「『星狩り』を倒すっても、どうすんだ、ミュウツー?」 「・・今はまだ時期ではない」 ショウの所持ポケモンということになっているミュウツーが言った。 「・・なんだよ、それ」 次に、はるかぜ。 「ヒューン。ヒューンへ行くんだよ」 ヒューン・・ この近辺で最大規模を誇る機械都市。 「そこで、どうにかなるの?」 はるかぜの答えはない。穴に落ちたからだ。 「・・いたひ・・」 「・・439敗目・・で合ってるよね?」 「合ってる・・。ま、それはおいといて・・ 大丈夫。わたしが真実へ導いてあげる・・」    POKE IN ONLINE #12    「シスター・レイの下で」 無数の巨大ビルが立ち並ぶヒューンに、ショウ達がかつての旅で訪れた時とは明らかに違う部分があった。 「なっ・・なんだアレ!?」 「うっひ〜〜・・」 シティ郊外の広場に、とてつもない数の鉄骨に支えられた、とてつもない大きさの機械砲台が、空に 向いて設置されているのだ。 「なっ・・何ですかぁ、アレ?」 近くの通行人に聞いてみるひとみ。 「え? 知らないの? ポケアーツが開発したキャノン『シスター・レイ』だよ! 何でも『星狩り』がこの星に落ちてくるから、あれで撃墜するんだってさ! 星の存亡をかけた、世紀のプロジェクトだろう!?」 『星狩り』!? ショウ達は、互いにうなずき合った。 「行こう!」 「うぃ!」 「でぃぐ!」 シスター・レイに群がるヤジ馬の数といったら・・ それはもう、文章で説明しろと言われても無理だった。 土台付近、周辺家屋やビルの屋根、屋上などなど、黒山の人だかり。 上空には、警備のヘリとTV中継のヘリが入り乱れて飛んでいる。 「さあ、まもなく世紀の作戦が始まろうとしております!」 そこかしこのTVレポーターもやかましい。 「うわーーん! ユーノリアよりひどいよーーーー!」 「いくら何でも、人いすぎだって!」 「・・当然だ。直撃すれば、この星も死ぬ。逃げ場はない」 「だから、シスター・レイが『星狩り』を倒す事を信じて、見届けようってわけだね」 「でぃぐ」 「きゃー!」 ・・と、その時だ。 「ん?」 ショウは、近くのベンチに座っている4人組に気がついた。 青い服、緑の服、黒い服の少女3人。 そして、自分より年上っぽい、黒い服の少年。 「あれ・・」 その中の1人、少年に見覚えがある。 彼は・・ 「K!」 叫ぶショウに、黒い服の少年・・そう、Kも気付いたようだ。 「・・ショウか!?」 「やっぱりK!」 「聞いたぞ、つうか見てたぞ。ポケモンマスターの夢をつかんだな!」 「いや〜、照れる!」 そこへ、ひとみが割り込む。目が輝いている。 「ショウ、この人Kさんだよね!?」 「あ、そうだけど?」 「かぁーーーーーーーっこいぃーーーーー!」 刹那のスピードで、ひとみはKに抱きついた。 「なっ!?」 「すっごぉぉぉぉい、かっこいーーーー! ・・あ、初めましてKさん! ひとみの名前は、ひとみでーす!」 「いや、言ってる・・」 「ポケモンリーグ準優勝でーす! やっほー!」 その言葉に、Kは手を叩いて見せる。 「ああ・・知ってる。あの決勝戦は惜しかったよな」 (ユリハと一緒に見た最後のTVは、あの試合の中継だったっけ・・) 「キャー! Kさん見ててくれてたー! わーいわーい!」 うれしさのあまり回転して喜ぶひとみ。 「プッ・・」 「フフ・・」 同時のタイミングで笑いをこらえる、はるかぜとリコ。 「すごい・・」 「みゅ」 ひとみのすさまじさに唖然とするスミレとオリサ。 「・・下らん」 言い切るミュウツー。 で、ショウ。 ・・星を守る者9人。うち7人、ここに集結・・ 「はぁーい! オリサだみゅー! 好きなのは、泳ぐことと甘い物だにょー!」 「で、オレはリーグチャンピオンのショウ! よろしくー!」 互いの自己紹介で盛り上がっていた時・・ 「おや・・? リーグチャンピオンのショウ氏に、準優勝のひとみ氏では?」 不意に、彼らの背後から声が飛んだ。 振り返ると、立っていたのは1人の中年男性。 青い背広に身を包み七三分けギザギザヘアーの、見た目40代の彼・・ 「Mr.タカマサ!」 7人のうち、何人かの声が重なる。 あまりにも有名なポケモン企業『ポケアーツ』のカリスマ社長。 人当たりはよく、マスコミにもよく顔を出す為、一般市民にも『Mr.タカマサ』の愛称で親しまれている。 が、ポケアーツを起こす以前の経歴は不明という、世界第1級の超・有名人だ。 「すっごぉい! 本物だ!」 「ええ、本物ですとも」 ニコッと笑ってみせるタカマサ。輝いている。 「オレだってチャンピオン!」 「ひとみ、2位!」 対抗するこの2人、あんまり輝いてない。 タカマサは、2人に向き直り、言った。 「こんな所で、あの最強トレーナー2人にお会いできるとは光栄です」 「いやぁ! こちらこそ、おたくのボール、いつも使ってますハイ!」 「ひとみもです〜」 「いやぁ、それはどうも・・」 物腰やわらかに答えつつ、他のメンバーをチラリと見回すタカマサ。 5人のうち、3人。 目が合った時、彼の表情が一瞬変化した。 はるかぜと・・ スミレと・・ リコ・・ Kとオリサも気付いたが、その真意を計り知ることはできない。 「・・そうだ」 と、タカマサ。 今思いついたように、シスター・レイを見上げる。 「こうして会えたのも何かの縁。特別に、作戦本部の見学でもいかがですかな?」 「もちろん行きます!」 『・・チャンピオンでよかった・・』 この時、ショウは心から思った。    続    あとがき さらに急展開してきたポケライン! ちなみにシスター・レイ。 某大作7に、同名のキャノンが登場してます。 最初はジュノン。のちミッドガルに移送され、2体のウェポンをブチ抜いて、大空洞のバリアも消した優れものでした。 ・・というか、ポケラインの話に戻って・・ キャノンで『星狩り』と対決するというのは、開発初期段階から、物語の見せ場のひとつとして打ち立てていたシーンでした。 当初は『ミヘン・セッション』とコードネームが(核爆滅) このシーンを書くと「ああ・・ポケラインもここまで来たか」という気分です。 ではでは。    次回予告 シスター・レイと『星狩り』の激突。 星の命運をかけた日が始まった・・ 第13話「最期の日(仮)」