――あの時は、こんな展開になるなんて考えてもいなかった。 ――けど、はるかぜに会った時から、何か起こりそうな気はしてたんだ・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ズシィィ・・ン・・ 擬音にすればそんな音を響かせ、村の大地が揺れた。 「・・な!?」 「なんなの!?」 「え?」 声を上げるショウ達。 彼らの前に、音の主は姿を現した。 ドリルポケモン・サイドン。 野生のものと見てほぼ間違い無い。 「うわわあああ! 野良ポケモンの襲撃だああ!」 「お助けぇぇぇぇーーー!」 素早く逃げ始める村人達。 腰が曲がってるお年寄りも、シャッキーン! と立ってダッシュしている。火事場のバカ力だ。 咆哮を上げるサイドンに、叫び、ショウが立ちはだかる。 「待て待て待て待て!! オレの村に何すんだ!?」    POKE IN ONLINE #4    「人間の犠牲・ケース1」 小さな村の入口付近。 ショウと、ひとみ、はるかぜの3人は、巨体のサイドンと対峙した。 「んー、ひとみがさ、一緒に盆踊りやってあげるから、大人しく帰ってくれないかなぁ・・?」 「いや・・ひとみ・・それは何か違う。いくら盆踊り2級の資格があるからといって・・」 ひとみは、未来都市・ユーノリアにいた時代『NORYO・BON−DANCE』というダンスバトルをやっていたらしい。 昔は、何がやりたいのかよく分からなくて、ありとあらゆるコトをやっていたのだそうだ。 『ぬいぐるみ道』など、ワケの分からないスポーツもしてたとか。 ルールを聞くに、現代のポケモンバトルと共通点が多く、彼女のトレーナーとしての才能は、その辺から来ているのかも知れない。 ちなみに、彼女が当時組んでいたぬいぐるみチームは・・ 『CAPTAIN・FALCON』 『MARTH』 『ZELDA』 『Mr.GAME&WATCH』 『Dr.MARIO』 『FALCO』 だったとか。なんかゲームが違うような気がしないでもないが・・ サイドンがこちらを威嚇するように、低い唸りを漏らしているにも関わらず、のんきなショウとひとみ。 はるかぜは自然と、たまらない気持ちになって来る。 (これから・・大変な『運命』が待っているんだよ・・ショウ) そして、そんな感情を振り払うかのように、彼女はモンスターボールを取り出した。 モンスターボールと言うより、聖なる光球のような、どこか不思議で、どこか神秘的なボール。 「『ルギ』、あの子を追っ払うよん」 言葉、ボール。 多くの点において、謎めいた部分を持つはるかぜ。 ボールを天高くかざした所で、ショウに止められる。 「おっと、『ルギ』の出番は、また今度ってコトでよろしくな!」 「え?」 さしものはるかぜも、完全にこけさせられた。先刻とは逆の格好だ。 「な・・なんなの?」 「でぃぐ?」 混乱し、頭の中に?マークを沢山浮かべているはるかぜを無視し、ショウはサイドンに向け右手を伸ばす。 わずかに光が散ったように見えた。 「お前・・さんざん道具にされたあげく、トレーナーに捨てられたのか・・」 「!!」 またもはるかぜは驚かされた形となった。 (やっぱり・・ポケモンの心、読んでる・・) 「あ、ショウはねー、なぜかあーゆー能力があるヤツなの。気にしなーい気にしなーい」 すかさずひとみが説明を入れてくれる。 「知ってるよ。ただ・・ね・・やっぱり『星狩り』が・・ ・・きゃーーー!?」 言いかけ、またもはるかぜの姿は、穴へと消えた。 「だ・・だいじょぶ?」 「あうう〜〜・・」 「でぃぐ♪」 穴を掘り上げるスピードからして、はるかぜのディグダ、かなりの高レベルのようだ。 一方のショウはといえば、サイドンとの対峙を続けている。 「・・そっかそっか。人間恨んでんだな・・」 ショウの言葉にレスを返すかのようにうなずき、低く鳴くサイドン。 その声は怒りと、憎しみ・・何より、哀しみに満ちていた。 ・・ポケモンとして生まれたばかりに・・ そう言っているようにも取れた。 「だから村を襲うのか・・それは勘弁してくれないか? ここ、小さくてもオレの故郷なんだ」 ――ショウは、ポケモンの想いを読み取れる。 「ショウは、ポケモンの想いを読み取れる・・あ〜、腰が痛いよおぉぉぉ〜〜・・」 「はるかぜぇ〜、まず穴から上がったら? ハイ、ひとみが引き上げてあげるからさぁ〜・・」 (ショウは、ポケモンの想いを読み取れる・・か。考えてみれば、これってすごい能力だよね? 世界でショウ1人しか持ってないんじゃないの? みたいな。それなのに・・) ・・それなのに、ほとんど驚きもせず、はるかぜは知っていたと言う。 (んー・・はるかぜ・・一体何者なのぉぉ!?) はるかぜを引き上げつつ、今さらのようにひとみは、彼女に対して疑問を覚えていた。 ・・その時だった。 ショウのボールが、ひとみの足元に次々と転がって来たのは。 「!?」 慌ててショウの方を振り向く少女2人は、次の瞬間、できれば見なかったことにしてしまいたいような光景を見てしまった。 「オレの生命だけで勘弁ってコトで・・ダメ?」 戦うための装備を全て捨て去り、サイドンに対し無防備を示すショウ。 ひとみとはるかぜは、青ざめるより早く、固まった。 その間も、ショウとサイドンのやりとりは続く。 「!?」 「何のつもりかって? 見たまんまだよ。 お前の苦しみとか悲しみとか憎しみとかそーいうの、オレが全部受け止めてやるよ。さあ」 ・・ショウは、自分の生命と引き換えに、村を助けようとしてる!? ひとみ達がそれを理解できたのは、数秒の後であった。 さらに、それから十数秒。 わずかな時間であったが、そこにいた全員には、まるで永遠のように長く感じられた。 やがて・・ サイドンは『・・フン』といったような鳴き声と共に、ゆっくりその場を去って行った。 「『お前のような人間は初めて見た』・・か・・」 この時、ショウは思ったはずだ。 人間・・人間はどうして、すぐポケモンを道具にするんだ・・と。 何で仲良くできないんだ・・と。 無理もない。 彼らはまだ、人の世の汚さを知らなすぎるのだ。 はるかぜもまた思う。 こうして穴に落ちている間にも、この星のどこかでは、数え切れないポケモンが、人間の犠牲になっていく。 ポケモン達の無念や、恨みや、憎しみ・・ それらが星にあふれている。 「早く・・時間がない・・」 無意識のうちに、彼女はそう口にしていたが、それを聞いていた者は、ひとみを除き、誰もいない。 「でぃぐ・・」    続    あとがき。(←何故『。』が!?) ポケライン#4です。いかがでしたか? とりあえず、解説をしておきますと、冒頭の1文は、後にショウがこの時のコトについて語ったモノ。という設定です。 後にポケライン2の『ライの回想』として引き継がれる要素ですね。 同様に#2の冒頭にあったものは、はるかぜのものだと言うことは、気付いた人、多いのではないでしょうか? さて、この後一体どんな展開になるのか!? 他のメンバーの登場は!? 皆さんなりに予想を立て、見事に裏切られてみて下さい。 ・・あ・・何か生意気な発言(爆) スミマセン。暗殺しないで下さいネ。 ではでは。        次回予告 立て続けに、さらなる襲撃者が現れる。 「お前にそれが務まるのか・・?」 第5話「運命の挑戦者(仮)」