四天王の砦  第12話 VS惑わしの忍・後編 ――四天王の砦・第四の部屋―― 「ドククラゲ『どくどく』だ。」 「サンダース『10万ボルト』」 今、両者の放った技が交錯した。 相性で不利なドククラゲが放った毒はサンダースに当たった。 そして、サンダースが放った高電圧の電気もドククラゲの体力を奪った。 その攻撃で、ドククラゲはダウンした。 これで、サンダースが毒を受けていること以外は五分である。 そして、キョウは忍装束の腰に付けたモンスターボールから次のポケモンを繰り出した。 「次は、『フォレトス』だ。」 「え!?」 クリアは驚いた。 それは、フォレトスは先鋒で出すのが、最も良い作戦だからだ。 その驚きを察知したのか、口を開くキョウ。 「お主は、拙者が最初にフォレトスを使ってくると考えた。 それは、以前戦った時のお主の分析によるもの……だから、拙者はその裏をかいた。 フォレトス『まきびし』だ。」 「サンダース『10万ボルト』だ。」 慌てて、指示をするクリア。 素早さが自慢のサンダースの放つ10万ボルトがフォレトスの体力を奪った。 だが、まだフォレトスの体力は有り余っていた。 サンダースの足元にまきびしが散らばる。 不用意に動かず、電撃で攻撃すればダメージは無い。 それよりも、毒が厄介である。早く決着を付けない限りダメージは増え続ける。 「サンダース『10万ボルト』だ。」 「フォレトス『守る』。」 持久戦を狙ってきている。 クリアはそう確信した。 フォレトスの技で警戒したいのは『大爆発』 しかし、それをサンダース相手に使うつもりならば『守る』前に使っても良かったところ。 そうしなかったのはサンダース相手には粘って毒でダウンさせる。 そして、自分が次のポケモンを出した時にキョウが大爆発で試合を決める。 つまり、今自分がやるべき事はサンダースが毒でダウンする前にフォレトスをダウンさせる事。 「サンダース『10万ボルト』」 「フォレトス『大爆発』」 それはまたもクリアの予想外の指示だった。 辺りが煙に包まれた。 「さっき言ったように、より確実な技を使うというのがお主やツツジに対する一つの結論。」 煙が晴れると同時にキョウが喋りだした。 その煙の中心には倒れたサンダースとフォレトスが居た。 「そして、もう一つの結論。お主やツツジのような分析家は常に相手の合理性を読んでいる。 つまり、相手が強くなればなるほど相手の行動には矛盾が無いものと考えている。 だから、わざと矛盾するように行動すれば分析の壁は崩れる。」 「それが、貴方の新しい惑わしの術なんですね?」 「そうとも言えるな。 これで、残るは1対1……だが、お主の足元には撒きびしが散らばっている。さあ、最後の勝負だ。行け、クロバット」 「行け、ブラッキー」 またも同時に声が響いた。 ブラッキーは出てくると同時にまきびしでダメージを受けた。 クリアの読みは外れていた クリアの手持ちには毒に強いハガネールが居る。キョウもそれを知っている。 そして、キョウのベトベトンは炎技を使える。 だから、ベトベトンを出して来ると思っていた。 クリアは思った。 これも新しい『惑わし』なのだろうか? 「(……だったら)キョウさん。俺は、貴方の新しい惑わしの技を破ります。」 「ファ、ファ、ファ。良いや心意気だ。では行くぞ。クロバット『翼で撃て』。」 「ブラッキー『騙し討ち』。」 この時点で、このブラッキーが覚えていて相手にダメージを与えられるのは『騙し討ち』『どくどく』のみ。 本当はもう一つ覚えているはずなのだが、『自称』炎の貴公子と戦う為に、最初からやり直した時にその技は『見切り』に変えてしまった。 そして、クロバットにはどくどくが効かない。 つまり、攻撃手段は『騙し討ち』のみである。 「なるほど、影分身は効かぬか……やはりお主は侮れないな。」 「やはり、貴方は影分身を使うタイプですからね。外せません。」 その後、お互いに直接攻撃主体の攻防が続いた。 そして、数分後…… 双方とももう体力が少ない。互いにもう余力はないだろう。 「クロバット、翼で打て。」 「ブラッキー、『騙し討ち』だ。」 素早い動きからの翼の攻撃はブラッキーに確実にダメージを与えていた。 それでも、ブラッキーはその一撃を耐えた。その直後、ブラッキーの姿が見えなくなる。 そして、次の瞬間、クロバットの背後に現れ強力な一撃を与えたのだった。 その攻撃で、クロバットは倒れた。 「ファ、ファ、ファ。見事だクリア。先に進むが良い。チャンピオンが待っているぞ。」 キョウはそう言ってクロバットを手元に戻した。 クリアはマシンでポケモンを回復させた。 回復が終わって後ろを見ると既にキョウは居ない……というよりも消えていた。 クリアは誰も居ないその空間に一礼し次の部屋へ向かった。 次の相手はカリン。 クリアがセキエイで一度も勝てなかったトレーナーである。