俺、この前『進化』したんだ!  つい最近、ブルーに教えてもらったんだけど、俺は進化をして強くなるらしい。  身体も一回り大きくなって、力も強くなった。  この姿を、リザードって呼ぶらしい。ヒトカゲって名前から変わって、かっこよくな ったと思う。  かっこよくなったといえば、ブルーもだ。  初めて会ったときより背も高くなって、あの輝きはより一層研ぎ澄まされている。  でも服は、あの時と同じ色だ。  俺がこの色を着てって言ったわけじゃないけど、ブルーはその服を着ていてくれる。 「どうした? リザード」  俺がいつもよりうれしそうにしていたからか、ブルーは聞いた。  俺はずっと前、ブルーが俺を見て笑ったときみたいにうつむいた。  恥ずかしいけど、どこからか笑いがこみ上げてきて、顔が緩んでしまう。  その顔がもしかしたらとっても変な顔なんじゃないか、って思うと、うつむいてしま う。  あのときのブルーも、同じ気持ちだったんじゃないだろうか。 「……。おまえといると、俺も変われるんじゃないかって思うよ」  ブルーはよく、俺にこう言う。  ブルーだってずっと変わったのに、こんなことを言うのが不思議だった。  しかもきまって、諦めたような顔をするんだ。  なにを諦めたのかは知らない。  諦める理由も知らない。  ブルーは自分のこと俺に教えてくれないから。  俺はブルーは何でもできるって信じているから、そんな表情することないのにって、 この顔を見るたび思うんだ。 「さ、て、行くか。この町にはもう用はない」  前を歩くブルーの背中は大きくて、俺はちょっぴりうらやましい。  俺はブルーと並んで歩くけど、歩き始めるのはいつもブルーが先だ。  だから、歩き出すたびブルーの背中を見る。  俺の届くはずがない、孤高の高みに見えてならない。  ……でも、俺が少し手を伸ばせば、触れることはできる。  それをしないのは、ブルーが俺に自分のことを話してくれないからだ……と思う。  あの高みに触れるのは、ブルーが俺のことを認めてから。  俺は地面を蹴って、ブルーに並んで歩いた。 「リザード、次はどこに行こうな?」  隣に来た俺を見て、ブルーは微笑む。  ブルーは俺に、こうやって笑いかけることが多くなった。  照れ隠しでもなんでもない、特別に意味のない笑顔だ。  でもこの笑顔に、俺はなぜかほっとする。今日もブルーは元気なのだと。  どこでもいい、ブルーと共になら。 「どこでもいいって顔、してるな」  ブルーは俺に笑いかけた。  そう、どこでもいい。  俺はブルーについていくと決めたんだから。