『ウソつきーーーーーーっっ!!』  超弩級のおれの声が、ポッポやムックルなんかを森の外へと追い出した。 「なぁっ……!? ヨーギラス……」  おれのトレーナーとか言う下僕1が、あまりのうるささに耳をふさいだ。  ポケモンとは違って、なにを言いたいのか、はっきりわからない。  まぁ、あいつも同じだろうから、特に支障はない。 「落ち着け、落ち着けっての!」 『これが落ち着いていられることかぁー!!』  ばっこーん 「木倒すな! いったいどこにそんな力があるんだ!」  下僕1は、おれを必死で止めようとするが、無論おれはそんなんじゃ止まらない。  だって、こいつ、おれにウソついてたんだぞ。  おれ、毎年毎年楽しみにしてたのに!    あい びりーぶ ひむ 『おれ、聞いたぞ! 本当はいないんだろ!?』 「? 聞いた? 誰にだ!!」 『おれの下僕2にだ!』 「あのなぁ……。誰に聞いたのか知らないが、オレよりそいつのことを信用するのか?」  下僕1は困ったようにそう言った。  無論、そうだ。  おれは思いっきりうなずいた。  下僕1は、おれより思いっきりうなだれた。 「ヨーギラス……オレ、おまえのおやなんだけど……」 『ふん! 下僕のくせに偉そうなんだよ!』  うなだれて、頭を垂れた下僕1に、さらなる罵声を浴びせておいた。  まったく、どっちが主人かわかっていないな、こいつは。 「で、おまえ、今年はなにがほしいんだ? 連絡しといてやるから」 『下僕! この期に及んで、まだ言うのか!?』 「じゃー今年はいらんのか。クリスマスプレゼント、ふろむサンタ」 『ぐっ……』  下僕のくせに、おれの揚げ足取りやがって。  しかしまぁ、これはチャンスだ。  サンタはいないって、証明してやる!  思い返せば、去年はシロガネやまの土が欲しいと言って、3日間パソコンに預けられた。  一昨年はうずまきじまの土が欲しいと言って、1週間パソコンに預けられた。  つまり、その間にそこの土を取ってきていたに違いない。  だから、絶対無理なお願いをすればいいんだ。 『そうだな……おれ……』 「今年はどこの土だ? ハナダのどうくつか?」  へっ。  余裕ぶっこいていられるのも、今のうちだ。 『雪が欲しい!!』  ここはもともと温暖な気候だ。  真冬になったって、雪なんか降らない。  ましてや、クリスマスの日に偶然降るなんて、ありえっこない。  さぁ、どうする、下僕1!!  なぜだ、なぜ、おれは預けられないままにクリスマスを迎えたんだ? 「どうした? 不服そうだな」  そりゃあそうだ。  不服だ不満だ不愉快だ。 「安心しろよ? ちゃぁーんと来てくれるぜ、あの人は」  下僕1は余裕の表情で、暗くなり始めた空を見上げた。  おれは、むっとしたが、空を見上げてやった。 『!』  白い、綿胞子が降ってきやがった。  おれの鼻の頭についたそばから消える。 「な? 言ったとおりだろ?」  下僕1は、ニシシと笑う。  その顔に、なんだか無性に腹が立った。 『ちげーよ! こんなん雪じゃねぇ、雪なんかじゃ、ねぇ!』 「…………」  下僕1は、そう叫ぶおれを見て、笑いやがった。  馬鹿にされてるみたいで、ものすごく悔しかった。  あんまり悔しいから、あいつの顔は見るのはやめた。  そしたらあいつ、どっか歩いて行っちまった。 『…………くそ……。さみぃじゃねぇかよ……』  もう一度、空を見た。  黒に塗りつぶされた空から、相変わらず綿胞子は降ってきていた。  体、濡れるだろうが。  おれ、水嫌いなのに。  おれは、濡れたくなかったから、大きな木の下に非難した。  そんで、木の幹に背中をつけたら、あいつの声が聞こえた。 「ユキワラシ、悪いな。こういうときにしか、パソコンから出さなくって」 『ユキワラシ、気にしない』 「あいつには、このこと黙っといてくれな」 『ユキワラシ、黙っとく』  馬鹿野郎。  聞こえてるっての。  まぁ、今年は。  おまえの心意気に免じて信じといてやるよ。    〜END〜