――全てのはじまりが・・ここにいた。壮大な歴史の、創造主が―― 葉の隙間からのぞく空に、火の粉が舞い上がる。 野生ポケモン達・・キャタピー、ビードル、ナゾノクサなど・・が次々逃げ出して来る。 「・・山火事!?」 「みゅ! 私たちも、さっさと逃げる準備するにょっ!」 リコ達からトランプをふんだくり、リュックに戻すオリサ。 ・・瞬間。 現在地からさほど遠くない場所で、大爆発が巻き起こった。    POKE IN ONLINE #9    「人とポケモンと死神と」 違う・・山火事なんかじゃない! 全員に、嫌な・・嫌すぎる予感が走った。 「逃げよう!」 オリサが走り出し、スミレが続く。 ・・が、2人はすぐに立ち止まり、来た方を振り返った。 Kとリコが、動こうとしないのだ! 「みゅーーー! 何やってるにょっ! 早・・」 「リコを・・呼んでいる・・」 オリサを無視して、独り言のようにKはつぶやいた。 まるで、彼にしか聞こえない『何か』を聞いているかのように。 ちなみに、オリサ達は、その『何か』を、仮に『電波』と呼んでいる。 ・・一方で・・ リコの身体は、震えていた。 これまたオリサには分からない『何か』に恐怖し、立ちすくみ、唇をこわばらせている。 そこに、先刻の大人びたリコの姿は無かった。 恐怖におびえる、弱い、無力な少女の姿・・ 「とにかく逃げよう!」 「行くにょ!」 ここから見ても、火はかなりの速さで森を焼いている。 もたもたしているヒマなどない。 オリサがKの、スミレがリコの服の袖をつかんだ。 ・・刹那。 ――コ・・リコ・・リコ!―― 森のうなりのような・・おそらくKやリコが聞いていた『何か』と思われる・・おどろおどろしい声が、オリサやスミレの耳にもはっきりと聞こえた。 「見ツケタ・・リコ・・リコ・・」 リコがルーンカードを出して見せた時同様、一行の目の前の空間が突然歪んだ。 ただし、そこから登場したのは、ルーンカードなどという可愛い物ではない。 ・・死神。 正確には、そう呼ぶに相応しい容貌を持った存在。 長い髪に、黒いローブ姿の、30代くらいの女性。 リコにそっくり・・と言うかリコの母親? 「・・!!」 「リコの・・」 「お母さん!?」 さすがに、驚きを隠せない3人。 「見ツケタ・・リコ・・死ニナ・・サイ・・」 女性はゆっくり、地面に足を着けずにリコの方へ移動してくる。 その手に、魔法のように、燃え盛る業火を灯し。 「・・ッ!」 怯え切った様子で、Kの後ろに身を隠すリコ。 反射的にKは、逃げ出そうとした。 だが、出来なかった。 ケガが痛むのか、あるいは逃げ切れないと悟ったのかは分からない。 すぐに踏みとどまり、向き直るが、その時、すでに女性は、炎を纏った右腕を、Kもろともリコを狙い、振り上げていた。 「死ネ・・リコ・・死ネ・・ッ!」 (・・こいつ・・狂ってる!) 「ハクウィー!」 「フラット!」 Kを助けろ! リコを助けろ! オリサのハクリューと、スミレのブラッキーが攻撃をかけた。 「『しっぽでつく』!」 「『でんこうせっか』!」 2匹の技がクリーンヒット! ・・する直前、女性の手の炎は、巨大な鎌を形作った。 ・・死神の鎌。 「みゅ!?」 「ジャマヲ・・スルナ!」 ドン! 彼女が鎌を地面に突き立てる。 大爆発が巻き起こり、Kもリコも、オリサもスミレも、沢山の、罪無きちっぽけな野生ポケモン達も、みな無差別に焼いた。 ――嫌だ! 嫌だ! 死にたくないよ! ――助けて・・! ――人間なんかッ・・大ッ嫌いだ・・! 今、この瞬間に死んだ、沢山のポケモン達の声を、Kはとらえる。 「くそッ!」 思わず、そう叫んだ。 そして、立ち上がり、リュックから剣を引き抜いた。 偶然ゲットしていた、エアームドの羽から出来た武器『フェザーブレード』。 銀色の刀身が、炎を映してオレンジ色に輝く。 剣技なんて性に合わないし、決して強いわけではない。 しかし・・やらなければ、やられる。 ポケモンで戦っても、大切なポケモンを無駄死にさせるだけだ。 剣は、そう直感したKの選択の象徴であった。 「ハクウィー・・」 「フラット・・」 直撃を受けたハクリューとブラッキーは、虫の息だった。 それをボールへ戻し、自身のケガおかまいなしに立ち上がったオリサとスミレも、それぞれ武器を抜く。 サバイバルナイフと、リボン。 皆、全身のケガの痛みも感じないほど、この時はどうかしていた。 突如として反撃の態勢を取った一行に、女性は一瞬たじろぐ。 狙いは、その一瞬。 「よくもっ・・ハクウィーをっ・・森のみんなをッ・・!」 「フラット・・フラットをよくも! ぼくの・・」 「くらえッ!」 3人の武器が、一斉に女性の身体を斬り抜いた。 ・・だが・・ 全く、効かない・・ 「なに・・ッ!?」 「うそ!?」 「死・・ネ・・」 女性の腕に、再び炎が集束した。    続    あとがき ポケライン、最後の一桁! K小説で初めてポケモンが死んだ・・(汗) 嗚呼・・ 大変だ・・ とにかく、大変すぎる展開にっ! お気づきとは思いますが、『女性』ってのは、リコの母親・サリアのコトですね。 ではではっ。