シスター・レイ支柱の階段をひたすら登り、警備員のチェックを受け、ついに一行は作戦本部へ到着した。 「うわー!」 「すっごぉい!」 「みゅー!」 「ユーノリアもびっくり!」 たまらず驚きの声をもらす元気組。 下に集まった人間がゴミのように見えるこの場所で、沢山のスタッフがコンピューターと格闘し、また、せわしなく左右へ動いている。 足場が金網なので、真下はあまり見たくない。 シスター・レイ下部から、ケーブルを伝い、緑色の光が砲身へ送り込まれている。 「あの光はっ・・まさか・・ヘイト!?」 思わずショウはつぶやいた。    POKE IN ONLINE #13    「『星狩り』対ヒト」 「ヘイト?」 「にょ?」 「あ、K達は知らないっけ。実はかくかくしかじか・・」 「へー、そうなのか・・ ・・ん?」 興味深くショウの話に聞き入っていたKは、ふと、あることに気がついた。 「はるかぜと、スミレと、Mr.タカマサが消えている」 「れ? 本当だ」 「どこ行った?」 「あ、社長は最後の調整で、お2人はトイレの用事で、下へ行きましたよ」 聞いてもいないのに答える、近くのスタッフ。 ・・怪しい。 ・・そして・・ いよいよ、星の存亡をかけた瞬間が始まる・・ 「10」 作戦本部からマイクでタカマサが言い放つと、場の雰囲気は一転する。 その様子を見下ろし、タカマサは空を仰ぎ、再び時計に目をやった。 「9」 「シスター・レイ、エネルギー充填率98%!」 「第3エンジンの出力に、予定値とのズレが若干見受けられますが、誤差の範囲内です」 タカマサにより、1秒ずつ刻まれるカウント。 集まった全ての人々が、星に祈りを捧げている。 「5」 「今さらかも知れないですが・・」 ショウは、隣のタカマサに声をかけた。 「『星狩り』はヘイトなんでしょう? このキャノンから撃つのもヘイト・・それは大丈夫なんですかい?」 「・・」 答えはない。 「3」 代わりに、カウントが返される。 何気に、ひとみ、Kにぴったりくっついているではないか。 困り顔のKとのギャップが面白い。 「2」 この時、リコは、星の行く末とは別のことを考えていた。 何か、とてつもなく嫌な感覚・・ その正体が何であるのかは、本人にさえ分からない・・ 「1」 (神様〜〜・・) 祈っていたスミレは、あるモノを見て、ハッと顔を上げた。 はるかぜの身体から、うっすらと光の粒が浮かび上がっている光景・・ 「わたしに・・力を・・」 「でぃぐ?」 「0」 ゴォッ! 刹那、地面にびりびりと衝撃が走る。 同時に、空が光りだす。 「『星狩り』!」 「ついにこの星にも・・」 やがて、そいつは人々の前・・この星の前に姿を現した。 文字通りの、緑色の光。 天を覆う『星狩り』。 「・・おかえり」 タカマサが、小さな声で・・誰にも聞こえない声でつぶやいた。 「みゅああーーーーーーーっ! 本物ーーーー!!」 「(ユリハっ・・)」 ぎゅっ。 知らず、くっついていたひとみの手を握り締めるK。 ポッと赤くなるひとみを見て、焦る。 焦るったら焦る。 (しまった・・間違った・・!) 怪物は、次第に地表との距離を縮め、強い風圧を叩きつけてくる。 「シスター・レイ、エネルギー充填率100%!」 「いつでも発射できます! ご命令を!」 「まだだ! 十分に引き付けて撃つ!」 「はっ!」 さらに、数秒・・ シスター・レイ支柱のどこかから、バキッという嫌な音が響いた瞬間。 「充填率105%!」 「撃て!」 星の運命を背負い、タカマサの命令が放たれた。 擬音ではとても表現できない音。 「わーーーーーーーーーーーーーっ!」 自分の叫びすら聞こえない。 視界の全てを、緑を通り越して真っ白に染め上げる光。 2つのエネルギーがぶつかり発生する、すさまじい衝撃・・ 彼らは目をつむった。 何も見えない、何も聞こえない。 ・・やがて・・ 「・・終わったようだ」 タカマサの声で、ショウは我に返った。 「ほっ・・『星狩り』はッ!?」 仲間達や、多くの人々と同じように、バッと空を見上げる。 ・・そこには、数分前までと同じ、澄み切った青空が広がっていた。 キラキラと、緑色の光の粒を散らしながら・・ 誰も、何も喋らない。 倒れたマイクスタンドを起こし、タカマサが沈黙を切り裂いた。 「ありがとう。 諸君のおかげで『星狩り』の恐怖は去った」 と。 巻き起こる大歓声。 耳がおかしくなりそうだ。 だが・・ 「まだ、ヘイトは消えたわけじゃないな」 「フフ・・そのようね」 Kとリコの気になる会話。 「えっ!?」 うっすら予想はしていたが、驚くショウ。 「当然だ。ヘイトにヘイトをぶつけた所で、消すことはできん」 「キミがいないと倒せないよ」 さらに気になる、ミュウツーとはるかぜの言葉。 人々が一時のお祭り騒ぎに酔いしれ、うかれ、騒いでいる時・・ 彼らだけは、複雑な表情なのであった・・    続    あとがき ついに、このシーンも書いてしまいました! ポケラインの前半戦も終わってしまったかと思うと、なんか寂しい。 次回からは後半戦に突入です! 後半は、もうバリバリと、今まで謎だった部分が種明かしされていきますよ! ではではっ。    次回予告 去ったかのように見えた恐怖。 この後、彼らの取った行動は・・ 第14話「本番の幕開け(仮)」