辺りの空間が一変した。 「ひゃ!?」 レインを中心に、全く別の宇宙・・多くの読者が想像しているそれで大体よい・・が、新たに彼女を包み込む。 「サキ! ちょ・・サキ!」 いない。 サキはいない。 星空の真ん中のようなこの空間に投げ出されたのは、レイン1人だ。 「・・まさか!」 ハッと、手の中の宝石を見つめる。 「アンタなのね・・でしょ!? あたいをどうする気!? ねぇ!」 寒々しい、青い光を放つ宝石。 答えは返ってこない。 「ねェ!」 「・・お兄ちゃん・・」 代わりに返されたのは、どこかで聞いた少女の声であった。    POKE IN ONLINE2 #15    「願い事」 ・・果たして。 振り返ったその背後に、彼女は立っていた。 長い、青い髪をなびかせて。 悲しさを、必至に押し隠したような笑顔を見せて。 「・・ミト」 そう。 キノコ岩街道でサイドンを凍らせ、レインフォートでヒトを凍らせ、そしてレインフォートそのものをも凍らせた、ミト。 「ミト! 一体何の・・」 「お兄ちゃん・・」 「・・?」 触れること叶わぬ、幻のミトにつかみかかり、レインは気付く。 彼女のメッセージの対象が、自分ではないことに。 「最後かもしれないよね? だから、全部話しておきたいんだ」 「リオン? あたいがリオンに見えてるの!? よく見てヨ!」 「お兄ちゃんのはずだよね? このメッセージを見ているのは。 私たちくらいの、レベルの高い魔法使いにしか見られないようにしてあるもんね、私の声」 (・・そっか。録音みたいなモンなんだ・・) 「必ず来てくれるって、信じてるよ。お兄ちゃん」 クスクス笑いながら語るミト。 (この子・・本当は苦しいクセに・・悲しいクセにッ!) レインは思わず、叫び出しそうであった。 『レベルの高い魔法使い』にしか見られぬメッセージを、なぜ自分が再生できたのか・・は、考える余裕もなかった。 何て事はない。 ゼロスによって『光の魔法』を持たされたレインならば、当然のこと。それだけだ。 たとえ、本人が気付いていなくとも。 ・・そう、気付いていない。 彼女、そしてリント達・・多くの仲間達もまた、まだ真実に気付いていない。 ネバーランドの時は、変わらない。 否、今まで変われなかった。 「ねぇ、お兄ちゃんは『星の塔』って知ってる?」 「星の塔・・?」 「世界の果てにあると言われる、古代の人たちが建てた塔」 聞いた事が・・ある気がする。 もっとも、 それがどこで・・いつ・・なのかは思い出せないが。 「古代人の英知を結集して作られたその塔は、この世界ぜーんぶを、いっぺんに見守って、そして、この世界を好きに作り変える力を持ってるの」 「・・そんなの・・どこで知ったのヨ?」 「どこで知ったか・・って思ってるでしょ? えへへ、お兄ちゃんって、わかりやすいもんネ☆」 「はぅ・・」 1歩たじろぐレイン。 ミトは相変わらず、寂しげな笑顔のままだった。 「星の塔・・ポケモン達の、遠い祖先の記憶を辿って知った。 光の力・・塔の力を手にした者は、神にも等しい力を手に入れる・・お兄ちゃんも、知ってるよね? 私が目指しているモノ・・」 「そう・・私は、神になろうとした」 驚き。 レインの時が・・数瞬停止した。 「くやしかった! みんな私たちを拒絶する! 憎かったんだよ! そんな不平等が! だから・・そんな世界を変えてやりたかった・・!」 「ミトは・・あの野郎・・ゼロスに殺されたんだ」 わなわなと震え、拳を握り締め、立ち続けるリオン。 励ます言葉を思いつくことは、誰にも出来なかった。 「言ってなかったな・・ミトにはあの野郎が言った『光』の力がある。 世代を越えて・・オレ達竜族の中でも、さらに別格の魔力を持って生まれた妹・・ あいつは『光』の力で神になると言っていた。 バカげた話だと思った。そして・・そこまで妹を追い詰めた自分が憎かった。 詳しいつながりは分からないが・・ミトは、その為にポケモンを分解して回っている・・らしい」 「リオン・・」 「ゼロス・・絶対潰す!」 リオンは、窓の外にきらめくティールのエンブレムを睨みつけた。 「はるか昔・・唯一絶対の存在・ドラグーンは、人間達に滅ぼされた。 けど・・本当は滅びてなんかないんだよ! 私、知っちゃった」 (えっ・・まさか・・) 瞬時に、レインの脳裏に何か嫌な感じがよぎる。 恐ろしい仮説を考えてしまったのだ。 「ドラグーンは滅びてない。ただ姿を変えただけ。姿を変えて、今も生きてる・・」 「ポケットモンスターの姿にね」 (嫌な予感・・的中・・) 「ミト・・分かった。あたい分かったよ。あの時ミトが言ってた『フェイト』って・・」 「フェイト・・あ、ポケモン分解の光の事だよ。 あれが、ドラグーンだった力のかけら。 つまり・・この世の全てのポケモンをフェイトに還して、再び1つに集まれば、ドラグーンは復活する・・ その場所は、星の塔のてっぺん。 その時私がそこにいれば・・集まる力は私のモノ! スゴイでしょ、お兄ちゃん! そうすれば、私は正真正銘の神になる! もう誰にも、私たちはいじめられないよ! アハハハハッ!!」 長い髪を振り乱して、ミトは笑う。 笑い続ける。 ・・狂ったように。 「ミト・・あんた・・」 知らず、レインの瞳から・・光るモノが流れていた。 自分の過去(たとえ偽りの記憶でも)に残る忌まわしい思い出と重ねてしまったから? もしくは・・悲しくて、またミトがあまりに切ないから? 「でもね・・」 しばらくして、ミトは言葉を切って、下を向いた。 「できないよ・・できないんだヨ・・! だって私・・私、死んじゃったモン!」 彼女もまた・・泣いていた。        続    あとがき コンバンハ、Kです。 今回は、一気に謎が明らかになりましたネ。 そしてミト・・まさか再登場が、こんな形になろうとは。 つまりあの宝石は、お兄ちゃんに拾ってもらうことを前提としていたわけなんですね。 具体的な説明は、次回以降になりまする。 しかしミト・・FF10におけるT田とU奈のセリフを喋ってます(爆) ではではっ。    次回予告 ティール突入を決意するリント。 そんな彼女の前に・・? 第16話「星空まで(仮)」