四天王の砦  第17話 解決後の再挑戦 一瞬の淡い光。 その光が眩しくて、クリアは目を閉じた。 意識が瞬間的に遠くへ飛んでいくような感覚。 不思議な、その感覚はまさに瞬間的に終わる。 そして、次に目を開けると、彼の前にはポケモンパークの部屋が広がっていた。 その部屋はひどく機械的ではあるが、本当に自分が現実に戻ってきたのか疑問に思った。 それほどまでに『砦』の中は現実とそっくりだった。 だが、隣でクリアが帰ってきたのを安心しているパープルの顔が目に入ると実感が沸いた。 「ただいま」 「おかえり」 微笑んで言うクリア。答えるパープルもさらに笑顔を浮かべる。 クリアは自分が『砦』に向かった後の事を聞いてみる。 「何か分かった?」 「ええ……これは私の勘なんだけど」 そう前置きをして自分の推論を話すパープル。 「この事件にはグレネード団が関わっているでしょ?」 「ああ、良く分かったね。」 「いろいろな可能性を考えてそれしかないと思ったの…… でも、私が考えられたのはここまで……七人目のトレーナーに勝ったクリアなら原因が分かるんじゃない?」 「まあ、正確には勝った訳じゃないんだけど……俺達のやるべき事をやらないとな」 パープルはクリアの言葉の前半部分に疑問を持ったが、取りあえず、クリアの話を聞くことにした。 「ということは、シロガネって人に連絡を取れば良いのですね?」 そう言って電話の所に向かおうとするシルフの社員。だが、クリアはそれを制止する。 「いや、逃げ出す可能性も有ります。俺達で行こう。」 パープルと共にその場を後にするクリア。 彼らはシロガネが逃げ出したりしないように慎重に行動することを決めた。 だが、十数分後、シロガネは意外にも素直について来た。 二人の心配は水の泡となったのである(爆 「何という事を、クロガネの奴……」 シロガネは言った。 「何の為にこんな事を……スケルさんの意思に反してまで……」 「あの原因は分かりますか?」 困惑の表情で独り言を言っているシロガネに問うシルフの社員。 シロガネは慌てて説明し始める。 「あ、すみません。ええと、『砦』のトレーナーは門番か四天王に分類されていますね。」 ちなみに、チャンピオンは四天王に分類されているらしい。 「スケルさんは『門番』に分類されています。」 「せやから、いくら『四天王』の方を検索しても見つからへんかったんか。」 納得するマサキ。 彼らは、『七人目』はチャンピオンの後に戦うトレーナーだから当然『四天王』に分類されるものだと思っていた。 「しかし、何故、門番が『七人目』なんですか?」 シルフの社員が思った疑問を口にした。 「それは、僕達の計画した設定ではないんです。あくまで僕達は17人目の門番としてスケルさんを登録した。 しかし、クロガネは多分『門番』という性質に『帰りの』とか『現実への』みたいな性質を追加したのでしょう。」 そう言いながらシロガネは『gatekeeper』。つまり、門番の項目を調べ始めた。 目に映るのは『akane』や『hayato』『tukushi』といったジムリーダーの名前。 そして、その中に『sukeru』というトレーナーが居た。 「ほら。sukeruというトレーナーが居るでしょう?このsukeruは……確かにgatekeeperになっていますけど……」 シロガネはsukeruのデータを調べ始めた。 「良く見ると『last gatekeeper』になっていますね。……最後の門番ですか……」 ふうっと溜め息をつくシロガネ。きっと、クロガネに出し抜かれて「やられた」という気分なのだろう。 「この『last』を取り除けば元通りになります。」 「でも、トレーナーの項目変更にはパスワードが要ります。」 シルフの社員がシロガネに言う。 「それも、分かっています。スケルさんのパスワードは『clear』」 パープルがその単語を聞いてハッとする。 「clear……クリア、透明、透ける……」 いろいろな単語を羅列するパープル、そしてクリアが一言。 「無色……」 二人がぼうっとしてる間にシロガネは作業を終えた。 「これで、スケルさんは普通の門番になりました。さて、次は最後の門番に勝たないと帰れないという設定を外しましょう。」 そして、さらに修復を続け、数分後に完全に作業を終えた。 「これで、閉じ込められていた人達も帰ってくるでしょう。」 「あの……」 ふと、シルフの社員が口にする。 「いきなり最後の門番の設定を外せば良かったのでは?」 「それだと、スケルさんまで消えてしまいます。」 その言葉にシロガネは反論する。 「いえ、我が社の計画には無いことですので」 「そうですか……まあ、それは貴方達に任せます。」 確かに、シロガネ達は違法にこのプログラムを改造したのだから文句は言えない。 「すみませ……」 そんなシロガネと社員に対し、クリアが何かを言おうとする。 だが、それよりも早く口を開いたのはパープルだった。 「スケルさんがどうなるか……世論に委ねてみるのはどうでしょう?」 「え?」 驚くシルフの社員。パープルは続ける。 「結構、スケルさんと戦ってみたいトレーナーは居るはずです。」 それはスケルが『砦』の中で言っていた理由そのものだった。 「しかし、それはトレーナーの間だけでしょう?」 疑問視するシルフ社員。だが、マサキは反論する。 「そんなことないで……普通の住民とかにも結構人気有るんや。」 「まあ、そう言う事なら良いでしょう。」 周りから説得され、承諾するシルフ社員。 「これでいいんでしょ?」 パープルはそう言って片目を瞑った。 クリアはゆっくり頷く。 しかし、ポケモンパーク社員は本当に無口のようだ。(爆 「あ、シロガネさん。もう一つ協力良いですか?」 クリアは、今思い出したかのようにシロガネに言う。 「クロガネを探すのを手伝ってくれませんか?クロガネの顔を知っているのは貴方だけだと思うので」 「良いですよ。僕も、スケルさんの意思を台無しにしたクロガネは許せないですし。」 了承するシロガネ。彼は、その後、クロガネの似顔絵を書く為に警察へ向かったという。 午後7時。『四天王の砦』はこの時間に閉まる。 今日は初日という事で、多くのプレーヤーが遊びに来ていたが、その後は問題も無かった。 取りあえず、最初にトラブルに巻き込まれたプレーヤーには無料という事で何とかなった。 今は、クリア、パープル、シルフ社員、ポケモンパーク社員だけがその場に居た。 「さて、これで俺達のやるべき事は終わったけど……」 一息ついて、辺りを見回した後、クリアはシルフの社員に聞く。 「すみません。これ……門番を指定する事は出来ますか?」 「出来ますよ。門番の名前を知っていれば出来ますから、クリアさんなら全ての門番を指定出来ます。」 「それと」 パープルの方をちらっと見るクリア。そして…… 「二人で入ることは出来ますか?」 「はあ、それなら、あそこの2台が接続された機械を使えば出来ます。」 何をやる気だろう?とシルフの社員は思った。 パープルも不思議そうに聞く。 「ねえ、どうするの?」 「パープルもスケルさんに会いたくないか?」 一瞬、パープルの思考が止まった。 彼女はスケルに会ったことが無い。 会いたいか、会いたくないか考える。結論はすぐに出ていた。 「もう一度砦に入ってスケルさんに会う。……今度は二人でね。」 パープルは頷いた。 ポケモンの登録画面。クリアは手馴れた手つきで操作する。 パープルは戦うつもりは無かったのだが、入力しないと入れないので、時間節約の為、レンタルポケモンを使用した。 一瞬の淡い光。クリアは3度目。パープルは初めてである。 二人はもう知っていた。この先、誰が彼らを待っているのかを……