> 「きゅう〜……」 > >  生まれたばかりのポケモンは、卵の回転時にあった衝撃と着地時の衝撃を、 > 無くそうとするように、しきりに頭を振って。 > > 「きゅー」 > >  ぶんぶん頭を振って、ようやく頭がすっきりしたようで、 > 今度は少しばかり冷静に、自分の置かれた状況を把握しはじめた。 > >  見渡す限りの、木、木、木。 >  殻を通して聞こえていた、マダラ少年の声は聞こえない。 >  殻を通してうっすらと見えていた、マダラ少年の姿はない。 > > 「きゅー?」 > >  生まれて間もない未熟な頭を、フル回転させて考える。 > > 「きゅー、」 > 『ボクは、』 > > 「きゅきゅきゅ?」 > 『捨てられちゃったのかな?』 > >  そこまで考えて、いったん思考を停止させる。 > > 「きゅきゅー!?」 > 『まさか!?』 > >  かなりの時間をかけて導き出した答えは、衝撃だった。 > > 「きゅーきゅ、きゅきゅい!」 > 『いーや、そんなはずないもん!』 > >  かぷり。 > >  生まれて間もないポケモンは、まだ卵の殻の入っているナップサックをくわえて、 > 人生をかけ、決意する。 > > 「きゅきゅうー!」 > 『なんとしてもご主人様を見つけてやるぅー!』 > >  闇色に塗りつぶされた空に輝く白銀の月。 >  小さな小さな生まれたてのポケモン・イーブイは、 > おんなじ月をどこかで見ているご主人様に、雄叫びを上げて誓うのだった。 > > > >  同じ頃、当のご主人・マダラ少年は。 > > 「もう食べらんない〜。じゅるり」 > >  ……ベタなギャグとともに夢の中。 >  果たして彼は卵の消失を知っているのだろうか!? >  ……きっと、いや、絶対知らない……。