イーブイはナップサックを引きずって、一生懸命歩いていた。  キャタピーたちがいた森は、すぐに抜けた。  イーブイは思う。「ここはどこ?」と。  その頃、炎のように赤い色のチャリンコにまたがったマダラ少年は、 あろうことかイーブイが歩いていったのとはまったく逆の方向へ、全力でチャリンコをこいでいた。 「まってろ! オレが絶対、ぜぇぇぇったい、見つけ出してやるかんな!!」  そういうのであれば、今すぐ回れ右して全力でチャリンコをこぐべきだ。  しかしマダラ少年はそのことを知らない。  ここは一つ神の使いを与えよう。  ―――そう、クヌギダマ(2号)である。 「くぬ!? くぬくぬ!?」 『え!? 次(の犠牲者)はボク!?』  我慢なさい。  それで迷えるイーブイは助かる(かもしれない)のですよ。 「くぬー……!!!」 『そんなー……!!!』  渋々ながらもクヌギダマ(2号)は、チャリンコをこぐマダラ少年の前に現れた。  が、しかし。  当然といえば当然なのだが、チャリンコは急に止まれない。  哀れクヌギダマ(2号)。  彼は天高く吹っ飛び―――。 「あ? 今なんか轢いたような……。ま、いっか」  当のマダラ少年にまで無視された。  天高く吹っ飛ばされたクヌギダマ(2号)は思うのだった。 (くぬくぬ、くぬぬ……) 〔まさか、気付いてももらえないなんて……〕  深い深い心の傷を負ったのは、言うまでもない。  そんなこと知ったこっちゃないマダラ少年は、まだチャリンコをこぎ続けていた。  こちらもクヌギダマを轢いてすぐ、森を抜けたようだった。 「ふぅ……。シンオウ大陸横断……。 もしタマゴが見つからないままだったら、諦めるしか……。 いや、いや、いや!! 漢なら、有言実行だ!!!」  マダラ少年は、四文字熟語で気合を入れた。  ついでにチャリンコのペダルをこぐ足に力をこめた。  ググッと加速する。  ぱらぱらとした砂の混じった風が、マダラ少年のボサボサの髪をなでた。