「大変タイヘン! 大変だよぉぉ〜〜〜〜〜〜ッ!」 バックスピンキックでドアを激しく吹き飛ばし、レインが社長室に登場した。 「悪いけど、こっちも大変なんだ!」 ライ達は今、先刻リントを倒した者と対峙している。 それは、ミュウツー。 タカマサとゼロスの手によって生み出された、ミュウに『つらなるもの』 「どうして! もう戦う理由はないじゃないですか!」 リーが言った。 「栄光の影で、沢山の人を苦しめてきたティールが・・やっとなくなったんですよ! これでやっと・・私やリントさん達の両親のような人、いなくなるのに・・それなのに!」 今にも泣きそうな声で。 「どうしてですかッ!!」 煙が舞う室内、倒れたタカマサを一瞥し、彼が返した答えは・・あまりにシンプルなものであった。 「私が戦う理由は・・消えることはない。なぜならそれこそが・・私の存在理由だから・・だ」    POKE IN ONLINE2 #25    「最終決戦V」 『大変だ!』と慌てふためいていたレインも、その不気味な迫力に、思わず言葉を飲む。 「私が生み出された理由・・それは戦う為。生命が尽きるその時まで戦い続ける為・・。それゆえ私は、運命に従う他に道はない」 「決め付けるなよ!」 気絶したリントの身体を抱き起こし、叫ぶライ。 「ライ・・」 「たとえそういう目的で作られたにしたって・・その運命が絶対だなんて誰が決め付けたのさ!」 「・・そーだよ! そーだそーだッ!」 「・・」 タカマサのデスクを挟んで向かい合う両者。 背後から足音と、リオンの足音が聞こえたのはその時であった。 「みんな無事か! ゼロスの野郎は来てないか!?」 「ゼロス!?」 「・・倒し損ねたのか?」 「違う、ゼロスは倒した! けど・・そしたら、奴の身体から霊みたいのが出た・・。このフロアに向かってったんだ・・ってレイン、伝えてなかったのかよ!?」 「えへへ☆」 「えへへ☆ じゃねぇっての!」 ――ミュウは言ったよね。自分につらなるものを、解き放てと―― 「解き放つ!」 ライはリントの銃を取り、ミュウツーを見据える。 「無茶をするな!」 イルともリオンともつかない声が背中に浴びせ掛けられた。 「ううん、今回はボクにムチャをさせて。ここまでやることは、後にも先にもきっと今回だけだから。ボクにできる最後のチャンスかも知れないから・・」 「フン・・格好をつけるな」 ライの横に出て、剣を抜くイル。 「・・イル君!?」 「大丈夫だよ、リー」 「イルさん・・」 「ライ、お前も同じ、大切な人を守る為だろう。お前1人だけを戦いの中に置くのは・・俺が許せない・・」 「『大切な人』・・」 しばし口を開け、やがてレインが呟いた。 「ライ・・やっぱりそうなんだね?」 最初は小さく、やがてはっきりと、澄み切った声で。 「リントのこと好きなんだね!?」 それは、崩れ、燃え行くビルのあちらこちらで聞こえる騒音とあまりに対照的であった。 「初めて会った時からね・・放っておけないって思ってた。守らなくちゃって思ってたんだ。でもね、リントは強かった。ボクの出番はとてもなかった。 けど・・けど今こそ、ボクがやらなきゃいけない時だと思う!!」 ――ミュウツーの存在意義が戦うこと・・なら、ボクの存在意義は、守ること・・だったのかもね―― 「フハハハハッ! 泣かせてくれる話じゃあありませんか!」 刹那。 どこからともなく知った声が響く。 「・・ゼロス!」 「・・って、待て! じゃあオレもレインも、追い抜いてたのか!」 ゴースを連想させる暗黒のガスが、天井のシャンデリアを隠すように集束する。 声は、そこから発されているように聞こえる。 「しつこい野郎め! いいかげんに地獄へ落ちろ!!」 右手でガスをなぎ払い、叫ぶリオン。 「貴様がこの世にとどまる理由などないッ! 意味もないんだ!」 「ひどいですね、それ」 ゼロスそのままの口調に、ややエコーのかかった声で、ガスは言う。 「僕は星の塔の力を使い、レギスタンを滅ぼすまでは、死ぬわけにはいきませんよ!」 「実体のないアンタに、塔を使えるワケないジャン!!」 「フフフ・・そんなもの、何とでもなるじゃあありませんか! こんなに正義の味方さんがいればねッ!」 ――それはつまり、ボク達の誰かに乗り移るってことだよね―― 「ちッ!」 ゼロスのガスが笑い声と共に拡散した瞬間、イルも同じコトを思ったはずだった。 「リー、俺のそばから離れるなッ!」 「イル君・・!」 リーをかばい、ガスの動きに注意を払う。 しかし皮肉にも、集束したガスはリーめがけ、思い切り吹き付けた。 「リー! 君の身体をいただきましょう!」 「ふざけるな! リーは俺が守る!!」 ――その瞬間は・・なぜかとっても長く感じた―― イルがリーを突き飛ばし、彼をガスが飲み込む。 ――それがどういうことか・・ボク達は考えてられなかった―― 「なぁんてね」 煙は消えた。少し目つきのおかしいイルがそこにいた。 ゼロスの持つ特有の邪気をそのまま受け継いで。 「イル君、大丈夫!?」 急ぎ駆け寄ったリー。 直後、そんなイルの瞳を見て凍りつく。 「僕か・・僕は大丈夫ですとも! ハハハハハハッ!」 ショックだった。 知らず、彼女の瞳に涙が滲んでいた。 「なんてね、なーんてね。本当の狙いはイルですとも。なぜなら光の力を持っているんですからね!」 「こ・・こらーっ! イルの身体を返せ〜〜ッ!」 「ゼロス・・貴様・・!」 レイン、リオンがモンスターボールを向ける。けれどイルには手が出せない。 そんなジレンマを見透かしたイル・・否、ゼロスの高笑いが嫌らしく響いた。 「さぁ行きましょう、ミュウツー」 言って、彼はミュウツーを振り返る。 「君の生み出された目的を、僕と一緒に果たそうじゃありませんか」 「・・」 ミュウツーは答えなかった。 何も言わぬまま、その背にイルを乗せ、大穴の空いた壁から虚空へ飛び立った。 「イルくーーーーーーーーーーーんッ!!」 「僕たちはこれから【星の塔】へ向かう! レギスタンは永遠の死を迎えるのですよ! フハハハハッ!」 「・・違う」 あっと言う間に夜空の小さな点となった彼らを見つめ、ライは呟いた。 リントを抱きかかえ、小さく震えながら。 「そんなものない・・。星空が夜明けに消えてしまうように・・永遠なんてありはしないよ・・! お願いだよゼロス! 悲しみを増やさないで! お願いだよミュウツー! キミの運命は・・きっと変わるよ!!」 3日目未明。 物語の舞台は最後の地へ移ろうとしていた。    続    あとがき どうもコンニチハ、Kです。 さて、ライがいろいろいい事言ってくれて、とっても最後っぽい雰囲気になっています。 しかしさすがに、全員平等に出番をあげるのは難しいな・・と、このポケライン2でつくづく思いましたね。 ではではっ。    次回予告 戦いの夜明けは近い。 星が彼らに与えた答えは・・? 第26話「最終決戦W」