時同じくして、205番道路。  シンオウ地方最大の自然・ハクタイの森と、花かおる町・ソノオタウンを結ぶ道。  多数の段差とトレーナーがいる道である。  隣接する代表的な建物はタタラ製鉄所と谷間の発電所。 「きゅう……っ」 『心細いなあ……っ』  イーブイは青いナップサックを口にくわえたまま、器用にそうつぶやいた。 (きゅうきゅうきゅう……) 〔それになんだかあの人たち……〕  イーブイはおどおどと周りのトレーナーをみる。  イーブイには、周りのトレーナーが怖いのだ。  しかしまぁ、周りのトレーナーにしてみれば、とても珍しいポケモン・イーブイが目の前にいるのだ。  多少挙動不審になっていたとしても、不思議はない。 (か、かわいい……!) (トレーナーは? トレーナーはいないのか?) (千載一遇のチャーンス!?)  ……モンスターボールを構え、目を光らせるトレーナーたち。  これはたとえイーブイでなくとも、怖いものかもしれない。  やがて一人のトレーナーは痺れを切らして、イーブイの前に立ちふさがった。  キャンプボーイの手にはモンスターボール。  イーブイはポケモンの本能で回避行動にでようとする。 「逃げるなよぉ……。いけっ! コリンク!!」 「きゃおうっ!」 『任せとき!』  ボールが開いて閃光ポケモン・コリンクが飛び出した。  大きさ的にはイーブイと差はない。  ただ、コリンクのらんらんと光る目には、イーブイにはない何かがある。 「きゅぅ……」 『ひっ……』  イーブイはコリンクのそのらんらんと光る目に恐怖して、小さく叫んだ。 「コリンク、電気ショックだ!!」 「きゃう!」 『あいよっ!』  コリンクの星型の尻尾に、ぱりぱりと空気中の電気が集まる。  そしていざ、その電撃を放とうとしたとき、コリンクの目におびえるイーブイが映った。 「…………」 『…………』 「コリンク? どうしたっていうんだ?」 「……きゃ。きゃうぅぅぅ……」 『……フ。あたしにはできないわ……』  尻尾に集めた電気を空気中に逃しながら、コリンクは言った。 「え? こ、コリンク?」 「きゃおう、きゃぁうぅぅぅ……」 『悪いわね、あたしは弱いものいじめは向いてないわ……』  嫌に姉御肌なコリンクは、イーブイに背を向けた。  手持ちのポケモンにそういわれてしまったキャンプボーイは、呆然としたままコリンクをボールに収めた。  その様子を見ていたトレーナーたちの手持ちポケモンは、姉御肌なコリンクに共感していた。  かくしてイーブイはトレーナーの密集地帯である205番道路を、無事通過したのだった。