ゼロスは去った。 わずか数秒の出来事。 青い・・彗星と言うのだろうか・・ 「わっ!!」 「ひゃあ!?」 レインフォートの辺りから、青い光を纏った『何か』が飛び出し、ライ達のすぐそばを飛び抜けて行った。 「くっ・・アレはまさか・・ッ!」 光を確認したゼロスは、それを追うように、戦闘から離脱したのだ。 「・・何だったの?」 「・・さぁ・・」 ――よく分かんないけど、助かった。けどさ―― 「ゼロス・・」 彼が消えた方向・・レインリバー下流・・を、レインとリントはしばらく見つめ続けていた。 ――2人のあの目は、よく覚えてるよ――    POKE IN ONLINE2 #12    「From Me to You」 正面から登る朝日が、ネバーランド最大の都市・ファイフシティのシルエットを浮かび上がらせている。 「はーん、じゃお前ら、ホント寄せ集めのパーティなんだな〜」 カメールに乗っているカームは言った。 なぜついて来ているのだろうか。 「うん、そうだね」 と、苦笑して見せるライ。 彼のヒザの上には、疲れて眠るリントの頭。 レインも彼女も、翼はもう引っ込んでいる。 ――今は・・寝かせておいてあげたかった―ー 一行は、ゼロスとの戦いの後、光、そして彼を追うように、レインリバーを下っていた。 広いネバーランド平原を一夜で突っ切り、もうじきファイフシティに辿り付く。 ティール・システムズがある町。 ――リントに何としても隠しておかなきゃ・・この時は、そればかり考えてたな―― ネバーランド・2日目の旅が始まる。 「リオ〜〜ン! どこまで行くのよ〜〜〜!」 「ついて来いと言った覚えはない」 「んなコト言ったって! あたいらだって行くトコないジャン!」 レインのツッコミをさらりと流し、先頭のリオンが岸へ降り立った。 「オレは・・」 言って、逆光のファイフシティを見上げる。 「ミトに会いたい。それだけだ」 ・・どこか、切なげな表情で。 「リオン・・」 「まさかシスコ・・」 何かを言いかけたカームは、次の瞬間、大気圏へと消された。 (言わなくて良かった・・) 上は、この時のミノルの心の中だ。 「オレは・・アイツを助けてやらなきゃいけないんだ・・」 「あ!」 上陸後、シティ正門へ向かって、町の外壁に沿って歩いていた一行は、草原に倒れている少女を発見した。 「し・・死んでる!?」 「いや・・生きてるな」 14、5歳くらいの少女。 短い黒髪。 黒いTシャツ、白いベスト。 黒いスカーフ、紺色のスカート姿。 「おい、起きろ!」 「ん・・う〜〜ん・・」 ぱちっ。 と、目を開ける少女。 (あ・・) どこか不思議な感覚が、リオンを襲った。 「あり? もう朝?」 「そうだけど・・キミは?」 「えへへェ」 5人(カームは現在、推定位置大気圏)をぐるりと見渡し少女は、ニッ、と笑って見せる。 「私はサキ! よろしく〜♪」 「よ・・よろしく。ボクはライで、寝てるこの子がリント」 「スーパー美少女レインちゃんだよ〜ん!」 「僕、ミノル!」 「・・リオン」 互いに自己紹介をするメンバー。 すがすがしい朝、草原での思わぬ出会い。 多くの人々の心をとらえて止まぬ、旅の魅力の1つだ。 ライ、レイン、ミノルの、ウィッシュスター全国ツアーは、初日の時点でその目的を半ば失ってしまった。 異世界から来た少女リント。 レインフォート氷結による公演不能。 謎の兄妹リオンとミト。 リントとレインの過去を握る男・ゼロス。 それぞれがそれぞれの目的を持ってここに出会い・・ そして、それらの目的は、これから1つの場に集まろうとしている。 2日目・朝。ファイフシティ周辺にて。 それは、この旅の中で彼らに許された、わずかな休息の時間であった。 「じゃ、サキのすぐそばを光が通り抜けて、それで気を失ってたってわけか」 「うんうん、ソーナノ!」 なぜかリオンになついたサキが、倒れていた訳を語ってくれた。 ファイフシティ出身で、木の実栽培の為に、ここに来ていたことも。 (それにしちゃ、近くに『みのなるき』ないけどナ・・?) 辺りを見回し、レインはふと目を止める。 (あ・・) 何かが落ちている。 (何?) 青い・・サファイアのような宝石だ。 (何だろ?) 拾って、みんなを呼ぼうとしてみる。 ・・が、すぐに彼女はそれをやめた。 みんながサキの話を聞いているから。 ひょっとしたら、昨日の朝のリントと同じ孤独を感じたかも知れない。 (う〜ん・・不思議な宝石・・) 青。 何かを連想させる色。 (ま、いっか♪) だが、最終的には、彼女のポケットに消えることとなったのであった。 そして、この時誰も気づかなかった。 彼女の翼が、再び光をたたえていたことに。 「そんじゃっ! せっかく会ったんだし、ファイフシティの案内でもしちゃうよッ!」 と、走り出そうとしてコケるサキ。かなり天然だ。 「そうだね。ファイフ公演を先にしちゃおう」 「ま、しょーがないネ!」 互いに見合わせ、ミノルとレインがうなずく。 リオンもまた・・静かにうなずいた。 「ま・・待ってよ!」 ただ1人止まったのは、眠っているリントを背負ったライであった。 ――ファイフにはティールがある・・! リントには見せたくない・・!―― 「どしたの?」 「いや・・その・・」 ミノルに問われ、ライは答えあぐねる。当然だろう。 「む〜! 私に不満カナ!?」 こちらはサキ。 「そういうわけじゃ・・」 「断る理由ないジャン」 「それは・・その・・」 ついに、追い詰められるライ。 ――で、はっきり言ったんだ―― 「リントに・・リントにティールを見せたくないんだ! この世界にもティールがあるってことを! だって・・もし知ったら・・リントは・・リントは・・!」 リントは、死にに行く。 ――驚いたミノルとレインの顔。そして何より・・あの声をボクは忘れない―― 「ティール・・あるんだね」 眠っているはずのリントの声が、ライへのとどめの一撃となった。       続    あとがき 実に半年ぶりの更新になりました、ポケライン2! お待たせしました。 今回はサキ登場、謎の石・・と、いろいろありました。 久々ですので、まだ文章の勘が戻ってません(汗) ともあれ、これからバンバン続きを書いていきますよ! ではではっ。    次回予告 リントに秘密を知られてしまった。 そして・・みんなにも。 第13話「何にも知らないで(仮)」