奪われた日常  第4章 真っ白の声明 オーキド博士はその日も研究に没頭していた。 マサラタウンはこの研究所のほかに家が7軒程の小さな町だった。 その朝は天気が良く、しかも涼しかった。 青い空に、真っ白の雲がとても良く映えていた。 窓の結露は外の世界を真っ白に変えていた。 だが、そんな日に彼らはやって来た。 「すみません。オーキド博士はいらっしゃいますか?」 玄関の呼び鈴と共に大きな声が聞こえてきた。 「はいはい、今、行く」 オーキド博士は研究衣に身を包んでいたが、今やそれが彼のトレードマーク。 彼はそのまま訪問者の元へ向かった。 「オーキド博士でいらっしゃいますか?」 「はい、そうじゃが……どちら様ですか?」 「私達、グレネード団と申します。……我々は今からこの研究所を乗っ取る。」 訪問者は途中から明らかに口調を変えた。オーキドは一瞬言葉に詰まった。 「おとなしくしていれば、危害は及ぼさない。」 そう言うと、なかば強引にオーキド研究所の中に入っていった。 「お前ら、何が目的じゃ。」 「この研究所には、ラジオの通信設備があったはずだな。」 「ここにはそんなものは無いわい。」 実際はオーキド研究所には小型の通信設備があった。 しかし、それを彼らに言ったら何をするか分からない。 「フン、隠し通す気か。まあ、脅しても言いそうに無いから勝手に探させてもらうぞ。」 「ちょっと、待つんじゃ。」 「邪魔をするならこのストライクの鎌のえじきとなってもらうぞ。」 オーキドは顔をこわばらせ、動くのを止めた。彼らが本気だと感じたからだ。 「さて、3階が怪しいかな。」 図星だった。だが、決して表情には出さないようにする。 できるだけ時間稼ぎをしたかった。 誰かがこの異変に気付いて助けてくれるかもしれない。 グレネード団は2階から3階へ向かい目的の設備を見つけた。 大切な設備を壊さない様に慎重に扱った。 最初は扱い方が分からなかったが、オーキド博士には聞かなかった。 嘘を言われたり、わざと壊される危険性があったからだ。 使い方は少し機械に触れているうちに自然に分かった。 そして、それを使い彼らはカントー全域に声明を出した。 「我々はグレネード団。マサラタウンとトキワシティ、ニビシティを占拠した。我々は数日中にヤマブキシティを占拠する。」