ここは ハナダシティ ハナダは水色 神秘の色 ジムリーダーは おてんば人魚    ___________      メリークリスマス▼  雪が降っていた。  久しぶりの、ホワイトクリスマス。  今、カスミはハナダシティにいる。  カスミの故郷、水の町だ。  ジムバッチを貰いに、沢山のトレーナーがカスミに勝負を挑む。  今も、今日の最後のトレーナーと戦い終わったばかりだった。 「あーあ。……サトシ達、元気してるかなあ?」  自然とため息が出てしまうのは仕方ない。  姉達が遠くに旅行へ行かなければ、今もカスミは旅をしているはずだった。  そう、明るくて優しい少年・サトシと共に。  カスミはサトシに恋情めいたものを抱いていた。  自分ではまだ核心は持てないが、姉達はカスミが抱くサトシへの思いの事をそう言っていた。  もしかすると、そうなのかもしれない。  旅をしている間は、ただの「友達」にしか思えなかった。  明るくて、自分を元気付けてくれるただの「友達」。  けれど離れてみて、自分の中でのサトシの大きさを知った。  ポカン、と大事なものが心から抜け落ちてしまったかのような感じを味わった。  カスミはため息をつくと、自分の部屋へと歩を進めた。  暫く歩いた先にある自室の扉を開けると、すっかりカスミに懐いているトゲピーが足に飛びついてきた。 「トゲピー。……危ないわよ、そんなに走っちゃ。」  膝を降り、抱きあげる。  そして自分の寝台の方に向かっているとき、自分専用パソコンに通信が入っていることが判った。  カスミは不思議そうに、通話ボタンを押す。  次の瞬間。  画面に移ったのは、先ほどまで考えていたサトシの顔だった。 「やほー、カスミ元気してる??」 「ちゃあー!」  能天気そうなサトシの声。  そしてその後ろから顔を出す、その相棒・ピカチュウ。 「さ、サトシ?!」 「ちょげチョゲー!」  驚くカスミと嬉しそうなトゲピーを見ていたのか、その後ろから更にタケシが顔を出した。 「カスミ、俺も居るぞー。」 「タケシ!」 「皆別れてから、ホウエンでまたサトシと合流したんだ。新しい仲間も増えたぞ」  その声を合図にしたのか、タケシの後ろから茶色い髪の少女と短パンの少年が顔を出した。 「私、ハルカです!」 「僕はマサトです。」  明るく挨拶をしてきた二人に好印象を抱くカスミ。 「私はカスミ。宜しくね、二人とも!」 「チョゲちょげピー!」  楽しい時間は過ぎていくのが速い。  もう時刻は10時過ぎ。  ハルカとマサトはもう寝に行ってしまった。 「じゃあ、そろそろ。」  サトシのその言葉に少し寂しさを覚えながらも、カスミは頷いた。 「じゃあまたねー。サトシもタケシも頑張ってね!」 「カスミこそ頑張れよ。俺達も応援してるよ」  タケシの優しい言葉。  実は少し涙腺が緩みそうになっている。 「ありがと、二人とも!」 「じゃあ、また。元気で頑張れよ!」 「ピカピカー!」 「じゃあなー。」  サトシとタケシは通話を切ろうとしたけれど、思いついたかのようにまた話し掛けた。 「そうだ、カスミ!……メリークリスマス!」 「メリークリスマス!!」  二人のその言葉に1テンポ送れて、カスミも笑った。 「メリークリスマス!サトシ、タケシ。」              fin