> 「うがー!!!」 > >  AM11:59 >  かろうじて、午前中。 >  マダラ少年は奇怪な雄叫びとともに目覚めた。 > > 「おっはぁよぉうっ!!」 > >  寝袋ごと飛び起きて、枕元にいるはずの卵に向かって、朝の挨拶。 > > 「ん……?」 > >  枕元にあるはずの卵がない。 >  マダラ少年の脳内で、速急に処理、記憶、さらには解析まで行われる。 > >  そして、見出した結論とは…… > > 「オレ、喰っちゃった……っ?」 > >  いやぁ、それはないと思いますよ? > > 「うをぉぉぉ! 吐け! 吐くんだオレ!」 > >  ずぶっ。 >  自分ののどへ、右手中指人差し指、投☆入! > > 「ぐべばぁ! ゲホゴホゲホォ!」 > >  まぁ、そうなりますわな。 >  マダラ少年の頭には、どこかへ行ってしまったという考えはないようだ。 >  咳き込むマダラ少年。 >  このまま放置してもいいのだが、それでは話が進まない。 >  ここはマダラ少年にヒラメキを与えよう。 > >  こーん。 > > 「ん? まつぼっくり……いや違う。ク、クヌギダマ……?」 > >  マダラ少年の前に降ってきた、神の使い天の使いは、 > 誰もが一度は見たことがあるあのフォルムに、目玉をつけて、 > 緑の絵の具をかけたような、ポケモン。 >  マダラ少年の察しどおり、クヌギダマである。 > > 「うっきゃぁ! 大爆発するぅ、逃げろぉ!」 > >  マダラ少年疾走。 >  大爆発。 >  四方八方を巻き込んでの爆発。 >  そりゃあ逃げるね、だって巻き込まれたら大怪我…… > >  って、違ぁぁぁう! >  ヒラメキを与えるはずのクヌギダマ。 >  神の使い天の使いのはずのクヌギダマ。 >  しかし今は、マダラ少年に毛嫌いされるクヌギダマ。 >  可哀そうだろう? >  見よ、この悲しそうなクヌギダマの表情を。 > > 「なんか心なしか、クヌギダマが何かを訴えかけてくるような……」 > >  そうそう、そうだよマダラ少年。 > > 「何かオレに伝えたいんだな?」 > > 「くぬくぬー」 > 『そうだよー』 > > 「……って、ポケモンの言葉がわかるわけないじゃーん」 > > 「くぬ!?」 > 『なぬ!?』 > >  あ、クヌギダマが怒ったぞ。 > > 「ウソウソ冗談♪ ちょっとしたことで怒って、かわいいなぁもう」 > >  つん。 > >  マダラ少年は、クヌギダマのおでこにあたる部分をつついた。 > >  ごろり。 > >  転がるクヌギダマ。 > > 「ク、クヌギダマぁー!?」 > >  叫ぶマダラ少年。 >  そのとき、マダラ少年の中で、何かがはまった。 >  人はこれをヒラメキと呼ぶ。 > > 「まさか、タマゴもこんな風に坂道を……?」 > >  はっとしてマダラ少年は、顔を上げる。 >  そして一言。 > > 「ありがとうクヌギダマ! おかげでタマゴの行方がわかった!」 > >  赤い炎のチャリンコにまたがり、マダラ少年は卵の元へと駆ける。 > > 「くぬっ!?」 > 『え、置き去り!?』 > >  ありがとうクヌギダマ。 >  君はマダラ少年とイーブイの恩人だよ。 > >  坂道を転がるクヌギダマが止まったのは、 > あくる日の夕日のきれいな頃だとか頃じゃないとか。