「お父・・さん・・」 「リコ・・」 「おとうさぁぁぁんッ! うわああぁんっ!」 ・・リコは、その『不気味な人物』という仮面の裏に、どれだけのつらさを押し隠して来たのだろう。 せきを切ったように泣き出し、父の胸に飛び込んだ彼女は、弱い、ただの11歳の少女であった。 「お父さん・・私・・私ッ・・お母さん殺しちゃったよ・・ひくっ・・えぐっ・・」 「泣くな・・リコよ・・いや、思い切り泣くんだ・・ スミレから聞いている。すまない・・父さんがふがいなかったばかりに・・」 ひしと抱き合う、父と娘。 もらい泣きするスミレ、オリサ、キリカもまた、今亡き両親の影を重ねる。 ――午前0時。最期の日が始まった。    POKE IN ONLINE #19    「明かされた真実 〜サリア」 「サリアの一族は、他の民族との混血を極端に嫌う。だが、私は、画家だった頃、サリアと恋をしてしまった」 写真を見ながら、タカマサは遠い日の思い出を淡々と、語っていく。 「一族は、裏切り者サリアを殺すべく、執拗に私達を追い回した。 逃げ続ける生活・・やがて、2人の間に男の子が生まれた」 「れ?」 「リコじゃないみゅ?」 「・・その子は、サリア自身が殺した。 ・・『私の血を受け継ぐこの子は、満足に生きていけるはずがない。それなら、いっそ・・』とな。 死神の力・・炎で焼いて、森に捨てた。 私がつけたその子の名は、ショウ・・偶然にも、君と同じ名だ。ショウ」 力無く笑い、ショウを見るタカマサ。 (その子の名は・・ショウ!?) (炎で・・!?) (見つけた時・・ショウはひどい火傷を・・) それはおそらく偶然などではなかった。 彼の言うショウと、今ここにいるショウは・・ だが、ショウにそれを名乗る勇気はなかった。 『星狩り』を倒した時、名乗ろう・・その時までオレが生きていたら。 「私は・・サリアを止められなかったのだ・・ リコが生まれたのは、しばらく後だ。 その時もサリアは、突発的にリコを殺そうとした。私は必死に説得したよ・・ そして、リコは一命を取り留めた・・」 「サリア・・ッ・・」 きゅっと唇を噛みしめるリコ。 「その気持ち・・一瞬の歪んだ愛情・・サリアを虐待に走らせたのは、それだ。 私に・・それを止める力は無かった・・」 タカマサ・・泣いて・・いるのだろうか? 「私は・・怖かったのだ・・。自分までがサリアの・・あの炎の餌食になるのが・・ 私は何もできなかった・・、ただ、傷だらけのリコを抱きしめてやることしか・・ッ・・!」 「お父さん・・」 (傷だらけのあいつを・・抱きしめてやることしか・・) Kの脳裏に蘇る、苦い記憶。 (ユリハ・・もう一度・・もう一度、俺に機会を・・) 「リコ・・これだけは言っておきたかった。 サリアはお前を愛していたのだ。ただ・・どこかで道を踏み違えただけだった・・」 「ん・・」 リコは記憶をたどってみる。 もちろん、簡単にサリアを許すなどできたことではない。 だが・・ 死ね、死ねと言いながら、サリアは本当に自分を殺すことはなかった。 「私は、リコを連れ、サリアの元を離れた。 そして、リコに水の封印を施し、あいつの手から遠ざけたのだ。 だが・・それがいけなかった・・。リコへの愛情を失ったサリアに残るのは・・深い憎しみだけだ・・ やがてそれは、あいつの精神を完全に蝕み、破壊衝動をもたらした。 ルギ・・いや、はるかぜから聞いた時、私は呪ったよ。自分をな。 破壊の化身と化したサリアは、無差別にポケモンを殺して、リコを探して回っていたという・・ そうして生まれたヘイトは『星狩り』をより強大にする・・ 過去の歴史で、あいつはそうして来たのだな・・」 続いて、はるかぜが口を開く。 「今までのわたしはずっと1人で戦って来た。今回、初めて、人の力を借りることにした・・」 「その対象として、私が選ばれたのは、リコ封印後、過去と決別すべく起こした会社が空前の大成長をとげ、巨額の資金を私が持っていたことにある」 「それと、2人の、夫婦という関係もだね・・」 「まだ君達の年頃では分からぬかも知れんが、大切な人が破壊の化身となったその時、少なくとも私は、私自身の手で終わらせてやりたい」 タカマサの言葉は、ひどく悲痛であった。 サリアに・・リコに何もしてやれなかった自責の念。 痛い・・ 確かにショウ達の年頃では、大切な人と言われてもピンと来ない。 だが、タカマサの気持ちは・・分かる。 「はるかぜよ・・奴が再びこの星に来るまで、あとどれ位だ?」 「・・シスター・レイで吹き飛ばされたヘイトが、どんどん再構成されているよ。 夜明け前には・・来る」 「そうか」 つかつかと部屋の入口へ歩き、ドアを開けるタカマサ。 一行の方へ振り返り、バシッと言い放つ。 「何をしている、君達。9人で星を救うのではないか?」 「お・・おうっ!」 「おーーーーっ!」 「そうだみゅっ!」 全員の声が、重なった。 タカマサに、もう迷いはない―― 【シスター・レイ 最上層】 「その昔、人とポケモンは互いに共存し合っていた・・」 「いつからだろうね・・人がエラぶって、ポケモンをいじめるようになったのって・・」 「ヘイトは、無念の魂。人のそれよりはるかに多く発生する、ポケモンのヘイト・・ やがてはそれが『星狩り』・・」 「ヘイトを集めてる『ショウ』を倒せば、消えるにょ?」 「ヘイト自体は消えないが『星狩り』としては消滅する。 その後、我々とポケモンが再び共存する道を選べば・・」 星空を見上げ、口々につぶやく9人。 ――『星狩り』はなぜ生まれたのか。 ――人と、ポケモンとが共に歩む道を、人はなぜ自ら閉ざしたのか・・ 「人のポケモンの間に開いた距離の象徴・・か」 いつかのはるかぜの言葉が、重く響く。 「ぼくら・・星の運命しょっちゃってるよね。 ・・うん、死ぬ気でがんばろう!」 その時だった。 上空がバッとフラッシュし、緑の光の粒が集束。 「来る!」 はるかぜが叫んだ刹那、奴『星狩り』は本来の姿を取り戻す。 最後の戦いが始まった。    続    あとがき いよいよですよ、いよいよ! ラストバトル! あと何話続くか微妙ですけど、テンションは最高潮です。 最後は、あの人やあの人との戦いが待ってて、さらにあの人まで登場しますのでお楽しみに(核爆) それにしても、ショウ・・ ではでは。    次回予告 『星狩り』内部へ突入する一行。 そこは、ヘイトの集う死の世界・・ 第20話「星の命運を背負って(仮)」