ここはソノオタウン。  鮮やかに花かおる町。  めぼしい建物は「フラワーショップ いろとりどり」くらいしかない、のどかな町 だ。 「くきゅ〜」 『オナカすいた〜』  休みなくここまで歩いてきたイーブイは、空腹で目が回りそうだった。  ソノオタウンの入り口に、木の実をつけた木があったが、イーブイの大きさではそこ まで手が届かない。 「きゅきゅきゅぅ〜」 『もうだめぇ〜』  ばたんQ。  イーブイはソノオタウンの花畑の中で、空腹のあまり気を失った。  ここはカンナギタウン。  昔をたたえる町。  町の中央には、古の祠がまつってある。  ハクタイシティとどこか似た雰囲気のある、由緒ある小さな街だ。 「やべ。今日どこで泊まろう?」  イーブイがお花畑で倒れている頃、ご主人・マダラ少年は、本日の宿を心配してい た。  テンガン山を疾風のごとく駆け抜けて、カンナギタウンまでやってきたマダラ少年。  しかし、マダラ少年とて人の子。  一睡もせずにチャリンコ転がせるほどの体力はない。  明日もまたまだ見ぬポケモンとの再開を願い、今日は休息をとるべきなのだ。 「この辺って、よく霧が出るから外で寝たら風邪引きそうだし」  マダラ少年はない頭をひねった。 「ちょっとそこの子ー……」 「かといってトレーナーじゃないから、ポケモンセンターに泊まるのは申し訳ないし」  マダラ少年の耳に何か聞こえたが、脳みそまで届くことはなかった。 「おーいってばぁ! ねぇ!」 「ああ! テントもあったらなぁ!」 「ちょっと! 無視すんのやめて!!」 「おわ! びっくりしたぁ」  ようやく、マダラ少年の頭まで声が届いた。  先ほどからマダラ少年に声をかけていたのは、ツインテールの似合う少女である。  マダラ少年との面識は…… 「だ、だれ?」  ないようだ。 「ハジメマシテ。アタシはテマリ」  テマリ少女は、握手を求めて手を差し出した。 「は、はぁ。ハジメマシテ。オレはマダラ」  マダラ少年は差し出された手をとる。 「ナタネさんに頼まれてねー。ポケモン探すの手伝うよ」  テマリ少女はニコーと笑った。  マダラ少年にはどういうことかわからない。  鈍感頭では、常人が1秒で処理できる問題を1分かけて処理するのか。 「……あ、ああ!! ありがと! 恩に着るよ!」  たっぷり5分かけて、マダラ少年はテマリ少女にお礼を言った。