立ち昇る土煙の中に、ミュウツーとタカマサのみが立っていた。 『ギャラクシーフォース』 あまりに強大な力の前に、成す術も無く倒れたリント達とポケモン達を見下ろしながら。 「私の目的は、間もなく達成される。光のサンプルであるリントと・・リントとイルを、ようやく手に入れた」 「な・・ンだと?」 剣を支えとし、辛うじて起き上がるイル。 いつものままの表情。 しかし、少なからずその言葉に動揺したはず。 「君も、ゼロスの作成したサンプルということさ」 「認めんぞ!」 リーを抱き起こし、イルは語気を強める。 「俺を作っただと!? リント達と同じように・・!? 言え! 目的は何だ!!」 「・・決まっている」 地上から遠く離れたこの場所の上空で・・星空は、ただ変わらず、その輝きをたたえていた。 「星の塔・・だよ」    POKE IN ONLINE2 #24    「最終決戦U」 「故郷を消された私は、反乱軍を組織し政府に復讐を企てた。そんな中で私は、人間というものに愛想を尽かしたのだよ」 「・・世界中に戦争の道具をばらまいているのは、その為に人間を滅ぼそうとして!?」 「・・ひどいじゃないか、あんた!」 ライに支えられて立ち上がり、銃をタカマサに突きつけるリント。 とは言っても、もう弾はない。 先刻のクイックトリガー・・一連射・・により、およそ2秒で撃ったものが全て。 それに、もともと古い銃。トリガーに限界が来ている。 タカマサにはそれが分かっていたのだ。 だからこそ、避けようとしない。むしろ笑い、話し続ける。 「兵器産業は、私の壮大な計画の為の資金調達でしかないさ」 「壮大な・・計画!?」 「そう! 人間という愚かな生き物を、原初の存在・・オリジン(Origin)に戻すという計画だ!」 『オリジンに戻す』 タカマサの声と同時に、ビルの下層で爆発が起こる。 「どうして!」 「考えてみたまえ、この広い星の海で、人間だけが並外れた知を備えている。 実に不公平とは思わんかね? 人間の機械文明が、この星の1年を、最後のほんの数分で破壊しようとしている! 人間は力を持ちすぎた!」 「・・タカマサ社長・・! まさかあなたは・・」 「・・そうさ。レギスタンという腐った機械文明を破壊する! 人間は、星の全ての生き物と同じ地位に立つ!」 「・・!」 ――知らず、戦慄が走った―― 「そうか・・あなたは、そうして人間をオリジンに戻した後、自分が世界の王として君臨するつもりなんだ!」 「フッ・・勘違いは困るな。私とて所詮1人の人間。心得ているさ。 世界を統べるのは、そうだな・・ここにいるミュウツーの仕事だ!」 タカマサに指差されるが、ミュウツーは動かない。 「タカマサ社長・・」 言って、ゆっくりとリーが立ち上がった。 「あなたは、分かっていたんですか!? ゼロス氏の目的を!」 「ゼロス・・? ああ、彼には、私と共通の目的を持つ者として、光サンプルの作成に尽力してもらったよ。それが何か?」 「・・やっぱり・・」 割れた窓から吹き込む風ではためくスクープメモ。その1ページに目を落とし、彼女はタカマサへと視線を移す。 怒りは無い。 何かを哀れむような、そんな瞳を。 「・・ゼロス氏は言っていました。自分の目的が、星を裏切った許せない世界・・レギスタンの完全なる破壊だと! 社長! あなたの目的とは違うんですッ!」 「・・!?」 ここまで常に冷静に、こちらを斜めに見下ろしてきたタカマサの表情。 それが・・わずかに崩れた。 「まさか、社長はゼロス氏に利用されていただけなのではないでしょうかッ!  彼の目的・・レギスタン破壊という目的を知らないで、研究施設と資金を提供して・・ きっと彼は、目的を達成する時、用済みのあなたを・・」 「ありえぬ! デタラメだ!」 これまでのイメージを一変させ、怒鳴り散らすタカマサ。 誰が見ても明らかに・・動揺していた。 「レギスタンを滅ぼすなど、愚の骨頂! そのようなことをすれば、どれだけの尊い生命が星に還ると思うのだ!」 ――何だって・・?―― バキッ。 ミュウツーに叩きのめされ倒れていたリントのピジョンから、何か音が響く。 「何!?」 ピジョンの身体が激しい光をたたえ、5人の目を一瞬くらませる。 「わたしの両親は・・いいの?」 ほんの1秒、2秒に満たない一瞬。 主人の怒りに呼応し、急激に姿を変えたピジョンが、タカマサを捉えていた。 神の翼・・ゴッドバードと化し、男の心の迷いを突いて。 「バカな・・ピジョット・・!? 『ゴッドバード』!!?」 「そんなに人を殺したくないのに・・どうして!! どうしてわたしの・・みんなの両親は・・殺したのよぉぉッッ!!」 抑えていた涙を流し、その場にくずおれるリント。 心臓に『ゴッドバード』を受け、血を吹き出すタカマサ。 2人の涙と血が、同時に赤絨毯の上に落ちた。 赤と、無色。 染まりきった色と、純なる色。 ――2人の立場。価値観。全ての違いがそこに表れてたんだ―― 殺された沢山の人々・・リントの両親。 タカマサの理想に、邪魔は許されない。 「それは分かるよ! 分かる・・だけど!」 「・・終わり・・か」 風に乗った火の粉が上空へ舞い上がる中、少女が長年追い続けた男は絶命した。 全く表情を変えず、ただ立ち続けるミュウツーに見下ろされながら・・ 「終わりだ」 剣とリザードンをしまい、静かにイルが言う。 「ティール・・終わったね」 続いて、リー。 「はは・・なんかボクかっこ悪かったけど、どうにかなったね、リント」 「うん・・」 満身創痍で、ライ、リントは互いにうなずき合った。 「帰ろう、みんなの所へ」 「うんッ!」 ――素敵だった、リントの笑顔。来てよかった・・って思った―― 2人が後ろへ振り返り、来た階段を戻ろうとする。 その時だった。 何の前触れも無く、リントが床に崩れ落ちたのは。    続    あとがき どうも、#24です。 つまりタカマサは、ゼロスに利用されていたんですね、リーの推測通り。 それにしても、リントのピジョンの劇的進化ですねぃ・・ 考えると、ポケラインシリーズ初の進化? と思ってみたり。 ではではっ。    次回予告 全ては・・終わった? その答えは星のみぞ知る。 第25話「最終決戦V」