「ああ、ウィッシュスター(英語・・『星に願いを』)ってのは、ボク達の楽団の名前なんだよ」 青空の下ののどかな街道をのんびりと歩きながら、ライはリントに説明した。 「楽団・・?」 「そ。舞い担当のライ、視覚効果のレイン様、そして音楽のミノルの3人よん」 「ライにーちゃんの舞い、なぜか人気出てきたからね」 「なぜか・・って・・ミノル・・」 「楽団・・なんだね」 3人で楽団とは言わないような気もするものであるが・・まぁ、それは目をつむっておこう。 「で・・その、わたしを連れてきたのって・・どして?」 「んふふふふふふ・・それはねぇ・・」 怪しい笑いを浮かべ、リントに近づくレイン。 「これからあたい達は、ウィッシュスター初・全国ツアーの旅なの! 最初の目的地は、リオンサイド湖の上に浮かぶ町・レインフォート! 大きな町だから、とりあえずリントの『これから』も何とかなると思うんだよね〜ん」 「そうそう。レギスタンへ帰るなりなんなりだね」 「そんなことまで・・考えててくれたんだ・・!」 「だってね、困ってる人を見捨てるのは、ボク的にどうかと」 歩いて行くライ達の背中を見つめ、リントは小さく呟いた。 「ありがとう」    POKE IN ONLINE2 #4    「4年前の幻影」 【トラベラーサイト〜レインフォート街道 中継地点 キノコ岩】 「あ・・なっつかしぃ!」 先等を歩いていたライが突然声を上げ、上り坂を駆け上り始めた。 「ほんとだ!」 レインもだ。よく見ると、背中のハネで微妙に飛んでいるではないか。 「・・レインねーちゃんはいいなぁ・・で、おねーちゃん生きてる?」 残されたミノルは、来た道を振り向いて声をかける。 坂の下の方に、リントの姿が見えた。 「い・・生きてるよ・・はー・・ひー・・」 「疲れるの早いよ・・」 「プレーンにばかり・・乗ってた・・はー・・はー・・ツケが・・」 「ぷれぇん?」 「・・ううん・・レギスタンの話・・」 「ふぅん」 「はーはー・・ミノルはライやレインのところ、行かないの?」 「あんまりはしゃぐのは好きじゃないんだよね、ボク☆」 自分で言うのかい。 ・・それはさておき・・ 「リント、生きてる? 傷、痛い? あたいのジュース、飲む?」 「あ・・りがと・・」 やがて登りきった一行の目に飛び込んで来たのは、それはそれは珍しいものだった。 上り坂が終わるとすぐに下り坂なのだが、その途中にそびえる岩だ。 巨大なキノコのような形状。 キノコで言うならカサの部分に、野生のポッポ達が群れをなす岩。 「わぁ・・」 「すごい!」 「ボクとレインは、キノコ岩って呼んでるんだ」 ここぞとばかりに、物知り顔で説明するライ。 「レインと初めて会った場所」 「え!? そうなの!?」 「そーいえばミノルは知らなかったっけ。ははは!」 「ぶー・・」 「とにかくさ、ここで休もうよ、みんな!」 ――もちろん怪我人のリントを気遣ってというのも理由だったんだけどさ―― 「ネバーランドの時は、変わらないね」 ポテチを噛みつぶし、不意にレインが言った。リントの方を向いてだ。 「えっ?」 「リントのことだよ」 もちろん、言葉の意味はリントには分からなかった。 「ネバーランドの時が・・止まってるの???」 「んー、そうじゃなくて・・」 「歴史は繰り返す・・ってことじゃないかな?」 「あ〜〜〜〜〜! ライ! あたいのセリフ〜〜〜!」 「ぎゃっ!」 レインによる攻撃。 その様子をながめて、密かに笑うのはミノル。 「オホン! まぁとにかく、あたいが言いたかったのは、リントが4年前のあたいに似てるってこと!」 「似てる・・の?」 「うんうん、似てるよ、かなりさ」 ライ、どうしても会話に入りたいらしい。 「今から4年3ヶ月ほど前、ボクがここを通りかかった時・・」 「・・よく覚えてるんだね」 「ライはこーいう奴なのよん」 「寒かった日。レインはこの岩にもたれて、震えていたんだ」 「あたい、家出したんだ」 と、レイン。 いつになくしんみりしたトーンだった。 ――家出・・だったらね、うん・・―― 「家出・・どうして?」 「だってほら」 レインが指して見せたのは、自分の背中の、小さな黒い翼。 「見ての通りあたい、悪魔だから・・ 両親には、顔も覚えてない頃に捨てられちゃってね。 で、その後、オーツソンさんって人に拾ってもらったわけよん」 「悪魔だから差別・・? ひどい話・・」 思わずリントの視線が落ちる。 恐らく、自分もレギスタンでは差別を受ける身だったので、共感できるものがあったのだろう。 で、この時、相変わらず遠くで『へー、そうなんだ・・』という感じで聞いているミノルが曲者だ。 「リントは、悪魔って聞くとどういうイメージ?」 「・・人に災いをもたらす存在・・(そう、まるでタカマサ・・)」 「そーよね。だから、今はまだ子悪魔のあたいも、大きくなって立派な悪魔になればね、オーツソンさんにもきっと迷惑が・・ そう思ったら、あそこにいちゃいけないような気がしてね・・」 「・・あの・・」 「じゃあトラベラーサイトや、ライ達のところにはいてもいいのか・・ってのは、聞いちゃダメね・・あたいも、密かに悩んでるから」 「レイン・・」 「ごめん! 話がしめっぽくなっちゃったね。忘れて!」 声の調子を上げ、レインは立ち上がった。 「ま、そゆことで、なんとなく今のリントが、あたいとイメージかぶっちゃってさ。 何かして助けてあげたい・・ってわけよん」 「そうだったんだ・・ありがとう、レイン」 「いーのいーの!」 頭を下げるリントと、その頭をぐしゃぐしゃとなでるレイン。 「あたいにとって、この旅はただのコンサートツアーじゃないの! まだ顔も知らない両親、見てみたい・・ってわけねん。 あっはっはっ・・ダメだねー、あたい。 ツアーとどっちが大切だーって怒られちゃうね」 「レイン・・」 「あー・・あそこ、ボクはとても入れないよぅ・・」 会話に入れなかったライはというと、ミノルの方へと移動していた。 「ま、そんなわけでミノル。ボクらはボクらで楽しくやろうよ。男の世界ってことで」 「・・僕、おねーちゃん達の方行くよ」 「・・あ、そ・・」    続    あとがき ポケライン2#4! レインの過去を語り、随所にギャグ入れてみました。 今回のセリフは、終盤にまでつながる伏線も入ってくるのでチェキですね(爆) それにしても、違う世界から来て途方に暮れる人→大きな町に行けば何かがわかる・・っていう展開は、某大作10を彷彿とさせますね(汗) ではではっ。    次回予告 竜の民リオン登場。 事件が勃発する・・ 第5話「探求は風に英知を乗せる(仮)」