「ひとみ・・」 仲間達が引き上げたのを見計らい、ショウはひとみに声をかけた。 「なーに?」 「えー、その・・アレ『星狩り』を倒した時、ひとみは・・」 ショウ、いくらなんでも単刀直入。 続きを彼が紡ぐ前に、力無く笑うひとみ。 「消えちゃうのかな・・? ひとみ・・」 「わかんないけど・・多分」 「やっと・・ひとみは何がしたかったのか、わかったような気がしたんだけどねぇ・・」 ひとみの言葉の1つ1つ・・ いずれも、普段の彼女から想像もつかない程、つらそうだった。 それでいて、無理に笑顔で振舞おうとしていた・・ 「でも、倒すよ『星狩り』! ひとみの生命ひとつ、星が救われるのに比べたら安いモンモン!」 「ひとみ・・」 「迷わないで。ショウはショウの戦いをすればいいよ」 真っ直ぐにショウを見つめるひとみの笑顔が・・素敵だった。    POKE IN ONLINE #17    「明かされた真実 〜ふたりの姉妹」 【一方、オリサとキリカの客室】 「思い出したにょ・・私たちとミュウツーを、はるかぜが知らない理由が」 つぶやくオリサにつられ、キリカもまたうなずいた。 「違う世界から来たんだよね、おねえちゃん・・」 「みゅ・・」 そうなのだ・・ この、歴史がループする世界とは別の次元、別の宇宙のどこかには、こちらの時間の流れに影響されない別の世界が無数に存在するはず・・ 【男どもの客室】 「私を作った科学者夫婦・・あの姉妹の親は、この世界の存在と『星狩り』の成すループを、ふとしたことで知ったのだ。そして、この世界を救うことを考えた」 ショウとKの客室では、決戦を前にし、ミュウツーが彼らに真実を教える。 「ミュウ細胞から作り出されたこの私は、一時的にではあるが、大量のヘイトを自身に取り込み、抑えることができる。 私が奴の身体を構成するヘイトを弱め、そのスキにショウが核を滅す。そういう作戦を、私は主から聞かされた」 「なるへそ、オレの役目はそれか・・」 「・・1つ質問がある」 多少おどけた様子で挙手するK。 もちろん、ミュウツーも負けない。 「K議員、発言を許可する」 「キリカはどう見ても人間だ。それなのになぜ、俺のミュウレーダーが反応を示す?」 「それか・・」 数秒ためらい、ミュウツーは星空を仰ぐ。 「主は、科学者としての欲望に負けた。 あれは、我が世界とこの世界を結ぶワープ装置か完成したのちだった。主は、自分の2人の娘のうち、片方にミュウ細胞を注入してみたのだ」 「私は・・たくさん、たっくさん反対したけど・・その声は父さん達には届かなかったみゅ・・」 泣きそうな声でオリサは言った。 その頭をなでて、優しく諭すキリカ。 「泣かないで・・おねぇちゃん・・泣かないで・・ あたいも、おねえちゃんに謝らなくちゃだから・・」 「・・みゅい?」 「手術が終わって、目が覚めて、父さんと母さんがあたいを見てた・・ それを見たら・・急に頭がおかしくなって・・あの時は、ミュウの力、うまく使えなくて・・」 キリカもまた、瞳を涙に濡らして・・ 「気がついたら、2人とも・・動かなく・・なってた・・」 「あっ・・」 急激に呼び覚まされる、オリサのいつか見た記憶。 キリカを心配し、こっそり実験室のドアの隙間から、様子を見た時の光景。 彼女がドアを開けた時は、まさに、キリカから暴走したミュウの力が、2人に直撃した瞬間・・ 昔から覚えていた記憶の、謎だった部分・・否、もしかしたら、オリサの精神が意図的に封印したのかも知れない部分・・ それは、両親を殺した犯人が、実の妹であったという真実。 「ごめんね! おねえちゃん!」 うわっ! と泣いて、オリサに抱きつくキリカ。 「・・泣かなくてもいいんだみゅ・・キリカは悪くない・・悪くないんだにょ・・」 ちょうど、先刻とは逆の格好だ。 「完全に思い出したにょ・・ あの後、私は、キリカー! って叫んで、ドアを開けて・・」 「ひっく・・あたい、何が起きたか分からないまま、おねえちゃんに肩をつかまれて・・」 「その時、私たちの足元の床が、いきなり光りだしたみゅ・・」 「吹き飛ばされた主の身体がコンピューターに叩きつけられたはずみでな、ワープ装置が作動してしまったのだ。 その数分のち、いつも通り自動的にカプセルから出された私は、部屋の光景を見た時、そう悟った」 「だから2人共この星に来て、しかも記憶を失ったわけかよ」 そうだ、とうなずき、ミュウツーは、紅茶を入れていたKに、自分の分も頼む。 「・・ほら」 「悪いな」 「緑茶だ」 「・・そうか」 Kのささやかなイヤミなのか、ティーカップに入れられて、レモンと砂糖まで添えられた緑茶をすすり、さらに続けるミュウツー。 「キリカは、ミュウ細胞の証である赤い目、そして、あの時点ではまだ不慣れなミュウの力を持っていた」 「なるへそ、そんなんでワケも分からず人里へ下りていきゃ、いじめられるわな」 「・・あの時の、人間を拒む様子はそういうことか・・」 Kが、まともな紅茶のティーカップに口をつけようとした、その時だ。 「ねーねー、KKKKKKKKKーーーーー!」 廊下から、ドアを秒間16回ノックしまくる音と、スミレの声。 「スミレ?」 「・・俺に何か用か・・?」 首をかしげつつも、Kはドアを開けてスミレを迎える。 刹那・・ バチィィッ! という電気の弾ける音と共に、Kの身体が床にドサッと倒れた。 「何っ・・スミレ!?」 スミレの手に握られているのは、スタンガン。 「何のつもりだッ!」 「やめて!」 ボールを構えたショウを素早く止めるスミレ。 「Kの生命が惜しいなら、ぼくの言うことを聞いて!」 「スミレ・・仲間だと思ってたのによ・・」 吐き捨てるようにもらし、ショウはボールを戻した。 スミレ・・何のつもりだろうか。 「オレに・・どうしろってんだ?」 「一緒に来て。ポケアーツ本社・・」    続    あとがき はうあぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁあっ!? スミレどないしたん!? な感じの今回でした。 彼女の意図は、すぐにわかります。 基本的には、味方希望キャラですので、本当に悪者なはずないですしねぇ(笑) そして、姉妹の真実もネタバレ! コレ、かなり初期から考えてたネタのひとつです。 ミュウツーとからめたり色々・・ ではではっ。      次回予告 ショウ達の前に現れたタカマサ。 一方で、K達はポケアーツへ乗り込む計画を立てる。 第18話「襲撃(仮)」