「2回目にレインフォートを凍らせた後・・お兄ちゃんと夜空ですれ違ったよね? その時、黒いローブの人がいたよネ?」 ひくひくと泣きながら、それでも、しっかりと言葉を紡ぐミト。 ・・つまり、あの時の『青い光』がミトだったわけだ。 「・・ゼロス」 「あいつ・・いきなり私を追っかけて来て言ったの・・『僕の計画の邪魔は許さない』って・・! 何も分からないうちに、いきなり地面に叩きつけられて・・死んだの! 普通の人間じゃないだけで、こんな目に遭わなきゃなんて・・殺されるなんて・・悔しいよぉッ! 悔・・しい・・よ・・!」 ・・ミト。 彼女が、この時流した涙の重みは・・? (ゼロスめ・・!) 自分のことのように、レインは胸が痛くなった。 「だから・・最後に私は『魔法の人形』を作ったんだ」 細い腕で涙を拭い、顔を上げ、にぱっと笑って見せるミト。 「・・魔法の・・人形?」 「そう。私みたいな青髪じゃない、まともな人の姿をした人形。 ・・だからお兄ちゃん、泣いちゃダメだよ? 私は死んじゃうけど、私の人形は、ずっとお兄ちゃんのそばに・・私の代わりになってくれる」 レインの顔が・・青ざめた。 「ミト・・ちょっと待って・・その人形の名前って・・まさか!?」 ・・s・・a・・k・・i・・? ・・Saki?    POKE IN ONLINE2 #16    「光を求めて」 「仕掛けをセットして来たぞ」 「もぅバッチリってカンジ!」 レイン、サキの2人がトイレから帰って来るより早く、ティール取材班の部屋に、別な2人が登場した。 上から下まで、全身真っ黒な服の青年と、茶色系の少女。 詳しく書くと、青年の方は10代後半。長身。 手入れの『手』の字も感じられないバサバサの黒髪に、革系の黒い上下。 実用性に疑問を感じる、いかつい大剣を下げている。 少女の方は、顔つきからして恐らく12、3歳。 『顔つきからして』と書いたのは、身長が160センチほどもある長身だからだ。 茶色のポニーテールに、ベージュのフリース。 茶色のスカートの下に、黒のスパッツという姿だ。 「イル君! チェリーさん! おかえりなさい」 すぐさま席を立ち、リーが出迎える。 上機嫌そうにはしゃぐ少女と、無表情の青年の対比が妙に面白い。 「ここのメンバーみてぇだな・・」 言って、何気なくリントの方を見やるカーム。 「・・リント?」 その時のリントの表情を、彼はどうとらえただろうか。 「あ・・」 呆然として、言葉の出ないリント。はっきり言ってマヌケ面。 「・・お?」 「イル君?」 振り返ると、イルと呼ばれた青年も、似たような表情をしていた。 もっとも、こちらは顔の筋肉が引き締まっているが。 「イル!」 「リント!」 次の瞬間、2人は互いに、互いを指差して叫んだのだ。 ――そういえば、リントの話の中に『イル』って。出てきた名前だった―― 「2年ぶり・・でいいんだよね?」 「ああ・・だが、リントの胸は、2年分成長してないな」 「・・むっ」 「フッ」  ――でも、彼はレギスタンの人じゃなかったっけ??―― 「・・ってわけで・・」 リントによる説明タイム。 「わたしとイルは昔、同じレギスタンのスラムにいたの」 「なるほど・・」 うなずくライ一行。 「よくわかんないけど、面白そうなカンジ!?」 と、こちらはチェリー。なんだか緊張感に欠ける・・というより、この不思議を楽しんでいる? 「・・でも、おねーちゃん。2人共、どうやってこっちの世界に来れたと思う?」 「ん・・わかんないけど・・」 「俺は」 ミノルの質問に答えあぐねるリントを見、隅の壁にかっこつけて寄りかかっていたイルが呟く。 「俺は、リントが最後に俺を見たあの後、ティールの始末屋に会ったが」 「最後・・そうだ。ミーミルさんのことに怒って、スラムを吹き飛ばした日・・だね」 「そうだ。そして始末屋は言った『お前を確保せよとの命令だ』と」 ――始末屋なのに・・殺さない?―― 「戦いは熾烈を極め、次の一撃が勝敗を分ける・・そんな所まで持っていった。 だがその時、俺の意識は急激に飛んだ。 ・・次に気付いたら、この世界だ。そしてここで、守るべき人を見つけた」 「イル君たら☆」 ポッ、と、顔を赤らめるリー。 「ケッ、やってろい」 スネたようなカームの一言に、思わず何人かが吹き出した。 「・・ねぇ、イル」 そんな中・・リントは大真面目だった。 ――リント・・お願いだよ・・せめてもう一度・・笑って欲しい―― 「その始末屋って『黒山羊』って言わなかった? わたし、ネバーランドに来る直前に、そいつと戦ったの。負けたけど」 「黒山羊・・知らないな」 少しだけ考えた後、冷たく返すイル。 「わたしの『エアロブースト(ピジョンの翼で推進力をつけて、リント自身の素早さにプラス補正をかける技・・らしい)』より速くて・・銀色の爪をつけてて・・」 「確かにそういう奴だったが。始末屋としてはスタンダードなスタイルだな」 「そうだけど・・」 ・・と、その時であった。 バタン! 大きな音を立て、部屋のドアが開く。 「レインさん!」 そこに立っていたのは、烈火の如き怒りをたたえたレインと、その様子に怯えるサキの2人。 「みんな・・あたい、ゼロスぶっ殺す! あたい自身の為にも・・あの子の為にも!!」 「な・・な?? 何なの!?」 静まり返った室内に、事情を知らないチェリーの声が、場違いにこだました。 その後の会議内容は、こうだ。 まず、リーらよって、ゼロスとティールの関係がレインに知れ、彼女もティールに乗り込む決意をする。 ミトの為、リントの為・・何より、自分の創造主に打ち勝つことで、自己の運命に決着をつける為に。 続いて、潜入取材大作戦のプランが説明される。 決行は、翌日午前0時。あと12時間強。 事前に、自称『怪盗シェリー』ことチェリーが確保しておいた換気ダクトから社内へこっそり侵入。 同じく彼女が手に入れている『社内MAP』に従い、最上階の社長室・・タカマサを目指す。 途中、警備兵との戦闘が避けられない状況になったら、剣と銃のスペシャリストであるイルとリント。竜族として高い魔力を持ち、炎の攻撃魔法を操るリオン。強いポケモンを所持するチェリーの4人を軸に、リーとレインを守りつつ戦う。 ちなみにレインは『あたいだって弓矢、得意だモン!』と自称したのだが、テストの結果、的に届かなかったので戦闘メンバーから外されたりしている。 冒険2日目・昼。 ライにとっての大きな変わり目。 これまで行動を共にしてきたメンバー・・ウィッシュスターがバラバラになってしまう。 ――レインが、リントがみんないなくなる・・! イヤだ! お願いだ、時間よ・・止まってくれ!―― 『3日目』を前に。 ネバーランドの時は、確実に変わりつつあった。    続 【Menu】 イル  L50  H5500/5500 M0/0  武器:レーヴァティン 防具:プロテクトコート リント L35  H3021/3021 M0/0  武器:ネバーハート  防具:ホワイトケープ リオン L48  H5375/5375 M377/377  武器:ククリ 防具:ディバインコート    あとがき ちょっと悪乗りして、RPG風ステータスを↑に書いてみました。 ティール突入時の先発バトルメンバーですね。 イルとリオンは天才型、リントが努力型といった所でしょうか。 作中では『レインは弓が下手』ということにしていますが、メイキングによると『相手を混乱させる矢』が装備のひとつにあります(汗) ですが今作は、派手な戦闘メンバーが多いため、レインの弓は結局お蔵入りに・・嗚呼(滅) 実際のティール突入は、次々回と思われます。 ではではっ。    次回予告 決行前の最後の晩。 それぞれの思いは・・? 第17話「空を見に行く(仮)」