POKE IN ONLINE2 #26    「最終決戦W」 ――この戦いはもう、ただの敵討ちじゃない―― 「レギスタンを・・滅ぼさせは・・しない・・!」 かろうじて目を覚ましたリントは、傷だらけの身体を起こし、イルとミュウツーの飛び去った星空を見つめる。 「行かなきゃ・・最後の戦いに・・!」 それでも、世の中には気合いでどうにかならない事の方が多い。 「・・う・・ッ・・」 身体中にたまっているダメージに耐え切れず、再び彼女は崩れ落ちた。 「リント・・だめ! 動いちゃダメだ!」 「・・死んじゃうよぉ!!」 半ば泣いたような叫び声を上げるライ、レイン達。それ程に痛々しい彼女の傷跡。 「ッ・・でも、行かなきゃ・・」 「そんな身体で行けるワケないよぉッ!」 「リント・・どうして・・! どうしてそこまで!」 ――ボクがそう聞いた時、キミは笑ってこう答えたよね―― 「だって・・今、レギスタンのみんなが・・ケムッソ・・なんだよ?」 「・・!」 リントとレイン。 2人の『翼』が光りだしたのは、その時であった。 レインリバーの時と同じ・・否、それ以上に強く共鳴し、光を放っている。 「そうか・・その翼は・・!」 「星の塔・・!」 リオン、リーが叫んだ。 「オレも星の塔へ行くぞ! ゼロスにとどめを刺す!」 「私も・・! 私は、イル君を助けたいんですッ!」 続けて、レイン。 「あたいだって、逃げるわけにはいかないよ! ゼロスを倒さないと、あたいの運命は変わらない・・ううん、変われないままなんだ・・」 そして、リント。 「大丈夫・・。わたし、ライと約束したもん・・。絶対・・絶対生きて帰って来るって・・」 ――切なく・・なった―― 「ライ」 何も言えず、ただ立ち尽くすライに、レインはスッと右手を差し出す。 「ユビキリ」 「え?」 翼の放つ黒い光が、小指を立てた彼女の手のシルエットを、くっきりとライの瞳に映し出している。 「何があっても、ライはリントを死なせない。って、このレインちゃんと約束するのよ」 「・・うん」 リントに笑いかけ、ライはレインと小指を結んだ。 「ユビキリ、げんまん、ウソついたら・・」 「ノクタスのーますッ」 「ちょっとレイン! それ痛いからッ!」 「約束守ればいいんだヨ。ね、リント」 レインがリントの前にしゃがみ込む。 「行こうよ・・」 「・・うん」 頷き合って、互いの手を合わせる。 刹那、光が爆発した。 「皮肉だね。作られた力、こんな風に役立つなんて」 2人を中心点とし、白と黒の光の波動が混ざり合うように渦を巻く。 星の塔を動かす為に、ゼロスによって与えられた悲しい力。 彼女達の、生まれた理由。 その力が今、ゼロスを阻止する為に・・星を救う為に開放されている。 ――ノクタスを飲まされることなんかより、リントを失うことの方がずっと怖い―― リントの銃を、ぐっと握り締めるライ。 ――ボクの最後の戦いは、リントを守れなければ負けなんだ―― 瞬間。 5人の意識は星空へ飛んだ。 「星空よ、消えてしまわないで・・。もう少しだけ、夢を見させて・・」 【星の塔】 目には見えない闇の波動が、虚空に逆巻く地。 果て無き荒野にただひとつ聳える古代の塔。 彼らの心は、上空からそれをとらえる。 「・・星の塔!」 「これが・・あたいらの作られた目的。あたいらが生かされてきた意味!!」 「終わらせなきゃ・・イル君を助けなきゃ!」 一般には、テレポートと言うのだろう。 否、あるいは意識が空間を飛んで来たのだろうか。 上空から塔を見た直後、彼らはその入口付近にて実体化を果たした。 「てれぽーと、成功!」 「すごいね・・光の力」 辺りの荒野に、緑色の光の粒が大量に漂っている。 これが何か気づくのに、彼らに特に時間は必要なかった。 「なぁ・・これって・・!」 「・・うん」 FaTe。 ポケモンを構成する力のかけら。唯一絶対の神・ドラグーンの力のかけら。 「まさか・・ゼロスが・・!」 ライだって、ここへ来た時から、気になっていないわけではない。 自然地形ならどこにでもいるはずの野生ポケモンの気配が、塔の周辺には一切なかった。 代わりに・・フェイトが漂っている。考えられる可能性はひとつしかないのだ。 「ゼロス達・・ポケモンを・・分解・・?」 か弱い声を絞り出し、リントが言った。 「だとすれば・・!」 だとすれば、考えられるゼロス達の目的もまたひとつ。 ――ドラグーンの・・復活!―― 「・・行こう」 リントを背に負い、先陣を切って塔へ飛び込むライ。 「待った〜! あたいが世界を救ってやるんだから〜!」 「どうでもいいが、ゼロスだけは殺ス!」 「私は、とにかくイル君を助けますッ!」 それぞれの想い。それぞれの存在意義を胸に。 そして、星の運命・・ポケモン達の未来を背中に。 5人は古代機械に埋め尽くされた塔内を駆け登る。 ミノル。 サキ。 カーム。 チェリー。 イル。 沢山の仲間に支えられてここまで来た。 失敗は許されない。 ――最後の時は、近い―― 塔内の壁に刻まれた、さながら電子回路のような線が、緑の光を上へ上へと走らせている。 「・・時間が・・ない!」 長い螺旋階段の末、屋上の扉が姿を現した。 「突っ込もう!」 ネバーランドの時が、間もなく動き出す。    続    あとがき ポケライン2も#26、最終決戦Wまで来ましたね。 一気に大詰めムードが漂ってきて、Kの心もプレッシャーです、いぇい(爆) 次回からはいよいよラストバトルですよ〜。お見逃し無く。 ではではっ。    次回予告 マサラへの回帰を求めて。 星の中心での戦いが待つ。 第27話「最終決戦X」