「まぐ『だいもんじ』! ないと『フラッシュアイ』! べる『ソーラービーム』!!」 聞き覚えのありすぎるニックネーム。 よく知った声。 「ひとみ!」 振り返った先ショウは、ヘイトを一気に吹き飛ばすひとみの姿を見る。 「来たのか!?」 「ショウ! 早く! ショウにしかできないこと、早く!」 同時に、ミュウツーの声が脳裏に響く。 「使うがいい。我が分身を。お前は持っているだろう」 「・・ああ」 あの日手に入れたポケモン・・ミュウツーが、ショウを試すべく放った彼自身の分身・・ライコウを新たに繰り出すショウ。 「おしまいだ!」 ライコウの放つ、凄まじい雷の嵐。 バンギラスの、天地を切り裂く波動砲。 バクフーンの、裁きの火炎。 ポケモンの常識を超越した技が、哀れな運命に縛られたショウへ一斉に向かう。 視界が光に包まれる瞬間・・ 満足げに、彼は笑って見せた。    POKE IN ONLINE  Final    「決戦 第2幕  〜奇跡」 サリアの力は圧倒的すぎた。 「アーッハッハッ! これが絶望の力! こんなに素敵な力! アーッハッハッハッハッハッハッ・・!!」 傷を負い、うずくまるリコ達とポケモン達を見やり、狂った笑いを発し続ける。 (ダメ・・?) タカマサ、リコすら思った。 その時だ。 ぱあっ! 「!?」 ヘイトに満ちた幻想空間に、隙間が開き、外界の朝日が差し込んだ。 新しい日の始まりを告げる光が。 次第に、結合を失い、ヘイトは大気に霧散していく。 朝日に照らされたヒューン・・否、世界が、一行の視界に急速に開けていった。 「ショウが・・ショウを倒したんだみゅ・・」 立ち上がり、つぶやくオリサ。 わずかに焦りの表情を浮かべるサリア。 「そんなバカな・・フフ・・でも、それでもいいわ! 今度は私が核になる! 絶望は永遠に生き続ける! アーッハッハッハッ!」 「そうはいかない!」 散りかけたヘイトを再結合させ笑うサリアを、Kがバシッと遮った。 ユリハと手を固く握り合い。 決死の表情。 「俺たちは、ヘイトの声を聞いた」 「その中には、少しでも、確かに人とポケモンと分かり合いたいという心があります」 「それを見せてやるよ」 握り合ったまま、天にかざした2人の手に集まる、白い光。 人とポケモンの共存の意思・・ 「フッ」 かすかに笑い、サリアと対峙したまま、Kは言った。 「オリサ。 失った時間・・キリカと一緒の時間、取り戻すんだぜ。 ・・励ましてくれて、ありがとう」 「Kっ・・」 「スミレ。 パフェ代はかかった。スパイらしくもなかった。けど、いい奴だった。 ・・ポケモンシンガーの夢、追いかけていけ」 「・・うん」 「リコ。 これからは、普通の女の子として生きて欲しい。 親父との時間を、大切に・・大切にな」 「・・」 「Mr.タカマサ。 無理だと思いますが、迷いを振り切って前へ進んでください。 人とポケモンが、共に生きて行ける世界を創ってくださいよ」 「わかった・・! 約束しよう」 場にいる1人1人に、別れのセリフともとれる言葉をかけるK。 最後に笑って、ユリハとうなずき合う。 「ユウ様・・」 「行くぜ、ユリハ」 「・・ハイッ!」 刹那。 2人の身体は、白い光とひとつになった。 「Kーーーーーーーーーっ!!!」 「ユリハさんっ!」 それは、聖なる矢となり天上に舞い上がり、サリアの頭上に降り注ぐ。 最後の審判。 無数の光の矢の直撃を受け、なおサリアは自身を捨てない。 「そんな・・私は・・私はぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」 「・・お母さん」 ゆっくりと浄化されていくサリアに、娘は小さく声をかけた。 「今度生まれ変わったら・・私たち、幸せな家族になりたい。 お母さんとお父さんと手をつないで、大きな町の中を笑いながら歩きたいよ・・」 その一瞬、サリアの目に戻ったようだった。 「リ・・コ・・」 母親としての、本来あるべき愛情。 ずっと彼女が忘れていたもの・・ 聖なる光の中へ、彼女の身体は消えていった。 ――おっさん、これで星は救われたかな? ――それは、これからの私達次第だろうな。人とポケモンの理想郷は、我々自身の手で創り出さねばならないのだよ。ショウ君・・ 完全に散った、哀しき魔物『星狩り』 人々が狂喜乱舞する中、Kとユリハを欠いた一行は、シスター・レイ最上層へ、戻っていた。 瀕死の傷を負い、倒れるはるかぜや、悲しい瞳のショウ達の視線を浴びる中に立つ、悲劇の少女・・ひとみ。 存在すべき未来を失い、消えて行く自分の身体を見つめ・・ 「はは・・ひとみも、行かなきゃみたい」 「やだ! やだよ! どうしてひとみまでいなくなっちゃうの!」 「ひとみ・・」 ショウの視線がつらい。 「ひとみーーっ!」 「ひとみ!」 同時に手を伸ばすオリサとスミレ。 だが、もう触れることさえかなわなかった。 ・・すり抜けるのだ。 「みんな・・ごめんね」 「いやだ! 誰かひとみを助けて! 助けてよ!」 「神さま!!」 ・・瞬間、奇跡は起きた。 ひとみの身体が、存在を取り戻し、元の姿を取り戻す。 「・・え・・?」 最も驚いたのは、他ならぬひとみ自身。 「まさか・・」 「神さま・・」 「はるかぜ!」 瀕死のはるかぜに駆け寄る一行。 「えへへ・・わたしの・・最後のプレゼント・・だよ・・」 「はるかぜっ! ひとみの為に・・!」 あふれる涙を拭おうともせず、必死にひとみは彼女を抱きしめる。 「いいの・・ わたしの・・『存在』を・・ひとみサンに・・ わたしはもう・・ダメみたいだから・・」 「でぃーーーーーぐ! でぃぐーーーーーっ!!」 ディグダの声も、いつもと違う。 悲しい叫び。 「ディグ・・みんな・・ありが・・とう・・ 人と・・ポケモンが・・一緒に住める世界・・ わたしが・・いなくても・・創れるよ・・ね・・」 はるかぜは、母なる星へと還って行った。 自分の存在を、ひとみに託して。 「この星に生きる、全ての諸君よ・・」 手近に落ちていたマイクを拾い、タカマサが人々に呼びかける。 「勇気ある者達の活躍により、今度こそ、恐怖は去った。 しかし、我々がポケモンを、愛し、恐れ、敬い、共に生きる心を失っている限り、いつまた復活するとも限らない! 共に創ろう。人とポケモンが手を取り合って生きていける新時代を!」 オーーーーーーーーーッ! 人々の声が重なった。 「へへ・・さすがは、ショウ様のオヤジなだけあるぜ!」 リコの隣で、得意げにショウはつぶやいた。 ――俺たちは、ヘイトの声を聞いた・・ ――その中には、少しでも、確かに人とポケモンが分かり合いたいという心があります・・ それは、星と人とポケモンとのメロディ・・ 生命のメロディ。    Fin    あとがき 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ! 言葉に表すのが不可能なほどすごい気持ちです、今(爆) 味方が3人もいなくなってしまって・・ 以前から議論のタネだったひとみは助かって・・ 最終的には『殺してもいい』というはるかぜさんの意見、採用してしまったですね(汗) ではではっ。 まだ終わりません。    次回予告 エピローグ「Life Me Heart(仮)」