「・・・へー ロケット団、ついに解散・・か  これから警察何やるんだろうな 暇だろうに」 パンを頬張りながらテレビのニュースの感想を呟く少年。暇とか暇じゃないとか、平和になって嬉しいとかそういう感想は言わな いのだろうか。 今回の主人公 シュン 「何言ってんのよ 平和になったんだから喜ばなきゃいけないでしょ?」 母親と思われる人物が少年の頭を叩く。 シュンの母親 ミナ 「わーってるよ ・・・母さん、バターちょうだい」 と、ミナにバターの催促をする。 「・・そう言えばお前、ハルナちゃんと何か約束してたんじゃないの?」 「約束・・?」 パンにバターを塗りながらその「約束」を思い出す。が、何のことかサッパリわからない。 「何か、「ジョウトに行く」とか言ってなかった?」 「ジョウトに・・ はっ!?ヤベッ!忘れてた!!」 ポケットモンスター <幼なじみ> 「ヤベェッ!!すっかり忘れてた!! い、行ってきまーす!!」 バンッ! 身支度を急いで済ませ、ドアを思い切り開けて家を出る。 ミナはその姿を後ろから見て、こう呟いた。 「・・・女を怒らせると怖いわよ〜」 「クッソー、何で思いだせなかったんだ?時間もねェし・・ ピジョット!」 ポンッ。 ボールからピジョットを取り出し、背中に跨る。 「ヤマブキまで大至急飛んでくれ!!!」 「ピジョーッ!!!」 ばささっ! ピジョットがもの凄いスピードでヤマブキへと飛ぶ。 ――ヤマブキシティ 「まったく・・ 忘れてんのかしら?」 駅の前で、シュンが遅れてくるのを少女がボヤく。 シュンの幼なじみ ハルナ 「・・・今日が大切な日ってこと、覚えてるのかなぁ・・・」 「だァ――――っ!!!」 ズドオン!!!! 「な、何!!?」 突然、駅の前で何かが衝突した音がした。 「いてて・・・ ピジョット、大丈夫か?」 「し、シュン!!?何やってんの!!?」 「ハルナ・・? いや、約束を忘れ・・ じゃなかった、約束に遅れそうだったから大急ぎで来たんだよ  んで、スピード調整できなくて衝突したってワケ あ、ピジョット戻れ!」 ピジョットが、赤い光に包まれ、モンスターボールの中に収まる。 「ケガ、大丈夫なの?」 「これくらいなら大丈夫だよ・・」 ゆっくりと立ち上がり、ホコリを払う。 「何か、悪ィな 遅れちまって」 「え? ううん いいのよ そんなに待ってないし」 「そうか?」 「(・・・1時間も待ったけど)」 何も、不満は無いように見えるが、小声で遅れてきたのを呟くハルナ。 「何か、言ったか?」 「ううん、何も さ、いこっ!」 にこっと笑い、シュンの腕をひっぱりながらホームへと向かう。 「何だよ、一体・・・」 「へーっ これがリニアかーっ!」 「近くで見ると、結構でかいな・・・」 駅のホームに停車していたリニアを見て、感想を漏らす。 全体的に白く、新幹線のような形をしている。6両編成のようだ。 「このリニアって、ロケット団がヤマブキを占領してた時に造られたみたいだよ  ジョウト地方と何か運ぶ予定だったみたいだけど、今は普通のリニアとして使われてるんだって」 近くにあったここの資料をハルナが読んでみる。 「しっかしよォ・・ 何か、信じられないよな  レッド達がロケット団を潰したんだろ?」 「何か、鼻高々だよね」 「・・・なんでだよ」 この二人、小学校の時レッド達と同じクラスだったようだ。何故ハルナが鼻高々になるのかは知らないが。 「・・・わたし、ホントを言うと、あいつの事ちょっと好きだったな・・・ なんかさ、誰とでも仲良くできて・・ スポーツ万能で・・ 羨ましかったな」 「・・・!」 「でもさ、あいつはブルーちゃんとデキてんだし、しょうがないよね!」 「何か、おれらって似たもの同士だよな」 「な、何よ急に・・・」 「おれもさ、実は・・・」 「おれもって、あんたレッドのこと好きだったの?もしかしてホモ?」 「んなワケあるかッ!!」 スパーン! どこから取り出したのか、ハリセンでハルナの頭を叩く。 「・・・おれが好きだったのは、ブルーだよ どこがって聞かれると、困っちまうんだよな」 「・・・あ、似たもの同士ってのは、叶わない恋って事なのね てっきり、あんたもレッドの事が好きなのかと・・・」 「だから違うって言ってるだろっ!!」 パンッ! 二度目のハリセン。だが、ハルナはそれをよんでいたのか、横に飛んで避けた。 「甘い甘い もっと修行しなさい」 「ちぇ・・・」 ――リニア 「中も、結構豪華なんだね」 「・・・更におれたちの部屋個室だってよ」 ヒュン チケットをカードホルダーに差し込むと、横のドアが開き、奥へと行けるようになった。 「へ〜・・ ! わああ〜〜っ!」 部屋に入るなり、ハルナが驚きの声を上げる。 「ねェシュン!中見てみなよ!すごいよ!?」 「・・・そんな大げさな・・」 リニアの個室は、豪華とは言えないが、立派な造りだった。 左右にベッドがあり、その上に荷物を置けるスペースがある。 窓際にはテーブルがあり、個室にしては豪華な部屋だ。 「何か、スゴイね〜」 「更によ、これをタダで乗れるんだから運がいいよな、おれたち」 「ヘヘッ」 この二人、どうしてリニアに乗れたかと言うと、ヤマブキ鉄道がリニア開通記念にチケットを抽選でプレゼントするという企画を出 していたらしい。 これを見たハルナが、面白半分に懸賞に出してみたら見事当たったと言うわけだ。 「ま、いいや ともかく荷物置こっと・・」 ゴトン・・・! 「きゃあっ!」 と、その時電車が動き出し、ハルナは発車時の振動で揺れ、シュンの腕に思わず掴まってしまった。 「お、おい・・ 大丈夫か?」 「う、うん・・・ あ、ごめんっ!」 咄嗟にシュンの腕から手を離し、荷物をロッカーに載せる。 「っと・・」 シュンも、荷物を載せる。 「どの電車も、発車する時は揺れるんだよ 車と似たようなつくりだからな」 「そ、そうなんだ・・・」 「・・・どうした?顔、赤いぞ?」 「え・・?そ、そうかな・・・」 (な、何で顔赤いの・・? わたし・・) 自分でも、顔が赤い理由がわからないらしい。初々しい。 「・・・ホラ、早くしろよ やるんだろ?コレ」 と、ハルナにポケモンカードを見せる。約束でもしていたのだろうか、既にデッキを組んである。 「・・・あ、そ、そうだったね・・」 と、ハルナもズボンにつけていたデッキケースからデッキを取り出す。 「・・・じゃ、勝負しよっか!」 ――30分後 「強ェ・・・・」 「わたしに勝とうなんて、10年早いわよっ!」 二人の会話からして、勝ったのはハルナ、負けたのはシュンらしい。 「これでもわたしはカントーチャンピオンの成績を持ってるんだからね〜」 ハルナは、シュンに「No.1 ベストトレーナー」と書かれたカードを見せびらかす。 「エアームド、どこで手に入れたんだよ・・ あ〜悔しい」 『まもなく、リニアはジョウト地方のコガネへと到着します  お降りの際は、忘れ物に気をつけて下さい  繰り返します・・・』 「あ、ついたみたいだよ」 「早・・・ 時速何キロで走ってんだ?これ・・」 カントーのヤマブキと、ジョウトのコガネの距離は約500キロメートル近くある。 それを30分で行けるのだから・・ 時速1000キロとなる。 「こんなに早いんだから、騒音も酷いんじゃねェのか?」 「でも、これが開通して1ヶ月経つけど、苦情の電話一度もないらしいよ」 「マジかよ!! ・・・一体、どのくらい発達してんだ?この国は」 確かに、時速1000キロのリニアなど普通の科学ならば造ることはできない。 だが、ポケモンをデータに変えて預けたり、モンスターボールが作られているのだからおかしくはない。 「・・とにかく降りようよ 着いたんだしさ」 「そだな」 ――コガネシティ ここ、コガネシティはタマムシとヤマブキと同規模の街だ。 タマムシデパートの姉妹店として知られているコガネデパートには様々な商品があり、中でもポケギアが一番人気の商品らし い。 「へ〜 ここがコガネか・・・」 「タマムシみたいな街だね」 「ま、いいや 早いウチに明日のチケット買おうぜ」 「明日の?持ってないの?シュンは」 「持ってるワケねェだろ じゃあ、ハルナは持ってんのか?」 「・・・ううん 懸賞のは往復分じゃなかったから」 「んじゃ、早く買った方がよくねェ? 売り切れそうだぜ」 「・・・売り切れどころか、買う人いないんじゃないかな」 「・・・確かに」 駅の切符売り場に立ったまま動かない二人。 「・・・何で3万円もするんだよ」 「開発費がすっごいかかったんじゃない?」 そう、リニアのチケットの値段が半端じゃなく高いのだ。 「・・こんなんじゃ乗れないよ〜〜っ」 「定期券でもあればいいんだけどな・・・」 「定期券・・・か」 3万円という大金は持っていないので、仕方なく街を歩いているシュンとハルナ。 ここから帰る方法はリニアしかないらしく、ハルナは暗い表情を浮かべている。 「そんな暗い顔すんなよ・・・」 「でも・・」 「・・そういや、おれ何かの本で見たぜ リニアのチケット、トレーナーなら安く買えるらしいぜ」 「トレーナーなら・・ でも、どうやってそれを証明する・・ あっ!!そうだ!!」 「うおっ!?」 突然、思い詰めていたハルナが大声を上げる。 「トレーナーハウスよ!そこで勝てばトレーナーカードが貰えるのよ!!」 「な・・ と、トレーナーハウス?」 「うん 8月頃、トキワとコガネに新しくできたのよ  何でも、ポケモンリーグに出場するには、全バッジと、そのカードがないとダメらしいの」 「じゃあ、それより早く旅に出たやつは?」 「1999年8月24日までに旅に出た人は、ジョウトは取らなくてもいいの  カントーは、出場するとき、イヤでもトキワに行くからね」 「・・で、そこでカードを手に入れれば大丈夫なのか?」 「うん でも、リニアをタダで乗るには、ランクがB以上じゃないと無理みたい」 「ランク?」 「トレーナーカードにもランクがあって、一番下がE、一番上がSって決まってるの  レベルでランクは決まるらしいわ それで・・・」 「そーいうややこしい説明は後でいいよ 早く行こうぜ」 「え?あ、ちょっと!」 場所も知らないのに、適当な方向へと走り出すシュン。責めて、場所を聞いてから走れ。 ――トレーナーハウス 「ここでいいのか?」 「はぁ・・・ はぁ・・ あんたね・・ 場所もわかんないのに走らないでよ・・・!」 「ん?悪ィ悪ィ で、ほんとにここなのか?」 「ここよ・・ 場所もそうだし、上に「トレーナーハウス」って書いてあるじゃない」 全体的に緑色の建物。上の看板に「トレーナーハウス」と書いてある。 さほど広くない事から見ると、バトル場は地下にあるのだろう。 「そういうもん、あんまし見ねェから」 「・・・ま、いいわ 中に入りましょ カード欲しいんでしょ?」 「ああ それに、ジョウトの奴がどのくらい強ェのか知りたいしな」 「ようこそ、ジョウトトレーナーハウスへ  新規登録ですか?」 「あ、はい・・」 「・・では、こちらへ」 受付の人が、シュンとハルナを地下へと案内する。 「知っていらっしゃるかも知れませんが、トレーナーカードを手に入れる為には、  何回かポケモンバトルをしなければなりません  その人のランクを決める為です 全ランクはEからSの全6種類あり・・・」 「いや、そういう堅苦しい事はいいです 要は、ここで勝ちまくればいいんですよね?」 「簡潔に表すと、そうなります」 「(あんたね・・ 折角説明してくれてるんだから聞きなさいよ)」 「(仕方ねェだろ?そう言うの苦手なんだし・・)」 シュンはこういう説明が嫌いならしく、手短に説明するよう催促させる。 「・・・地下、バトル場に着きました では、健闘を祈ります」 ギイィィィィ・・・ 三人の前に、大きな扉が現れ、その扉がゆっくりと開いた。 奥には、ジムにあるようなポケモンバトル専用施設があり、今も激しいバトルが繰り広げられている。 「エビワラー!”ほのおのパンチ”!!」 「レアコイル!”フラッシュ”であいつの目を封じるんだ!!」 カッ!! 辺りに、眩い閃光が走る。 「ひゅーっ 激しいねぇ」 「うわ・・・・」 「ゲームセット! 勝者! フスベ タケノリ!」 「押忍!!」 柔道着を着た人が相手に挨拶をする。 「・・・君!」 「・・・・へ?」 「そこの君だよ!次は君の番だ!早くしなさい!」 審判に呼ばれ、少し戸惑うシュン。だが・・ 「・・・うぉっしゃあ! おれの出番か!」 すぐに気合いを入れ、バトル場に立つ。 「入れ替え戦 3匹対抗戦! レディー・・ ゴッ!!」 ボン! ボン! 審判が合図をすると、二つのモンスターボールが地面に落ち、モンスターボールが割れた。 「ピジョット!」 「エビワラー!」 大きな翼を持ち、大空をマッハ2の速度で飛び交うピジョットと、 パンチのスピードが新幹線と同じ速度と言われる強肩を持つエビワラーが向かい合う。 「掛かったな!エビワラーは「かくとう」タイプだが、弱点の「ひこう」に有利なタイプの技を繰り出せる!  まさに無敵のポケモンなの・・」 「”つばさでうつ”っ!!」 ばしぃっ!! 「!!!?」 ピジョットが自慢の翼でエビワラーをはたく。 「そーいうことべらべら言ってないで、かかってこいよ ま、肝心のエビワラーもダウンしてるけどな」 「・・え、エビワラー戦闘不能!!」 「な・・・」 仕方なく、エビワラーをボールに戻す。 「く・・ ならば次はどうだっ!!」 ボンッ! モンスターボールを投げつけ、煙が上がる。 煙の中からは、力の強いことで有名で、腰にパワーを制御しているパワーベルトをつけているゴーリキーが現れた。 「ゴーリキー!”からてチョップ”!!!」 ゴーリキーが手刀を振り下ろす! 「”こうそくいどう”!」 ビュンッ!!! ピジョットが目にもとまらぬ早さで動き出し、ゴーリキーの攻撃をかわした。 「「ひこう」に「かくとう」タイプの技繰り出しても、効果ないんだぜ?」 余談だが、”からてチョップ”はノーマルタイプの技である。「かくとう」タイプの技ではない。 「!!」 ピジョットが、体全体に力を溜め・・・ 「”ゴットバード”!!!」 ズドオン!!!! もの凄いスピードと力で体当たりをしてきた!! 「ぬぁ!!?ご、ゴーリキー!!」 「ゴーリキー戦闘不能!」 「・・・くそ・・・ 負けた・・」 ゴーリキーをボールに戻し、小さな声で呟く。 「え? ・・・何だ、2匹だけかよ」 「タケノリ選手の手持ちポケモン全滅! ゲームセット! 勝者、マサラ 泉シュン!」 「なんだ 楽勝みたいね」 ――6回戦目 「これに勝てば、Sランクなんだよな」 「・・・ああ だが、回復もしてないのに大丈夫なのか?」 「回復?大丈夫だろ、まだ元気そうだし」 いつのまに仲良くなったのか、からておうのタケノリと仲良く喋っている。 「ポケモンバトルを始める!!」 「お、最終戦、始まるぞ」 「双方、前に!」 シュンと相手がバトル台の上に登る。と・・ 「・・! ハルナ!?」 「シュン! ってことは・・ シュンが相手なの!?」 「ハハ・・ そうみてェだな」 偶然にも相手が相手なので、緊張が和らいでしまう。 「・・・構えて! 入れ替え戦 ポケモン3匹勝負!レディー・・ ゴッ!!」 「ま、いいや 手加減無しだぜ!」 「それはこっちのセリフよ!」 ボボン!! ハルナのモンスターボールからは、アーボが立ったような、それともハクリューに手足がついたのか、そんな姿のポケモンが現 れた。 シュンのポケモンは相変わらずピジョットのままである。 「・・・なんだ、あれ」 「デンリュウって言うポケモンよ 新たに発見されたポケモンの一つ」 「デン・・ってことは、やっぱ属性は「でんき」なんだな?  ・・・ってそしたらおれのピンチじゃねェか!」 「デンリュウッ!”かみなりパンチ”!!」 「くそっ!戻れッ!!」 ドカンッ!!! ボールに戻すのが一瞬遅れ、電気を帯びたデンリュウの拳がピジョットを殴った。 「ピジョット、戦闘不能!」 「ち・・ んならサニーゴ!!」 ボンッ! モンスターボールから、これまた名前の聞いたことのないポケモンが飛び出す。 ウニのような姿をしたポケモンだ。堅い岩に珊瑚が生えたような、そういう姿だ。 「姿からして、「いわ」はありそうね・・ でも、名前から予想すると、「みず」もありそうだし・・」 「考えてるヒマなんてねェぜッ!!サニーゴ、”とげキャノン”!!!」 「ニィィ〜〜ッ!!」 ズドドドドン!!! サニーゴが、周りの珊瑚を次々にデンリュウへと発射してきた! 「!! デンリュウッ!”いわくだき”でトゲを砕いて!!」 「リュウッ!」 ドゴン!! デンリュウの拳が珊瑚を砕く! 「や、やった・・・」 「一個砕いたぐらいでいい気になるなよ!」 「!!!」 ガガガガガガン!!! ”とげキャノン”は何個も発射されていたらしく、一個を砕いただけでは焼け石に水だった。 そして、残りの珊瑚がデンリュウを襲う!! 「で、デンリュウッ!!」 「よっしゃ、”バブルこうせん”!!!」 デンリュウはまだ体力が残ってるらしく、フラフラしながらもなんとか立っている。 と、そこへサニーゴが無数の泡を吹きだしてきた!! 「ああっ!!!」 ドパァン!! 無数の泡がデンリュウに当たり、デンリュウは3メートルほど吹っ飛ばされてしまった。 「デンリュウッ!」 「デンリュウ、戦闘不能!」 力尽きたデンリュウは、モンスターボールの中へと戻る。 「さぁ、次を出してこいよ 何を出すんだ?」 「・・・わたしの二番手はこの子よっ!」 ボン! ハルナの二匹目のポケモンは、猫の容姿をしたポケモン、ペルシアンだ。 「ペルシアンのその鋭い爪を使っても、サニーゴにはダメージは少ないと思うぜ」 「・・誰が攻撃するなんて言った?ペルシアンを出したのは、こういうことよ!  ペルシアン、”いやなおと”!!」 「にゃああ〜〜〜っ!!」 ギキィィ・・ ギィッ! ギギギィ!! 「いいいっ!!?」 ペルシアンがその鋭い爪でコンクリートの床をひっかく。すると、誰もが嫌がるような音が出た。 シュンも、サニーゴも、他の人たちも思わず耳を塞いだ。 「こうやって、ぼうぎょを低くしたあとに・・ 強烈な攻撃をお見舞いするのがポケモンバトルってものでしょ!  ペルシアン、”みだれひっかき”!!」 「ニャアアッ!!」 ガキキキキキン!!! ペルシアンが”いやなおと”でできたとがった爪でサニーゴを引っ掻きまくった!! ガキィン!!! 好調に引っ掻いていたペルシアンだが、突然自分の身体にも引っかかれたような跡ができた。 「!!! え・・・!!?」 「”ミラーコート”・・ これは喰らったダメージを相手にそのまま返す技だ  こっちも戦闘不能になっちったが、これで両方とも残り1匹・・ まだ余ってる」 「ペルシアン、サニーゴ双方ともに戦闘不能!」 「さ・・ これで終わりにしようぜ 残り一匹なんだしよ!  エーフィ、いけっ!!」 「サナギラス!ゴー!!」 ボボンッ! シュンのポケモンは、紫色の肌をしており、耳が大きいポケモン。恐らくイーブイの進化系だろう、エーフィと言うポケモンだ。 一方、ハルナのポケモンはトランセルやコクーンに酷似したポケモン、サナギラス。 「さなぎら・・・ オイオイ、これでも最後のポケモンなんだぜ?そいつで戦うのかよ・・」 「う、うるさいわねェっ!そんなに残念ならやってみなさいよ!!」 「・・・言われなくてもやってやるよ!エーフィ、”サイコキネシス”!!!」 「フィイイッ!!」 みわわわわわ エーフィが強く念じると、サナギラスが空に浮いた。 「いけェッ!!」 ドゴン!! 「!!!」 サナギラスがエーフィの念力であちこちへと飛ばされる! 「身動きがとれないんじゃ、おしまいだろ!  そいつ、見たところぼうぎょは高そうだからこのままだと時間かかりそうだけど、  どうせ動けねェんだ ずっとこのままにしといてやるよ」 ゴン!! ガゴン!! ガン!! どのくらい壁にあたり続けただろうか、装甲の堅いサナギラスに疲れの表情が出てきた。 ハルナは何か考えているのか、ずっとそれを眺めていた。 「・・・何だよ、あいつ・・ さっきから黙ってばかり・・  でも、サナギラスもそろそろ終わりか・・ エーフィ、トドメを刺すぞ!!」 「フィイッ!」 ぐん! と、サナギラスが急にエーフィの方向へと寄せ付けられた。 シュンの性格だろうか、留めは格好良く刺したいのだろう。 「・・・・!」 と、その時ハルナがにっと笑みをこぼした。 「やっぱりそうするんだ!サナギラス、今よ!”かみくだく”!!」 「・・ゴアッ!!」 と、それまで何もしなかったサナギラスが鋭い牙を見せ・・・ ガブッ!!! 「フ・・ィッ!!!?」 その牙でエーフィに噛みついた!! 「!! な!? え、エーフィ!!」 「・・! え・・ エーフィ戦闘不能!!」 力尽きたエーフィは赤い光に包まれ、モンスターボールの中へと吸い込まれた。 「な・・ 何で?」 「サナギラス・・ ホントは、普通に動けるのよね」 「ゴアッ」 ハルナの言葉に応えるように、自力で浮かび上がってみせる。 「でもさ、そっちが動かしてくれるんだからこういうチャンスを待ってたんだ  こうやって、辛そうな演技もさせてね♪」 「何・・?サナギラス、まだ大丈夫だったのか?」 サナギラスはまだまだいけるとでも言わん顔で笑ってみせる。 「シュン選手のポケモン全滅とみなし、ゲームセット! 勝者、マサラ 川城ハルナ!!」 ――コガネホテル屋上 「なんか、嬉しいな〜 これで、わたしたち一人前のトレーナーって認定されたんでしょ?」 「ああ それに、二人ともBランク越えたからリニアもこれでタダで乗れるんだよな」 貰ったばかりのトレーナーカードを空に重ねるようにして眺める。よほど嬉しいらしい。 「・・でもよォ なんでお前、おれに勝ったのに、ランクBなんだよ!  せめてAランクになれよなァ!」 「だ、だって、回復できないなんて知らなかったんだもん・・」 あの後、ハルナは精一杯戦ったのだが、サナギラスのHPも遂に尽きてしまい、負けてしまったようだ。 げんきのかけら等回復アイテムは使えなかったから回復できなかったのも無理はない。 「・・・ま、いいか 一応Bランクは越えたんだし」 「それに、ポケギアも買えたしね♪」 二人の左手首には、同じ黄色がメインのポケギアがついている。デパートで買ったのだろう。 「それにしてもさ・・ こういう風に、二人っきりで夜空を眺めるのって、久しぶりだよね・・  ホラ、覚えてる?あの時のこと・・・」 「・・ああ、林間学校の時だろ?消灯時間過ぎてから行ったんだよな」 「そうそう!あの後、先生には怒られるし、友達からは冷やかされたり大変だったよね」 「ま、今となっては懐かしい思い出だよな・・」 「・・それに、今日はわたしたちの誕生日だしね」 「・・・あ、そうだったっけ・・ 珍しいよな、おれたち  幼なじみなのに誕生日一緒っての、そうそういねェよな」 誕生日が一緒と言う人は世の中にはたくさんいるだろうが、幼なじみで誕生日が同じ人と言うのはあまりいないだろう。 「・・だけど、プレゼント何もねェぞ ハッキシ言って、おれ自身忘れてたからな」 「あ・・ そう言うことだと思った」 期待していたのか、ハルナがコケそうになる。 「・・でも、いらないよ こうして、シュンと一緒にいられることがわたしにとっては最高のプレゼントだから・・・」 「・・・何だよ そのもういなくなるみたいな言葉は」 と、ハルナはシュンに寄り添う。少し顔が赤くなってるようだ。 「・・・わたし、引っ越すんだって もうすぐ・・ ここに」 「!? 何で!?」 「お父さんの仕事の関係でここに引っ越すらしいの だから・・ シュンとこうしていられるのも今日で最後なんだと思う」 「・・・・・・」 頭をハンマーで殴られたような気持ちになるシュン。ハルナは少し泣いているのか、肩を震わせている。 「・・・おれ、ハルナのことが好きだ」 「!!」 突然、シュンもハルナに告白をする。ハルナは突然の事で目が点になってしまっている。 「じ・・ 冗談でしょ? 何を突然に・・・」 「・・・冗談なんかじゃねェよ 本気だ」 「・・・で、でも! 今朝ブルーのことが好きだって・・・」 「・・あれ、嘘だ でも、少し気になっていたのは本当だけどな  それに、コガネに引っ越すんだったら、リニアがあるだろ?  絶対、お前に会いに行くから・・さ」 恥ずかしいのか、ハルナの顔を見て言わず、空を見ながら呟く。 「・・・わたしも、シュンのことが好きよ」 「え・・?」 「ごめん 何か、断るような言い方しちゃって まさか、本気だとは思わなかったから・・」 「・・・本当、か?」 「こんな時に冗談なんか言う?本当よ・・」 「い・・・・」 「・・・シュン ちょっと、目、つぶって」 「へ?」 「いいから」 「・・・わかったよ」 ハルナに言われた通り、目をつぶる。 「一体、何を・・ んっ・・」 と、シュンの口が塞がってしまった。柔らかい、暖かい感触。これは・・ハルナの唇? 「!!!? お、おま・・・」 「・・・えへっ」 ハルナがシュンの目を瞑るようにさせたのはキスをするためだったようだ。流石に、二人とも顔を真っ赤にさせる。 「・・・今のキス、わたしたちの約束ね 一ヶ月後、またここで会おうよ・・ ね」 「・・・・ああ」 シュンも、その約束に同意し、ハルナを優しく抱きしめた。 夜空に鏤めた満点の星空が、二人を暖かく見守っていた・・・ ――翌日 「・・ふわああああああ・・・」 大きな欠伸をしながら腕を伸ばすシュン。 「まったく・・ 昨日、夜遅くまでデッキづくりに専念してるからよ」 「しかたねェだろ?一回でもいいから、お前に勝ちてェんだよ」 「そんな事しても、勝てないくせに」 ふふっと、ハルナは余裕の笑みを見せる。 「・・・何か、ムカツクなァ・・・」 ゴトン・・・ と、その時、リニアが走り出した。 ――ねェ、シュン・・・ 幼なじみってさ、タイミング、難しいよね ――・・・はァ? ――好きって言うタイミング、難しいと思うのよ ――・・・そうかも、しれねェな