四天王の砦  第14話 VS悪使いの女帝・後編 「行け、ハガネール」 クリアが再び繰り出したのは、鋼鉄の体をもつハガネール。 そして、すぐに指示を出す。 「ハガネール。地震だ。」 だが、その攻撃に対し、カリンは冷静に指示を出した。 「ゲンガー、道連れ」 クリアの脳裏に彼女と戦ったときの記憶が浮かんだ。 あの時は6対6のフルバトルだった。 クリアはブラッキーの威張るに苦戦しながらも、残り3対3と試合を互角に進めていた。 そんな時、カリンが出したポケモンがゲンガーだった。 彼女はゲンガーに道連れを指示。 クリアは道連れにされることを恐れてハガネールの地震の指示を取りやめた。 だが、その間に呪いの効果でハガネール、次に出したワタッコまで倒れてしまった。 これにより、クリアは圧倒的不利となってしまった。 「あの時、俺は間違えていました。威張るを受けて混乱で戦えない状態と道連れを恐れて戦えない状態。 似ている状況です。そして、あの時、俺は威張るの時の間違いを繰り返してしまった。 今度は繰り返しません。」 今回は、クリアは攻撃を中止させなかった。 ハガネールは地震を放つ。 ゲンガーはその場に立っていられずダウンする。 だが、それと同時に何かに引き込まれるかのように、ハガネールも倒れてしまう。 カリンが口を開く。 「ポケモンの中にもいろいろな性格のポケモンが居る。 貴方の連れているポケモンは戦いたいという意志を持ったポケモン。 その意志が見た目にも感じられる。 そんな彼らに対する『優しさ』は彼らが十分に戦える環境を作ってあげること。」 「そうですね。俺はそれが分かっていなかった。」 「今、それがわかっているのなら、ここで私から得るものは無いわ。 私を倒して、私を超えてみなさい。」 チャンピオン・カリンが言うとそんな台詞にも風格が感じられた。 クリアは軽く頷いた。 お互いが3匹目のポケモンが入ったモンスターボールに手をかけた。 「行け、サンダース。」 クリアはサンダースを繰り出した。対するカリンは…… 「頑張って、ヘルガー。」 セキエイではその姿を見ることができなかったカリン最強の相棒。 クリアは深く呼吸をして心を落ち着かせた。 そして、指示に移る。 「ヘルガー、『日本晴れ』」 「サンダース、『電磁波』」 先に指示を受けたヘルガーが動作に移ろうとする。 だが、それよりも早くサンダースが電磁波を仕掛けた。 体の自由が奪われる麻痺状態。 しかし、ヘルガーは屈せずに『日本晴れ』を使ってきた。 暗かった部屋はこの瞬間だけ光に満ち溢れることになった。 「サンダース『10万ボルト』」 「ヘルガー『大文字』」 もう一度指示を出す二人。 さっきとは違い、二人とも相手にダメージを与えるような技である。 先に攻撃したのは例によって素早いサンダース。 高電圧の電流をヘルガーに向かって放った。 だが、流石カリンのポケモンと言った所であろうか。かなりの体力が残っているようである。 10万ボルトを受けた体勢からそのまま大文字を放とうとするヘルガー。だが、思うように体が動いていない。 どうやら、麻痺により体が痺れた状態のようだ。 そして、その隙にもう一度攻撃を仕掛けるクリア。 「よし、10万ボルト」 「ヘルガー、頑張って」 クリアが指示をしたのに対し、カリンはヘルガーに声援を送るだけ。 それはつまり前の指示を続けているということ。 再度の高電圧電流がヘルガーを襲う。 しかし、それでもヘルガーは倒れない。 そして、その直後。 ヘルガーが大の字型の炎を放った。 辺りが炎によってもたらされた光によって包まれた。 次の瞬間クリアはサンダースに近づき様子を見る。 「(まだ、戦えそうだ……でも次、大文字を受けたらダウンだ。)」 クリアはサンダースの状態を確認し終えるとカリンを見据えた。 「相当、鍛えられていますね。あと一撃、当たったらダウンです。……サンダース、10万ボルト。」 「ヘルガー、もう一度、大文字」 お互いの体力の残りは少ない。 クリアが見たところ、ヘルガーはサンダースの攻撃を微妙に耐えるか耐えないか。 サンダースは次の攻撃でダウン。 つまり、次の攻撃でヘルガーをダウンさせるか、ヘルガーが麻痺すれば勝ち抜ける。 だが、他力本願ではいけない。 「サンダース。全力で行くんだ。」 サンダースの三度目の10万ボルト。 必死にこらえるヘルガー…… 次の瞬間。倒れていたのは…… 「ヘルガー!」 カリンが倒れたヘルガーの元に駆け寄る。 そして、彼女はヘルガーをモンスターボールに戻した。 彼女はクリアを見つめる。……そして…… 「貴方の勝ちね」 カリンの敗北宣言が部屋に響いた。