「・・でよ」 ぐるりと周りを見渡し、カームは言った。 「さっきあれだけ感動的な別れしといて、何でみんなここにいるんだよオイ!?」 そうなのだ。 スクープ・ポケライン社1Fロビーには今、リント、ライ、ミノル、レイン、リオン、サキ、カームの7人が勢揃いしている。 ・・先刻『あれだけ感動的』にリントと別れたというのに。 「いやぁ・・はは・・その、最後のギリギリまで、ボクはリントと一緒にいたかったから・・」 と、ライ。かっこ悪いにも程がある。 「あたいも同感」 「僕も」 以上が、ウィッシュスター3人組の弁解だ。 「私は・・そ〜だね、ヤジ馬ってダメ? てへっ☆」 これはサキ。 「・・何となく」 こちらはリオン。 いやはや、何とも往生際の悪いメンバーと言うべきなのだろうか。 (だけどね・・) だけど、リントにとっては、感謝すべき仲間達だったはずなのだ。    POKE IN ONLINE2 #14    「作戦会議」 「ごめん・・ください・・」 ロビーから受付嬢に案内された先、綺麗な手書きで『ティール取材班』と書かれたプレートのあるドアを、リントはためらいがちに開けた。 「はぁーい、どなたでしょう?」 机と書類が目立つ、せまい部屋の奥から、1人の女性が応答する。 外見推定10代後半。どこかあどけない感じが残る。 明るい茶髪のショートヘアに、パリっと紺のスーツで決めてる若い女性。 この時ただ1人、室内にいた人物だ。 「やっほ〜、リー!」 リントを押し退け、レインが手を振ると、女性もそれに反応した。 「レインさん! それに・・ライさんにミノル君!」 「・・!?」 「ほぇ!? 知り合いナノ?」 同じタイミングで驚くリオンとサキ。 出会ってから、妙にいいカップルに見える。 「知り合いの人がいたんだ・・」 「当たり前! だから推薦したのヨ!」 軽くリントをこづいて、レインは女性の方を指差した。 「ティール取材班統括・リーヴ。通称リーよん!」 「は・・初めまして! リー、と呼んで下さい・・ね」 【冒険2日目 午前10:05】 「なるほど・・そういう事情ですか・・」 「そう! だからこのリントを、チームに入れてあげて欲しいのネ」 リーから出されたポテチ(ネギみそ味)をほぼ1人で平らげ、レインが言った。 ――レイン・・少しは遠慮しなよ―― 「・・チーム?」 「そうです。では、私たちの計画を説明します」 魔石版を取り出して、整った図を描き始めるリー。 ちなみに魔石版とは、レギスタンで言う所のホワイトボード。 魔力のコートにより、書く・消すが自在に行える物だ。 ――それにしても・・もしボクらがティールのスパイとかだったら・・どうする気だったんだろ―― いきなり初対面の相手に『計画を説明』し始めるリーを見て、ふとライの頭を、そんな考えがよぎった。 彼女にとって、この甘さは弱さであり、また同時に、強さでもあった。 「このたび私たち取材班は、ティール・システムズ本社に対し、非合法に潜入取材を試みます。目的は、ティールの実態を暴き出すこと」 「ほよ? ティールに裏とかあるの?」 「・・黙っとけ、サキ」 ――リーの表情・・少しこわばってた。ムリないよね―― 「十数年前に、突如として登場し、モンスターボールを初めとした数々の革新的商品で、一躍巨大企業に登りつめたティール・システムズですが、その発展の影では、秘密裏に消された人たちの数も計り知れないと言われています」 ――彼女の両親も、その人たちの中に入ってるらしいんだから―― ぎゅっと拳を握るリントと、トイレに立つレインとサキの姿を、ライは見逃さなかった。 両親の仇の為に、人生を捧げたリント・・事情こそ違えど、リーも同じなのかも知れなかった。 ――そして・・あの時カームも、思いつめた顔をしてたんだ―― 「ティールの真相解明の上で重要なのは、この男だと睨んでいます」 リーの机からスケッチブックが取り出され、あるページが、リント達に向かって開かれる。 「・・!」 そこに描かれていたモノを見た時・・ ライは茶を吹き出し、リオンはイスを倒して立ち上がった。 「ゼロス!!」 そう、なぜならそれは、他でもない黒いローブの男・・ゼロスだったのだから。 「ゼロス・・ゼロスっていうんですか?」 「そうだ。それより、こいつが一体何を!」 リーに詰め寄るリオン。 いつにない迫力に、リーが少し怯えた様子を見せた。 「え、えっと・・社長のタカマサと一緒に何か話している場面、そして、ティール社内へ入って行く場面がよく目撃される、私たちがマークする重要人物です」 「一般人は入れてもらえない、あの社内に・・か」 「はい・・そうです」 「・・リーさん」 覚悟を決めたような・・険しい表情で、リオンはリーの名を呼んだ。 「オレも、潜入計画に乗る!!」 少なくとも3秒、場の空気が完全に止まった。 「リオン兄ちゃ・・」 言いかけ、次の瞬間、ミノルは一種の恐怖を覚える。 「ゼロスは・・」 血走った、左右色違いの瞳。 蒼白な顔。 怒りに打ち震える身体。 グラエナやギャラドス、ボーマンダにさえ並ぶ威圧感であった。 「ゼロスは、オレがブッ殺す!!」 「う〜ん、それにしても・・」 「な〜に?」 スクープ・ポケライン社1F廊下、トイレからの帰りに、レインは例の宝石を取り出し、窓の外の陽光にかざしてみる。 「サキ、これどう思う〜?」 「サファイアバージョン」 「これね、サキが倒れてた場所の近くに落ちてたのネ。知ってる?」 「う〜ん・・チルタリス」 「そっか、知らない・・か」 この会話でなぜ成立するのか・・はさておき。 その時だった。 「・・レイン!」 「?」 「せ・・背中!」 サキに従って背後を振り返り、レインは思わず「うそ〜ん!?」と声を上げる。 ・・翼。 レインリバーでゼロスと戦った時と同じだった。 普段は飾り同様の翼が、光り輝いている。 「このハネ・・どうして!?」 「レイン・・ソッチ見て!」 「・・!!」 そして、レインの手の中では、その翼に反応するように、青い石がまぶしく光を放っていたのだ。    続    あとがき リバーチェイスが終わってからしばらくはバトルがないので、ダレないようにしないといけないKです。コンバンハ。 リー登場で、あと未登場はイルとチェリーの2人になりましたネ。 ふっふっふっ・・イルとリーが2人一緒に出てくると思っていた人、多かったでしょう? ちょっとした裏切りでした(笑) ではではっ。    次回予告 レインの手で光る宝石。 その時、リオンは・・? 第15話「夜空一杯の星を集めて(仮)」