少女は、逃げ出そうとする。 が、体力が完全には戻っていなかったらしく、泉から上がってすぐにヒザをついてしまう。 同時に、Kも。 「Kっ!」 「Kッ!」 オリサとスミレはKの方へ、ムウマ達は少女の方へそれぞれ駆け寄る。 幸い、Kの受けた傷は、致死的、致命的なものではなかった。 「・・!?!?!?!?」 が、その割出血だけは激しく、自分の手にべったりついた血を正視して、ビビったKは気絶しかけてしまう。情けなや。 ムウマ達は、必死で少女にこれまでのいきさつを説明しているように見える。 「あなた・・達・・」 やがて、少女が口を開いた。 予想通り、見た目以上に大人びた声。 「もしかして・・助けてくれたの・・?」    POKE IN ONLINE #8    「カードに表れる心」 時、すでに夕刻。 しかも、オリサ達や、手持ちのポケモン達では、怪我人のKを運ぶのはかなりの重労働。 見た目は細身でも、さすがに男だけあって重いのだ。 よって、この日、一行はテントを張って野宿することにした。 あの少女も一緒にだ。 「・・ごめんなさい。すっかり気が動転していたわ」 焚き火の前・・と言っても、他の3人よりもかなり火から離れているのではあるが・・で、素直に謝る少女。 第1印象が強烈だっただけに、オリサとスミレは少し安心した。 「みゅ、そーいえば、アナタの名前聞いてなかったね」 「ぼく、教えてほしーな♪」 「そう・・」 2人のテンションに、少々引いたようだったが、少女は自らの名を名乗る。 「・・リコ」 と。 「死神のような姿だな」 少し皮肉っぽく言うK。 普段からオーラが無い男だが、大怪我(自称)をしている分、今日はさらにオーラが無い。 とりあえず(ポケモン用)傷薬で応急処置してあるのだが、あくまで一時しのぎだ。 もしかしたら、K、変に動いて傷口が開かない様に、いつも以上に大人しくしているのかも知れない。 「・・あなたもね」 意味ありげな笑みを浮かべ、さらりと返すリコ。 (こっ・・この2人・・) (一触即発状態!?) Kとリコの間に流れる、異様なオーラ。 似たもの同士が発するこのオーラに、オリサとスミレは危機感を抱く。 「・・」 「・・」 流れる沈黙。 かなり気まずい。 「みゅ・・みゅーっ! なんかさ、みんなでトランプでもして盛り上がらないかにょ!?」 何とか場の雰囲気を明るくすべく、オリサがポケモントランプ・ルビー&サファイアを取り出した。 「そう・・それなら・・」 それを見たリコ、右手を空中にかざす。 すると、その手の中に、何も無い空間からカードの束が出現した。 「ルーン占い・・しましょ? フフッ・・」 (こっ・・この人何者なにょーーーーっ!?!?!?) ☆★☆★☆★ルーン占いのルール★☆★☆★☆ @ 25個のルーン文字を石に刻み(もしくはルーンカード用意)、それをシャッフルする。 A ひとつずつ、3つ引く。 B それぞれに描かれていたルーン文字は、それぞれ・・過去、現在、未来を暗示すると言われる。まぁ、タロット占いに近い。 ☆★☆★☆★では、リコリコ占いの続きをどうぞ★☆★☆★☆ 「フフ・・あなた達を占ってあげるわ・・」 「・・そうか」 「わー! 楽しみぃ!」 「ぼくもそう思う!」 カードをシャッフルし、リコは1枚をサッと手に取った。 「まず、過去」 カードを確認し、にまぁ〜っと笑い、他の3人に見せる。 何だか、アルファベットの『Z』を左右逆にし、右に45度回転させたような記号が描かれていた。 「これは『エオ』というの。『エイフワズ』や『ユル』なんかとも呼ぶわね。意味は、防衛力、死、注意深く計画する必要性・・ってところかしら。フフ・・あなたたちの過去、死なんてあるのかしら・・」 Kの脳裏に、バッ! と、1人の少女の姿がフラッシュバックする。 同様に、オリサもまた。 おぼろげに記憶に残る、無残に殺された両親の姿・・ 「フフッ。次は、現代」 もちろん、リコはそんなモノおかまいなし。 再び、カードを1枚引く。 「今度は『ラド』。『輪』を意味していて『ライゾー』ともいうわ」 カードに描かれた文字『ラド』は、アルファベット『R』に限りなく近い。 「意味は、旅、馬に乗る、騎馬、探求、移動、継続・・ ・・まぁ、このカードが出るのは当然かしら? 見たところ、あなた達は旅人だものね・・ウフフフ・・」 不気味な笑いを浮かるリコによって、続いて3枚目が引かれた。 「ブランク・・無限の可能性・・」 刹那。 「みゅーみゅーみゅー!! つーまーらーなーいーーーー!」 「トランプやろうよーーーー!」 「・・(ユリハ・・)」 しびれを切らしたオリサ達の猛抗議。 オリサの方は、つらい記憶を振り払う為に無理をしてテンションを上げているようにも感じられるが。 結局、哀れリコのルーン占い。ここで打ち切りとなるのであった。 そんなわけで、今度はババ抜き。 「みゅ。でも、リコは何であの泉にいたみゅ?」 と、オリサ。 こういうゲームをしていると、無性にそのたぐいの質問がしたくなるのは、ヒトの性であろうか、それとも彼女達だけであろうか。 「うん、ボクも知りたいな・・」 オリサからカードを引いたスミレ。 次の瞬間、叫ぶ。 「ああーーーーーーーー!! ジョーカー!? そんな〜〜〜!」 その声が収まったのを見計らい、リコは静かに口を開いた。 「私は、呪われた血を持っているから・・」 手札を持つリコの手が、少しこわばっているのが確認できた。 単に、炎でゆらめいているだけかも知れないが。 けれど、触れて欲しくない過去ということは、明らかだった。 「私の母さん・・名は、サリア・・」 言いつつ、リコは今スミレから引いたカードを、手札の中でひときわ目立つよう飛び出させる。 引いて下さいと言わんばかりに。 恐らくジョーカーだろう。 「あいつは・・私をいじめて、いじめて、いじめ抜いた・・ ・・だい嫌い・・だいっっ嫌いよ! けど・・父さんは・・優しかった。父さんがいてくれたから、私は・・」 ・・と、その時であった。 深い深い森のどこかから、爆発音が響いたのは。    続    あとがき K、実はそれほどすさまじく重傷ではない(爆) リコ、ちょっとコワイ。けど憎めない? みたいな描写に気をつけてみました。 でも、おかげでまたポケモンの出番が消えた・・(汗) なお、ルーン占いに関しては、専門のHPで調べて来ました。 ではでは。 前回の予告で書いた内容は、次回っぽいです。    次回予告 彼らの前に現れた強敵 それは、因縁の相手・・  第9話「死神の舞踏(今度こそ・・)」