その日の午後・・ 「ふう・・」 ヒューンから少し・・いや、そこそこ・・いやいや、微妙に離れた、先日リコの件で騒ぎがあったあの森の中に、再びKの姿があった。 人々がお祭り騒ぎをしているってのに、こんな場所に1人で来ている人間は、世界広しといえども、彼1人かも知れない。 「ミュウ・・ユリハ・・」 ふと振り返る。 ・・その視界に、オリサとひとみの顔のドアップが飛び込んで来た。 「だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?!?!?!?」 世の中広しといえど、そんな少女は彼女達だけかも知れない。    POKE IN ONLINE #14    「明かされた真実 〜K」 「なっ・・何だ、2人共ッ!?」 「何だかんだと言われたら!」 「答えてあげるが世の情けみゅ!」 ひとみ&オリサ。 実に息がピッタリ合っている。天性だろうか。 「みゅーっ! Kばっかずるいずるい! 私だって、記憶の手がかりを探したいにょ!」 「ひとみは、Kさんと一緒にいたいなー、なんて☆」 「はぁ・・」 深々と、Kはため息をついた。 「で、さっきから気になってたけど・・ユリハさんって誰? ひとみ、知りたーいっ!」 「私も知りたーい! にょっ!」 2人の教えて攻撃。効果は抜群だ。 「はぁぁ・・」 仕方なさそうに、手近な切り株の上に腰を下ろすK。 「みんなには黙っておけ。恥ずかしいからな」 「はーい!」 「みゅいっ!」 「俺は・・ミュウっていう幻のポケモンを探している。なぜだと思う?」 「・・」 「うちの両親、ポケモン学者でさ・・ある日、俺にあるモノを見せてくれた。 この森で見つけたっていう、今までのどんなポケモンのそれとも違う、全く新種のポケモンの細胞サンプル・・ もちろん、難しいことは分からなかった。 けど、やっぱりそういう事を聞かされると好奇心が出てな。 トレーナーになって・・この森を探検して、ミュウってのを見てみたくなった」 「そうだったんだ・・」 「ユリハさんは?」 「これからだ」 まだチラチラと光の舞う青空を仰ぎ、Kは続ける。 「で、その研究結果の発表ってことで、親父とお袋は、ヒューンのポケモンサミットに出ることになった。 ・・その時さ。 家事を留守番の俺1人に任せてはおけんって言われて・・ 女の子が1人、ウチに来た。 先代の頃ウチに仕えていたお手伝いさんの一家の子で、ユリハっていった」 「その人が・・」 「女の子は苦手だし、最初は適当に理由つけて帰ってもらおうかと思った。 けど・・仲良くなった。世の中、不思議な事もあるよな。 俺がミュウの話とか熱く語っても、嫌な顔ひとつしないで、笑って聞いてくれた・・ 森にミュウを探しに出る時も、いつも一緒に・・ 俺も、あいつのおかげで、ショウの時以来初めて、心からの笑いを取り戻すことができた・・ そんな頃だったな。 ヒューンから戻る途中で、親父とお袋が事故で死んだ知らせを聞いたのは。 さすがにへこんだな・・あの時は。 けど、あいつは言ってくれた。 私が、あなたの支えになります・・ってな」 Kの頭が、角度を落とす。 視線が下を向く。 「けど・・」 声のトーンも、急激に落ちた。 「・・死んだよ。 あれは、何回目かの探索の時だった。 特製ミュウ・レーダーが、針を振り切るほど強く反応した。 2人でその反応場所へ走った。 そしたら・・女の子が1人いた。 ミュウ!? 思わず叫んだ。それがまずかった。 相手は、俺たちを見ると、おびえたような声を上げて、こっちに手をかざした。 エネルギー弾みたいな・・そんなのを撃ってきた。 足がすくんで、逃げられなかった・・そしたら・・あいつ・・」 Kが、涙を流している。 目の前を見据え、うっすら笑ったまま。 感情があるのか怪しかった彼が。 「俺の・・盾になった」 ハッとするオリサとひとみ。 「・・死に際に、あいつは言った。 俺の為ならば・・死ぬのは怖くないと・・ 笑ってだ! 笑顔でそう言った!」 ・・切ない・・ 「自分の受けた傷は気にならなかった。 俺は、あいつを背負って帰って・・あいつの好きだった場所に埋めて・・ようやく思い知った・・ ユリハはもう笑わない! いや、笑えない! もういないんだッ! 俺のせいだ・・俺のせい・・!」 声を押し殺して泣くK。 悪いことを聞いてしまった・・ 2人にのしかかる罪悪感。 かける言葉も見つからない・・ 「神よっ!」 不意にKは立ち上がる。 空に向かい、悲痛な声で叫ぶ。 「あんたは残酷だな! なぜ俺の方を殺してくれなかった・・!? 俺だけを・・俺だけを・・なぜ死神なんかにッ!」 ・・死神・・? 「みゅあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?」 「しっ・・死神っ!?」 ずささあっ! これでもかという程の反応を見せて引いた2人に、Kも驚かされ、我に返る。 「って・・そんなに、驚くことか?」 彼の声は、もう、普段のトーンに戻っていた。 「みゅ! し・・死神って・・リコと同じとか言うにょっ!?」 「そうだ。もともと隠す必要性もなかったのかも知れないな。 俺は確かにユリハの犠牲で助かった。が、あの時、俺もまた同様に重傷を負ったのも事実。 なってみて初めて分かったが、生きるか死ぬかの重傷を負った時、魂というか何たるかの存在が不安定になって、いわゆる『死神』になることがある」 「Kさん・・」 「魂が半分、星に還りかけているせいか、ヘイトの思念や、ポケモン達の声もわかる。 死神とは言うが、人を呪ったり、殺したりする存在じゃない。 ただ、普通の人間より少し、あの世に近い場所にいるだけだ。 中世には、死神の能力が悪魔の力と考えられ、大規模な死神狩りが行われたこともあったらしい。 今でも、町で堂々と『死神です』なんて名乗れば、どうなるかわかったことじゃない。 俺やリコは、だから隠して来た。 けどな・・」 言いかけ、背後を振り向き、Kの動きが止まった。 「みゅ?」 「どうしたの、Kさん?」 Kは震える手で、モンスターボールを取っていた。 「・・あいつだ・・。あいつが、いる・・」    続    あとがき はーい! 14です。 今までの謎・死神編とユリハ編が一気に解明されましたねぃ。 つまり、#10の後半の、Kとリコの会話、あれはKが、自分が死神であることを黙っていて欲しいとリコに頼んでいるといったイメージなんですねハイ。 その他、あの時この時Kが見せた、霊感めいた能力も、リコを1発で死神と見抜いたのも、全て説明がつきます。 Kとユリハに関しては、番外とかで語るスキ間がありますね。 ではではっ。        次回予告 ユリハの仇が姿を現した。 3人が一丸となり立ち向かう・・ 第15話「MEW BATTLE(仮)」