「まあ〜! あんた、あのショウ君かい!?」 「立派になったもんだねぇ〜!」 「しかも、カワイイ彼女連れちゃって!!」 (か・・彼女ってワケじゃあ・・) 『地図にない町』広場へ行ってみたショウとひとみ。 早速、村人達・・ほとんどは、かなり歳喰ってる・・に、取り囲まれることとなった。 ひたすらにちやほやされ、照れたひとみは、ポリポリ頭をかいている。 「お嬢ちゃん、どこから来たんだい?」 「あ、んーとぉ、ひとみは、おっきな町から来ました!」 ・・おっきな町・・ねぇ・・ まぁ・・間違ってはいない。 だが、まさか彼女が『未来』から来た人間だなど、ショウとひとみを抜いた、この人達の誰も知るよしはないだろう。    POKE IN ONLINE #3    「キミを探してたの」 ショウには、Kの家や『ユリハの墓』を見た時同様、何か物足りない感覚があった。 ・・人が減ってる。 2年前と比べて、明らかに村人が減っているのだ。 地方を襲う、深刻な過疎化の影響だろう。 Kもいなくなった。 村人もいなくなっていく。 やがては・・村自体も・・ 広場中央の大風車だけが、かつてと変わらぬ回転運動を続けている。 それを見たショウの中に、たまらずナーバスな感情がこみ上げる。 ・・と、その時だ。 「見つけたよ。ショウ」 不意に、彼の背後から声が響き、全員の視線をそちらへ集める。 そんな、不思議に有無を言わせない、透き通るような少女の声だった。 振り向けば、全く予想通り、いるのは1人の少女。 ・・と、1匹のディグダ。 少女の方は、先端がギザギザした、微妙にハネている茶髪のショートカット。 服装は、黄色ベースに、オレンジチェックの入ったブラウスに、青いジーンズと、一般的。 身長はショウより高いが、顔だちからして、年下のように見える。 ショウもひとみも、全く知らない人物だ。 「・・誰?」 「・・誰?」 2年間、互いに相棒として冒険していただけあってか、バツグンのタイミングでショウ&ひとみがハモる。 少女は一瞬だけ、複雑な表情を浮かべ、そして言った。 「あ、ゴメンゴメン。言い忘れてた。わたしは、はるかぜ」 はるかぜ・・やっぱり知らない名前。 「あ・・あのさ、失礼だけど、オレ達どどっかで会ったっけ?」 「んー、ひとみもさ、はるかぜのコト知らないよぉ?」 「・・キミは知ってるハズないよん。初対面なんだから」 「でぃぐ」 不思議な少女・はるかぜと、彼女の横にいるディグダ。 ショウとひとみ同様、なかなか息が合っている。 が、はるかぜの口から紡ぎ出された言葉自体は、ショウとひとみをますます混乱させる。 ショウに至っては『あぁ〜、話がこんがらがって妖精さんが見えて来た〜、あははははは・・』などという状態に陥ったほどだ。 「う〜・・何なんだお前は?」 「はるかぜ」 「そーじゃなくて、何かもっと詳しく説明・・」 「キミを探してたの」 「理由は?」 少しの間、考える動作をし、ショウはポンと手を叩いた。 「分かった! サインだ! 何せオレってばチャンピオンだしなー! よーし、100枚でも1000枚でも書いてや・・」 「そんなモノいらないってば」 はるかぜのこの言葉で、見事にショウはこけた。 同時に、微妙に心に傷を負った。 ひとみが笑いをこらえているのが見える。 (・・ひとみ・・他人を笑う前に、その履き物、どーにかしとけ・・) 「じゃあ、何でオレを探すんだよぉ!?」 「それは・・ ・・きゃー!?」 刹那。 『それは・・』の続きを言おうとするなり、はるかぜの姿が、その場にいた全員の視界からフッと消失した。 「・・何ぃ!?」 慌てて辺りを見回すショウ達。 そしたら・・いた。 彼女と息ピッタリのあのディグダが一瞬にして掘り上げた落とし穴の中に。 「でぃぐ♪」 「い・・いたひ・・」 「・・大丈夫かよ?」 「腰打った・・あう〜・・」 ・・この2人(?)、漫才コンビだ。 ひとみはそう確信した。 みんなから起こる笑い声で、はるかぜの顔は真っ赤になっている。 「あうう・・これで436回目・・」 しかもさらに、落とされた回数と思われる数字をカウントしている! (・・ただ者じゃねえっ!?) 「えーっ!? 数えてるの!? すごいすごい! 覚え方とかあったりするのぉ!?」 「いやぁ・・ヒマだったもんで・・てへっ」 驚くショウと対照的に、あっさりはるかぜと打ち解けているひとみ。 はるかぜに例のワラジとサンダルを指摘され、飛び上がっている。 ・・が、 「ま、いっか! いつかのクリスマスには、朝起きたら、サンタさん用に出しといた靴下をなぜか履いてたコトもあったしぃ!」 と、あっさり片付けてしまった。 ・・さすが『ポジティブ』を絵に描いたような性格だけのことはある。 そう・・ポジティブ・・ ショウは知っている。 ・・いや、彼女を除いて、知っているのはショウただ1人と言った方が正しい。 ・・ひとみは、この世界の人間ではないという事。 3625年という、想像もつかない程の未来世界から、この時代へ来たのだという事を。 ポケモンが滅び、ヒトだけが栄え続け、時を刻む世界・・ そんな場所から、ひとみはやって来た。 試作タイムマシンに勝手に乗り込み、激しく無謀に操作してみたのが原因だったとか。 ・・当然、この時代へ来た当時は、ショウ達の言語など、まともに喋れなかった。 無理もない話だ。 彼女にとっては、古語にあたる言語なのだから。 ・・見知らぬ土地で、言葉が違って、生活が違って・・ ・・そして、ポケモンがいる世界。 ひとみがそれに溶け込むこと出来たのは、持ち前の『ポジティブ』な性格のおかげなのであった。 常に前へ向かい続ける心・・ 彼女には、それが満ち溢れていた。 だから、ここまで来れた。 第47回ポケモンリーグ 準優勝トレーナー・ひとみとは、彼女のことだ。    続    あとがき ポケライン#3、いかがでしたか? はるかぜさんのはるかぜもついに登場! 重大な秘密を知ってるっぽい口ぶりは、以後必聴! ・・と書くと、なんかすごい小説と勘違いされそうです(爆) ポケラインは、ポケアナポケプラよりさらに激しく、シリアスとギャグを書き分けているつもりなんですが、どうですか? なんというか、ポケアナは基本的にずーっとシリアスを保ち、たまにギャグ。 ポケプラは全体的にシリアスムードが低めのムード。 ポケラインは、シリアスとギャグが激しい折れ線。 ・・という風に、作品ごとに色々違いを見せているつもりなのでした。 ではでは。    次回予告 はるかぜが言い放つ言葉。 それはショウ達にいかに影響するか。 第4話「襲来(仮)」