窓の外に広がる、広大なヒューンの夜景。 目前に立つタカマサ。 仲間から引き離されたショウとキリカの2人は、スミレによって、ここポケアーツ122F・社長室へ連れて来られていた。 「・・何のつもりだよ」 低くつぶやくショウ。 タカマサは微笑を崩さない。表向き紳士的な、かつ心の中に野心を秘めた・・そんな顔だ。 「・・『星狩り』を倒すキーパーソン・ショウ。そして、ミュウの遺伝子を持ったキリカ」 (・・え?) ショウの頭にクエスチョンマークがよぎる。 自分達さえ、今日知ったばかりの、キリカの出生の秘密。 なぜタカマサがそれを知っている・・? 「まさか・・スミレ・・」 「うん・・ぼく、スパイ・・」 下を向いたまま、スミレは静かにつぶやいた。    POKE IN ONLINE #18    「9人目」 「ポケモンシンガーになりたかったんだけどね・・ でも、ぼくの両親、交通事故で死んじゃって・・ 親戚いなくて、孤児になったのを、社長に拾ってもらってさ・・」 (なるほど、それでスパイにされたわけかよ) 「スミレを送り込んだのは正解だった。長年欲していた、ミュウの力をついに見つけたのだからな。 あのルギアすら予想していなかった・・な、ルギアよ?」 タカマサが天井へ言葉を飛ばすと同時に、天空から彼女が飛来する。 半透明体として天井をすり抜け、急速に実体化して着地する、銀色のポケモン・・ルギア。 そう、はるかぜ。 「はるかぜって呼んでって言ってるのに・・」 「悪かった、はるかぜ」 「さてとっ、ショウにキリカ、いらっしゃいませぇ」 人間の姿に戻り、いつもの調子ではるかぜは言う。 「はるかぜ・・あんたもグル!?」 ここへ来て、初めて口を開くキリカ。 「うーん、おおまかに言うと正解。 わたしは『星狩り』を倒したい。けど、1人の力じゃまた負ける。だから、Mr.タカマサに取り入ったんだ。 それから、ショウの力も必要・・ やっと・・やっと役者がそろったね。ここにいるみんなで力を合わせれば・・」 「はるかぜ・・そういう魂胆だったのか」 「そういうことだ」 うなずき、タカマサはショウに歩み寄った。 「できれば、私の力だけで・・言い換えれば、シスター・レイだけで倒したかった・・」 「ヘイトにヘイトをぶつけたって無理っしょ」 「だから、君達の力を借りたい。 悪い話ではあるまい。私と君達の目的は同じのはず。ひとつ力を合わせようじゃないか。 できれば他人を巻き込みたくなかった・・だが、ここまで来ては、星はそうとすら言わせてくれん」 「・・あたいら2人を呼んだのは、そーいうこと?」 ちょっと予想外の展開であった。 なぜなら彼らは、タカマサが、 『クックックッ・・私の命令を聞け。さもなくばお前達の命はない』とか言って来ると思っていたからだ。 「ショウは奴の核を倒す。ミュウツーがヘイトを抑える。 そして、スミレの得た情報によると、ミュウツーと同じ、ミュウの分身であるキリカにもそれができるはず・・だから君達だけを呼んだ。 こうなっても、他の、とりえのない仲間達は巻き込みたくない」 その時だ。 パン! 分厚い窓ガラスが、突然砕け散った。 「それはヒドイですね、Mr.タカマサ」 「みゅっ! とりえがないなんて失礼にょ!」 「でぃぐ!」 そう、ポケセンに置き去りにされたはずのK達。 「Kッ!」 「おねえちゃん!?」 「ディグぅぅぅぅぅ!? ここで掘らないでぇぇぇ!!」 各自の飛行ポケモンに乗って、さっそうと社長室へ突入する。 「たとえとりえがなくったって、みんな一生懸命に『自分』を生きているんですよ」 「何っ!?」 さすがのタカマサも、これには驚かずにはいられなかった。 「んー、ひとみ的にはね、あと3つくらいサーチライトを増やした方がいいと思うよ!」 「フフ・・」 約2名、何やら余裕。 「みんな!? どうしてここが!? みんな気絶させたはずなのに!」 仰天のあまり、目を白黒させるスミレ。 「マジックのタネは、そこさ」 彼女の反応を確認し、満足げな笑みを浮かべたKは、ショウのベルトを指差した。 「オレのポケモン!?」 あわててショウは、自分のボールをチェックしてみる。 手持ち6匹+ミュウツーの、合計7匹・・ではない! いつの間にか8匹に・・レアコイルの入ったボールが増えているのだ。 「ま、いわゆる盗聴電波って奴さ。 こーーーーーっそりと、パソコンからショウのベルトに転送した、と。 そいつが、ユリハの形見のポケモン・イプシロン。たった1つ、あいつの遺した・・な」 「ショウ! それにみんな! ひどいよぉ! とりえがなくたって、ひとみも戦いたい! 星の危機だよ! 人もポケモンも、みんなみんな死んじゃうんだよ!」 「・・戦わなければ結局死ぬし・・ね。フフッ」 「Mr.タカマサ! 止めてもムダムダ! みんなで戦うにょ!」 心強い仲間の言葉が、ショウ達にはありがたかった。 「だよな・・やっぱ、みんないないと気分が変だし」 「あたいも・・やる! 罪をつぐなう意味でも」 キリカはKの前に立ち、深々と頭(こうべ)を垂れた。 「ごめんなさい。あたい、あの人の分までがんばります・・」 「・・ああ」 たまらず、夜景の方に視線を変えるK。 「ユリハ・・どうやら、本当のミュウは違う世界にいるらしいな・・ ごめんな・・ホント、バカなことに・・バカすぎることにつき合わせちまったな・・ ・・キリカを恨まないでくれないか? こいつもこいつなりの事情があった。 その代わり、俺のことは、呪い殺してくれてもいいから」 「Kさん・・」 「フフ・・恋人1人守れなかった俺が、星を守ることになるとはな」 再びKは、タカマサの方へ向き直る。 「そんなわけです。何もせず、星と一緒に死ぬより、同じ死ぬでも、星より少し早く死んだ方がましだ。 わかりやすく言うと、少しでももがいてから死ぬ方がいい。 たとえリザードンに立ち向かうキャタピーのようなものだとしても」 タカマサの言葉が、Kのセリフを切った。 「私は・・私は・・これ以上、あいつに苦労をさせたくないのだ・・」 (あいつ・・?) 瞬間。 「これ・・お父さん! サリア! それに・・私!?」 タカマサのデスクを勝手にいじくっていたリコから上がる、驚きの声。 メンバーは一斉に、そちらへ集まった。 リコが手に取っていたのは、額に入った、1枚の写真。 男女と、女の子。 計3人が写った写真。 それは、かつての・・ 「・・あ! 社長・・まさか・・」 「Mr.タカマサ・・まさか・・」 カンのいいスミレは、素早く全てを察した。 同時に、リコも・・ 以前リコが話していた、彼女の父親の名前は・・ 「社長の本名って・・ユコト・・?」 「お父さん・・」 「・・そうだ」 静かになった部屋に、タカマサ・・否、ユコトの声が響き渡る・・    続    あとがき びっくりしたでしょう!? したと言ってください(爆) 亜綺乃さんが言ってたタカマサ×サリアが現実のものに! ちなみに、亜綺乃さんが言い出す前から決まってた設定ですよ。 だって、#5のイントロを覚えていますか? あそこで登場した写真。 あれ、今回リコが見つけたヤツと同じモノなのでした。 ではでは。    次回予告 父と娘の再会。そして、 タカマサが語る真実・・ 第19話「明かされた真実 〜サリア(仮)」