四天王の砦  第15話 達成後の未達成 「貴方の勝ちね」 カリンの敗北宣言が部屋に響いた。 これで、本来なら全てのトレーナーを倒した事になる。 本来は、ここでエンディング、そして、ポケモンパークに戻るはずである。 しかし、何故かここで7人目のトレーナーとのバトルが始まるという。 「ついて来なさい……」 カリンはクリアを手招きしながら言う。 これは『エンディング』なのだろうか? カリンは奥の扉の前に行くと、その扉を開け、クリアを招き入れた。 これは、セキエイの殿堂入りと同じ物だろうか? クリアは少し期待する。 それが目標ではないと言っても嬉しくない訳ではない。 しかし、カリンの口から出た言葉は全く正反対のものだった。 「ここは、セキエイじゃないから殿堂入りは無いの」 そこは、細い通路だった。 クリアは殿堂入りの部屋を見たことは無いが、 少なくても、目の前に広がる通路のような空間とは違うだろう。 そして、更に意外な言葉が…… 「この道をまっすぐ進めば、この砦に来た時のような大きな門がこの先に有るはずよ。 そこを抜ければ、元の世界。」 「え?普通、エンディングとかがあるのでは……」 「強いて言うならこれがそうじゃない?」 唖然とするクリアだった。 クリアは少し、早足で歩く。 その内にエンディングが無い事にも納得してきた。 これは『ポケモンパーク』のアトラクション。 アトラクションのメインは終了時ではなくその最中。 強いて言うなら、カリンと言うトレーナーと戦うこと自体がエンディングなのだ。 これも、そう、仕事で急いでいたとは言え、もし、実際のバトルだったら楽しかっただろう。 いや、今の戦いも十分楽しかった。 しかし、新たな疑問。 7人目のトレーナーの気配は全く無い。 ここを抜けたらいつ登場するチャンスがあるのだろう? クリアは順路を進む。砦からはすぐに抜けた。 そのうち、門が見えてくる。 これは現実への門だろうか? 扉に近づく。 扉に手をかける。 開かない。 しばし呆然と立ちつづけるクリア。 何をして良いのか分からなかった。……その時だった。 背後から誰かの気配がした。 クリアが気配に感じると同時くらいにその人物は口を開いた。 「また、会いましたね。」 背筋が冷たくなる。 その一瞬が数秒にも数十秒にも感じられた。 クリアはゆっくりと……ゆっくりと振り向く。 その人物の姿を見る。 その人物の姿が視線に映る。 肩に掛かりそうで掛からない髪、服装はシンプルな薄い水色。 クリアはその少女に見覚えがあった。 声を発しようとするクリア。 「貴方は……」 だが、その先がなかなか声にならなかった。 「クリア……久しぶりです。2ヶ月ぶり……ですか?」 彼女はそう言うと微笑んだ。 そう、あの時と同じように……天使のような微笑み。 やっとの思いでクリアは呟く。 「スケルさん……」