そのポケモンは、圧倒的すぎる威圧感を放ち、ショウ達の前に立った。 「っひゃあーー! だ・・誰〜〜〜!?」 「我が名は・・ミュウツー・・」 ひとみの問いに、低い声で受け答えるポケモン・・ミュウツー。 ・・え? 「ポ・・ポケモンが・・」 「しゃべったーーーーー!?」 「・・色々なポケモンがいるもんね、中には喋れる子がいても不思議じゃないよ」 (でも・・この子は違う。この世界のポケモンじゃない・・) 次の瞬間、はるかぜの姿は穴に消えた。 「ショウ・・ショウとは誰のことだ?」    POKE IN ONLINE #11    「The Explorer」 「オレだけど?」 普段と変わらぬ口調で答え、ミュウツーに1歩近づくショウ。 無表情で彼を見据え、ミュウツーは口を開いた。 「その力、試させてもらおう!」 「!?」 セリフとぼ同時であった。 ミュウツーの身体がフワリと宙に浮き、地上へ、無数の『シャドーボール』を放つ。 「くっ! 『まもる』!」 暗黒の光弾が地面に叩きつけられる直前、凄まじい反応速度でショウの繰り出したバンギラスとバクフーンが、バリアを展開し防御する。 「ヒィ! 『マッハひこう』!』 一瞬できたスキを狙い、2匹の間からピジョットが突進。 かわされたが、狙いは至極正確だった。 「ショウ! ひとみもっ!」 「めっ!」 加勢しようとし、ひとみは、穴からはい上がって来たはるかぜに止められた。 「はるかぜっ! どうして!?」 「うん・・あれは、わたし達が介入していい戦いじゃないみたい」 でも・・ はるかぜは思う。 (でも、勝って。ショウ・・) 「でぃぐ♪」 刹那。 はるかぜは、嫌な予感を感じ、飛び退いた。 直後、元立っていた場所が一瞬で穴と化す。 初めて・・初めてかわした! 「438戦、437敗・・・・1勝・・!」 あまりのうれしさに、思わず涙を流すはるかぜ。 が、その足元に、新たな穴が。 「えっ」 はるかぜ、438敗目。 「お前、なんなんだよ!?」 いきなりの攻撃に、たまらずショウは不満をもらす。 ミュウツーの表情に、やはり変化はない。 感情があるのかさえ怪しい。 「先刻、お前は言った。ポケモンの苦しみを、悲しみを引き受けると」 「ああ。言ったよ。それがどうした・・?」 「その言葉に、嘘偽りはあるまいな」 「ないね」 「・・そうか」 無言のまま天にかざしたミュウツーの右手に、まるで星の力を集めたかのような緑色の光が集束した。 TVゲーム好きのKが見ていたら『ライフストリームだ・・』とか『幻光虫だ』などと、ワケの分からない事をほざいていたに違いない。 「これは、無念の死をとげたポケモン達の魂・・いわば、憎しみと悲しみと、生命の塊。私は『ヘイト』と呼んでいる。 「ヘイト・・」 「ひとみ知ってるよ! Hate・・憎しみって意味!」 「このヘイトを構成するポケモンの魂は、そのほとんどが人間によって不条理に殺された者。 強い憎しみの念は、消滅することなく、星にとどまる・・ その強さによっては、物理エネルギーにまで高まる。 ショウ・・お前に、ポケモンの真の憎しみを癒すことができるか!?」 言って、ミュウツーは右手を振り抜いた。 ヘイトの塊・・憎しみの、悲しみの塊が、ショウへ飛ぶ。 「ぐあぁぁっ!」 緑色の光に包まれ、エネルギーに圧迫され、内部で叫ぶショウ。 「受け止められるか、それを? お前の力で!」 「ショウ・・死ぬなーーーーーー!」 「死ぬなーーーーーーーーーーー!」 「でぃーーぐ! でぃぐでぃーぐ!」 ミュウツーと、ひとみと、はるかぜと、ディグダの声が重なった。 「なんだ・・これしき。オレは、悲しみを解放するんだ! ・・それがオレなんだ!」 どん! 一瞬、ショウからオーラがはじけたように見えた。 ヘイトは急速にその力を弱め、そして・・消えた。 「へへっ。ほらな・・」 「ヘイトを・・自身に取り込むことで中和したか」 「やった!」 「ホッ・・」 ひとみとはるかぜから拍手が起こり、ショウは照れくさそうに頭をかいた。 ミュウツーまでも、相変わらずの無表情ではあるが、数度手を叩き、言う。 「・・お前にならば、我が力、預けられる」 「・・え?」 「私の力を使え。そして『星狩り』を倒せ」 ・・『星狩り』・・ 生物とも、自然現象ともつかない存在。 巨大な光の塊のような外見を持ち、ヒトの歴史のずっと以前から、宇宙をかけめぐり、あらゆる星々、あらゆる生命を無差別に飲み込み、滅ぼして来たと伝えられるもの。 「ショウ・・お前達は知っているか? あれの正体を」 ミュウツーの問いに、一行はそろって首を横に振る。 「星狩り・・奴もまた、ヘイトの集合体だ。もっとも、あれだけ巨大なものが自然発生するはずはないがな」 「で、オレに、それを解き放てってのか?」 「そうだ」 「乗った!」 「フフ・・私もまた、その為に創られた存在だ・・」 「なにそれ?」 「フン・・続きはまたいつか話そう」 その夜・・ ショウとひとみが眠りについた後の、K家のメインホールに、ミュウツーは1人(1匹?)たたずんでいた。 「ミュウツー」 どこからともなくはるかぜが登場する。 「お前か」 「なんで・・『星狩り』の正体を知ってるの?」 「・・フン。それだけではない。奴の核が何なのか、この世界の歴史はどうなっているのか。私は全てを知っている」 「どうして・・? キミは、私の知ってる歴史にはいないはずだよ?」 「歴史が必ずしも、敷かれたレールの上だけを走ると誰が決めた?」 「・・ん・・」 「安心しろ。私はお前の味方だ」 夜は長い。 そう。光の量だけ、そこには闇があるのだ。    続        あとがき いきなり、ストーリーが展開! ポケライン#11でした。 この辺は、速い速い。 ミュウツー、結構人間臭いかも(笑) しかし、このままのペースだと、意外と早く終わりそうな・・ ではではっ!      次回予告 大都市ヒューンへ来た一行。 そこで、彼らはタカマサの力を見る。 第12話「株式会社ポケアーツ(仮)」