探偵なんてヤクザな職業だけれど  誰かの役に立っているらしい 私たちの探偵社  貴方だったら こんな変な探偵社から抜けたいですか?        ――私たちの協奏曲(後) 「お疲れ様でした、お二人とも。」  私達はリビングで、サクトからオレンジペコー(紅茶の銘柄だ。独特な甘味がとても良い)の 入ったティーカップを貰っていた。    実は、もうあっちの世界からいつもの世界に戻ってきたのだ。  戻り方は実に簡単で、実に不思議なものだった。最初にいた場所へ行き、自分の周りに円を石 で描く。そしてその中心で強く「戻りたい」と思えば戻れるのだ。  本当に不思議、だった。 「ミナトさん、あっちの世界は楽しかったでしょう?」  図星だったので、はいとだけ答える。 「そうでしょう!……私も始めて行った時、そう感じましたよ。今までの常識を全部からっぽに されてしまう代わりに、充実した生活を送れるようになったんです。」  興奮した口調で力説するサクト。  どうやら彼も私と同じだったらしい。なぜか親近感なんて物を彼に抱いてしまう私。 「クレナイとウミ、それとヒカルは元気ですか?」 「クレナイ、ウミ、ヒカル??」  私が聞き返すと、サクトはあ、と呟いた。 「そう言えば彼らの名前を教えてなかったんですね、私。……ヒダチ君、ポケモンの説明はしま したか?」  頷き返したヒダチにそれは良かったというサクト。 「最初から説明するのなんて面倒くさいですしね。」  ……やっぱり苦手だ、この人……。 「貴方のポケモンの名前ですよ。3匹いたでしょう?クレナイ――リザードン♂、ウミ――ラプ ラス♀、ヒカル――ピカチュウ♂。」 「クレナイ、ウミ、ヒカルっていうんですね……。元気でしたよ。」 「そうですか。良かった……。」  本当に嬉しそうに微笑むサクト。……う。顔が良いからぐっとくる……。  落ち着け、ミナト。お前は性格極悪男の術中に嵌ってはいけない!!  自分で自分に突っ込みを入れてみたら、だいぶ落ち着いた。 「……あ、じゃあクレナイ達の事知ってるんですか?」  私がそう言うと、 「ええ。……よく知ってますよ。……所でミナトさん、もう死にたいという気持ちはなくなりま したか?」  自分でもすっかり忘れていた。 「なくなりました、ね。何時の間にかですけど。」 「良かったです。……この探偵社が出来たのは、少しでも『死にたい』という人を居なくするた めでしたからね」  しんみりするように、サクトは目を閉じる。考え込むように、黙り込む。  一応理由があったんだ、なんて思いつつ私も沈黙に身を任せる。  思い出したかのように、突然サクトは目を開けた。 「……そういえば、貴方は今から正社員になれます。正社員になりますか?」  私がコクン、と頷くとサクトは微笑んだ。……やはり素材が良いからぐっとくる。 「じゃあ今日の給料分だけ渡しておきましょう。」  サクトから手渡された封筒には現金二万が入っていた。 「これで正社員になったので、これからは1ヶ月二万ですから。」  一瞬何を言われたか解らなかった。 「……え?」 「だから、これからは一月二万です。」  やっぱり聞き間違えじゃなかった。 「け、けど!あの広告には日給二万って……。」 「ああ、だからあれはアルバイトの人だけですよ。正社員は変わってしまうんです。」  呆然としていると、突然肩に手を置かれた。  そちらをみると、ヒダチだった。 「諦めなよミナトさん。……オレもそれで引っかかったんだ。」  その二人は確信的な笑みを浮かべて、声をハモらせながら 「これからも宜しく!」  これから、私は荷馬車のように働かされるようになる……。                    ---------------- HAPPY END ?? +++++++++++後書き+++++++++++ どうだったですか?「私達の協奏曲」は。別名「ミナトちゃん災難の巻」です(笑 題名の意味が解らないかもしれませんが、一応死神探偵社の皆で作り上げる物語なので「私達の協奏曲」なのです。 少しでも楽しんでいただけていたら最高です。 一人称で書いたので、少し疑問が残ってしまいますね。 一人称で書いてみると、自分の文章の未熟さとかがよく解るので頑張りたいところです。