 曖昧に返事をするクリア。 その曖昧さには構わずに話を続けるキョウ。 「以前、お主がポケモンリーグに挑戦した時、拙者は、お主に負けた。 トレーナーの相性と言うか……拙者の惑わしの技が、お主には通用しなかった。 しかし、拙者もあれから強くなった。この場は拙者が挑戦者のような気持ちで戦わせてもらう。」 「分かりました。でも、それは俺も同じです。」 そう、今、目の前に居るキョウが以前勝ったキョウだとは思ってはいけない。 それは、イツキが前よりも数段強くなっている事を見ても明らかだった。 「行け……」 「行け、ドククラゲ」 「キュウコン」 両者の声はほぼ同時に響いた。 クリアは、キョウが前回と同様、フォレトスを先鋒に出して来ると予想した。 それは、フォレトスの撒きびしは試合中ずっと効果が残る技で、最初に使うのが効果的だからだ。 だから、キュウコンを出した。だが、相手はドククラゲ。 「(フォレトスは3匹の中に入れないつもりか?)」 ここでも、本来なら代えるべき所。 しかし、キョウが良く使う技で厄介な『影分身』と『どくどく』 どちらにしてもあまり長引かせる訳にはいかない。 「ドククラゲ、『どくどく』だ。」 「キュウコン、『穴を掘る』んだ。」 キュウコンが穴に入る前に毒に掛けようとするドククラゲ。 対して、ドククラゲの毒が迫る前に地中に潜ろうとするキュウコン。 一瞬早く、キュウコンが穴を掘り終えたようだ。 「クッ、かわしたか……ならば、ドククラゲ、『バリアー』だ。」 クリアは驚いた。 以前のキョウは隙があれば影分身を使ってくるタイプ。 確実にダメージを軽減するバリアーを使うようなタイプではなかった。 ドククラゲが強固な壁を張った直後、地面が盛り上がり、キュウコンの攻撃が炸裂した。 だが、案の定、ダメージは少ない。 クリアは口を開いた。 「意外ですよ……どちらかというと影分身だと思っていました。」 「お主のような観察力の優れたトレーナーには影分身を使ってもすぐに攻略法を見破られてしまう。 だが、『バリアー』は確実にダメージを減らせて、しかも、影分身より破られにくい。」 クリアは軽くうなずくと新しい指示を出した。 「そうですね。とりあえず、今のままで力押しでは不利みたいです。キュウコン『怪しい光』。」 キュウコンが発する鈍い光……それは、ドククラゲの意志を惑わす。キョウの『波乗り』の指示を聞かずに、自分を攻撃している。 「(よし、ここで火炎放射を当てれば倒せる。)そのまま、『火炎放射』だ」 「ドククラゲ『波乗り』だ。」 炎を発射させる体勢になるキュウコン。 だが、それよりも、ドククラゲの行動の方が早かった。 混乱を振り払うかのように体を回転させ、正気に戻ると、そのまま波乗りを行うドククラゲ。 その波乗りでキュウコンはダウンしてしまった。 「拙者も驚いたぞ……お主が相手を惑わす技を使うようになったとは……以前とは違うな。 だが……惑わしの対決なら拙者に分がある。さあ、次のポケモンは誰だ?」 クリアは腰につけたボールからポケモンを繰り出す。 「行け、サンダース」 残りポケモン2対3、状況は不利である。